トマトに似た見た目で、酸味と甘みを併せ持つ南米原産の果実「タマリロ」。日本ではまだ珍しい果物ですが、成長の早さや栄養価の高さから、世界で注目が集まっています。この記事では、タマリロの特徴、名前の由来、味と食べ方、栄養、育て方、日本での入手方法までをまとめて紹介します。
タマリロの基本情報

タマリロ(学名:Solanum betaceum)は、ナス科に属する常緑の低木で、高さは5メートルほどまで成長します。
- 樹形:1本のまっすぐな幹から横に枝が伸びる。根は浅く、あまり強く張らない
- 葉:大きな単葉で、一年中葉をつける常緑樹。強いにおいがある
- 花:白みを帯びたピンク色で、10〜50個ほどが房になって枝から垂れ下がるように咲く。よい香りで虫を引き寄せる
- 受粉:1本の木でも自分の花粉で実をつけるが、別の木の花粉を受けたほうが実のつきがよくなると考えられている
- 果実:トマトに似た卵形で、長さは4〜10cm。1つの花房に1〜6個つく。色は黄色・オレンジ・赤から、紫に近いものまで多様で、縦に濃い筋が入るものもある
原産地と世界への広がり

アンデス山脈が原産地
原産地は、ペルー、エクアドル、ボリビア、コロンビア、アルゼンチン、チリにまたがるアンデス山脈地域です。現在も家庭菜園や小規模な果樹園で栽培され、地元で特に人気の高い果物のひとつです。
なかでもコロンビアは生産が安定しており、年間生産量は15万トンを超えます。アンティオキア県は栽培面積が大きく、「ラ・メセタ」地域だけで900ヘクタール以上の農園があり、国内の主要都市へ供給されています。
ニュージーランドでの発展と「タマリロ」の誕生

タマリロが原産地の外へ広がるきっかけとなったのがニュージーランドです。1891年にインド由来の種子から初めて導入されました(その種子はジャマイカから伝わったと考えられています)。当時は「ツリートマト」という名前で家庭菜園の人気者となり、1910年代には小規模な商業生産も始まりました。
1966年、ニュージーランド・ツリートマト普及協議会は新しい名前を探し始めます。生産者たちは、「ツリートマト」という名前が輸出市場での可能性を妨げていると考えていました。果物の食べ方や、一般的なトマトとの違いについて混乱を招いていたためです。南米で使われていた名前も検討されましたが、どれも適切ではないと判断されました。求められたのは、亜熱帯らしく魅力的で、さまざまな言語で発音・綴りやすい名前でした。
そこで提案されたのが「タマリロ」です。同じナス科のトマティーヨの名前に影響を受けたスペイン語風の造語で、マオリ語の要素も加えられています。アラワ族の移住船の船長タマテ・カプアの名前にちなんだ「Tama」が取り入れられました。生産者の圧倒的な賛成を受け、1967年2月以降、ニュージーランド全土でこの名前が広まりました。
ニュージーランド生産の浮き沈み

ニュージーランドの生産量は1960年代半ばにピークを迎えましたが、1970年代以降は病害の影響で減少しました。1993年には約200ヘクタールから約2,000トンが生産され、一部はアメリカへ輸出されました。しかし2006年に害虫の被害が確認されると、再び生産が落ち込みます。
2020年頃には、かつて年間800トン・350万ニュージーランドドル相当あった輸出が、約250トン・130万ニュージーランドドル相当まで縮小しました。2021年には国内卸売業者向けに414トン(310万ニュージーランドドル相当)が販売された一方、アメリカ向け輸出は2つの生産者から8トン(約2万ニュージーランドドル相当)にとどまりました。この輸出にはキウイフルーツで築かれた販売ルートが使われています。
味と食べ方

