アサイーの収穫が命懸けな理由

生物

アサイーは栄養価が高く、健康や美容に良いとされ、近年では日本でも多く、カフェやスーパーフード専門店で取り扱われています。しかし、このアサイーの収穫は非常に危険をともなう仕事です。

この記事はアサイーとはどういった植物なのかを見ていくとともに、どうしてアサイーの収穫は危険なのかについて説明しています。

アサイーの収穫方法

CostaPPPRCC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

アサイーは主にブラジルのアマゾン東部、熱帯雨林の奥深くの沼地や氾濫原に自生するヤシ科の植物です。その果実はアサイーベリーなどと表記される場合もあり、ブルーベリーやその他ベリーに似ていますが植物学的にはこれらのベリー類とは近縁ではありません。

ブラジルの農家は高さ25メートルを超える細長いアサイーの木に登ります。彼らが登るのに使用する唯一の道具は、ペコニアと呼ばれる1本のロープで命綱などはいっさい使いません。ペコニアは以前は葉で作られており、輪っかにしたものを足に巻いて木に登ります。アサイーの幹は上に行くほど細くなるので、登ると木が折れてしまう危険性があります。そのため、登ることができるのは体重の軽い人だけです。

Pancrat (avec l’aide de ma femme)CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

木の一番上の部分には500から900個の果実が枝分かれした穂に実ります。この果実は直径約25mmで
果実の約60から80%を占める、大きな種子を1つ含みます。農家はこれを枝ごとナイフで切っていくのですが、このとき、実は落ちやすいので注意深く収穫する必要があります。

そして、効率的に収穫するため、農家は体を揺らして木をしならせ、周囲に生えている木の実も一緒に取ります。それが終わると、枝を手で持ちながら降りるのですが、特に大きなナイフを持ち、枝を腕一杯に抱えている場合は非常に危険です。また、枝を落とすと、果実に傷がついて商品価値が下がってしまうため、細心の注意を要します。

しかも、リスクは木を下りてからも続きます。アマゾンの熱帯雨林には毒蛇などの危険な生物がいるからです。

都市部で消費されるアサイー

アサイーは18世紀頃、氾濫原地帯に住む人たちの主食となりましたが、都市部での消費や健康食品としての宣伝によって、1990年代半ばにはアマゾン地域外にも普及していきました。現在、ブラジルのアサイー輸出の70%以上が米国に輸出されており、この果実は米国で最も人気のある、いわゆるスーパーフードのひとつになっています。

ただし、アサイーは安くはありません。ここ数十年で人気が爆発的に高まったため、アサイーボウル1杯の値段は最高で15ドルにもなります。一方で、アサイーを収穫する小規模農家は実際に利益を上げることができていません。今日まで、ブラジルのアサイーのほとんどは小規模農家によって収穫されてきました。

しかし、近年、大規模な農園が増えており、家族農家の何世紀にも渡る生活様式に圧力をかけています。ある農家は2021年にバスケット53個分を収穫し、約950ドルの収入を得ましたが、これは1ポンドあたりわずか0.2ドルです。一方、加工されたアサイーシャーベット1ポンドは、ブラジルでは7ドル以上で販売されることがあります。アサイーは収穫後、すぐに悪くなってしまうため、できるだけ早く売らなければならないというのが問題点です。そのため、加工機械を持たない農家は価格交渉の余地がほとんどありません。

アサイーを買い取った業者は船でブラジル北部のパラー州州都、ベレンに運びます。果実が腐る前に売るのは時間との競争なので、市場は夜通し営業しています。ここでの価格は需要に応じて日々変わります。アサイーの輸出は急増し、2011年から2020年の間に約14,000%増加しました。

Despolpando açai – Mercado Ver-o-peso – Belém/PA

現在、アサイーはノースアサイー社などの加工工場に輸送されています。そして、傷みやすいため、24時間以内に加工される必要があり、毎日22トンのミがペースト状に加工され、こうしてみなさんがご存じの姿のアサイーになります。この段階で価格が最大で約177%上昇します。

アサイーの世界市場は、2025年末までに約21億ドルに達すると予想されています。

アサイーの実は非常に栄養価が高く、100g中に含まれるポリフェノールは約4.5グラムで、ココアの約4.5倍、ブルーベリーの約18倍ともいわれています。ほかにも、鉄分はレバーの3倍で、食物繊維、カルシウムなども豊富です。

また、カロリーが高いため、運動前または運動後の食事に最適で、抗酸化物質により、肥満、2型糖尿病、脳卒中、高血圧など、あらゆる種類の健康問題を解決できるスーパーフードとして簡単にブランド化が可能でした。

しかし、栄養士によるとこれは誇張されていると言います。アメリカでは減量やアンチエイジング用途で市販されていますが、効果は実証されていません。また、アメリカの連邦取引委員会は、減量を目的としてアサイー製品を販売した企業に対して、詐欺の疑いで処分を行ったことがあります。

それにもかかわらず、アメリカ人はアサイーに夢中になり、フルーツ、グラノーラ、ハチミツなどを混ぜるなど、あらゆる種類のアサイーボウルを作りました。

伝統的にアサイーを消費してきた人々

Cesar Augusto Chirosa HorieCC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

しかしこれは、それよりずっと昔からアサイーを食べてきた人々の文化とは程