味の特徴
タマリロは酸味がありつつ、ほどよい甘さのある果実で、パッションフルーツやトマトのような風味に例えられます。品種によって味が異なります。
- 黄色い品種:甘みが強く、マンゴーやアンズに似た風味。加工しても色が安定しやすい
- 赤い品種:栽培量がはるかに多い。酸味が強く、後味にははっきりとした渋みと独特の風味がある
北半球では主に7月から11月に出回り、シーズン初期に収穫された果実ほど甘みが強く、渋みが少ない傾向があります。ヨーロッパなどの輸入国では、酸味が強くても鮮やかな色合いが好まれ、赤や紫の品種が人気です。
基本の食べ方
皮は硬く、食後に好ましくない風味が残るため、一般的には食べません。半分に切って、中の柔らかい果肉をスプーンですくって食べるのが基本です。
- 果肉に少量の砂糖を加えて冷やし、朝食に
- ニュージーランドでは、果肉をトーストに塗って食べる人も
- コンポート、オランデーズソース、チャツネ、カレー、ババロア、リンゴと合わせたシュトルーデルなどにも
- ペクチンが多いため、ジャムやゼリーなどの保存食品に向く(加工用には色が安定しやすい黄色い品種が適している)
世界のタマリロ料理
| 地域 | 食べ方 |
|---|---|
| エクアドル高地 | 黄色い品種はセビーチェや調味料に、赤い品種はデザートに。唐辛子と一緒にすりつぶした辛いソース「アヒ」は、さまざまな食事に添えられる |
| コロンビア・エクアドル・パナマ・ベネズエラ、インドネシアの一部(スマトラ島、スラウェシ島など) | 生の果実を水や砂糖と混ぜてジュースに。殺菌処理したピューレも市販されている |
| ネパール | 秋から冬に人気の「ティアムタル」。皮が裂けるまで煮るか直火で焼いてつぶし、唐辛子、ティムール(ネパール山椒)、ニンニクなどと混ぜてチャツネや漬物に |
| インド(ウーティ、ダージリン、シッキムなど) | ネパールと同様に食べられる。北東部では焼いたタマリロを、焼き魚・揚げ魚・乾燥または発酵させた魚、唐辛子、ニンニクなどと混ぜてチャツネに |
| ルワンダ | マンゴーやパイナップルなど他の熱帯果物と一緒に提供されることが多い |
| 中国・雲南省 | ダイ族が、焼いたタマリロにノコギリコリアンダー、唐辛子、ニンニクを合わせた「タマリロ・ナンピー」を作る |
ご注意:紫色の品種の種子から抽出した水エタノール抽出物には遺伝毒性が確認されています。浸出液などに利用する場合は、種子を避けて果肉のみを使うようにしましょう。
栄養と健康への期待

タマリロは低カロリーなのに栄養が豊富です。可食部100gあたり約31kcal、1個あたり約40kcalと、果物のなかでもかなり低めです。
- ビタミンC:100gあたり20〜30mg前後で、1日の摂取目安量の約30〜50%をまかなえる。コラーゲンの合成や免疫の働きを支える
- ビタミンA(β-カロテン):黄色い品種に多い。視力の維持や皮膚・粘膜の健康に関わる
- ビタミンB6:たんぱく質の代謝を助け、エネルギーづくりや神経の働きを支える
- カリウム:水分バランスを整え、ナトリウムの排出を促して血圧の維持を助ける
- 鉄分:血液中で酸素を運ぶヘモグロビンの材料になる
- 食物繊維:腸内環境を整え、食後の血糖値の急上昇を緩やかにすることが期待される
さらに、果皮にはアントシアニン、クロロゲン酸、ケンフェロールなどのポリフェノールが多く含まれ、活性酸素を抑える抗酸化作用を持ちます。ニュージーランド・オークランド工科大学の研究チームによる査読付き論文では、果皮のほうが果肉よりも抗酸化活性と総フェノール含有量が高いと報告されています。クロロゲン酸には、2型糖尿病における血糖値の低下に関わる可能性を示す研究もあります。
タマリロの育て方

成長が早く、収量が多い
タマリロ最大の魅力は成長の早さです。多くの果樹が実をつけるまで何年もかかるのに対し、タマリロは植えてから1.5〜2年ほどで結実し始めます。4年目頃に生産量のピークを迎え、その後も約5〜12年にわたって実をつけます。
日照時間の長さの影響を受けにくく、成熟した1本から年間20kg以上を収穫できます。果樹園では1ヘクタールあたり15〜17トンの収量があり、条件のよい成熟木では、家庭で3か月かけても食べきれないほどの実がなることもあります。
適した環境
- 気候:暖かく湿度のある環境を好む。年間降水量600〜4,000mm、年間平均気温15〜20℃ほどがよい
- 寒さ:霜に弱く、−2℃以下になると被害を受けることがある
- 土壌:水はけがよく、軽くて肥沃な土が適する。pH5〜8.5と適応の幅は広いが、水がたまる場所は不向き
増やし方
種子または挿し木で増やせます。
- 種子から:まずまっすぐな幹を形成し、高さ1.5〜1.8mほどになってから枝分かれする
- 挿し木から:早く枝分かれして低木のような樹形になる。風の影響を受けやすい場所では挿し木苗が向く場合がある
管理のポイント
- 水やり・マルチング:根が浅く乾燥に弱いため、継続的な水分供給が必要。株元をマルチングで覆うと水分を保てる。水不足は成長の低下、果実の小型化、収穫量の減少につながる
- 防風対策:根が浅く樹体を支える力が弱いため、強風で枝が折れやすい。特に果実をたくさんつけた枝は折れやすい
- 剪定:若いうちに先端を切ると枝の位置を調整でき、樹形を整えられる。一度実をつけた枝は翌年の生産性が下がるため、古い枝や実をつけ終えた枝は取り除く
- 施肥:ニュージーランドの集約的な商業栽培では、1haあたり窒素170kg、リン45kg、カリウム130〜190kg程度が施される
- 病害虫:トマトなどの近縁作物と比べると害虫への抵抗性は高めだが、大規模栽培では必要に応じた管理が行われる
収穫
果実は一度にすべて熟すわけではないため、数回に分けて収穫します。年間の気温変化が少ない地域では一年中花と実をつけることもありますが、ニュージーランドのように季節変化がある地域では、主に秋に熟します。完全に熟す前に収穫して貯蔵施設で追熟させることもでき、早めの収穫は果実の重みによる枝折れの防止にもなります。
どこで手に入る?
一部の果物専門店や通販サイトで、ニュージーランド産などの輸入品や国産のタマリロが取り扱われることがあります。ただし流通量は非常に限られ、旬の時期や入荷状況によって販売される程度です。
果実は手に入りにくい一方、苗は通販サイトや一部の園芸店で販売されており、比較的入手しやすい植物です。苗から育てれば、成長を観察しながら収穫を目指せます。タマリロに興味を持った方は、ぜひ栽培に挑戦してみてください。
タマリロの将来性

研究・品種改良への期待
研究や品種改良によって、栽培管理、果実の品質、収穫後の処理技術はさらに向上すると期待されています。植物の生理、必要な栄養条件、果実ができる仕組みへの理解が深まれば、より効率的な栽培システムの開発にもつながります。
品種改良の目標としては、次のようなものが挙げられています。
- 種子の休眠を打破すること
- 果実の甘みを高めること
- 収量を増やすこと
- 果皮に時々発生するナトリウムやカルシウムの小さな「石状の粒」を取り除くこと(加工上の障害になるため)
健康食品・食品素材としての可能性
海外では、タマリロの栄養価や加工食品への利用可能性が注目されています。ビタミンC、食物繊維、ポリフェノール、カロテノイドなどを含むことから、健康志向の消費者向け食品としての利用が研究されています。また、皮や種など加工時に出る副産物にも抗酸化成分などの有用な成分が含まれると報告されており、食品素材としての活用研究も進んでいます。
南米原産ながらニュージーランド、オーストラリア、アフリカなど各地で栽培されているタマリロは、まだ十分に活用されていない果樹として、新たな食品や加工品への展開が期待されています。今後、健康食品や新しい果物としての需要が高まれば、輸入量や流通が拡大し、日本でも身近な果物になるかもしれません。
まとめ
早く成長して豊富な実をつけ、独特の風味と高い栄養価を持つタマリロ。日本ではまだ珍しい存在ですが、世界の食文化が広がるなかで、これから注目される可能性を秘めた果物です。見かけたらぜひ一度味わってみてください。
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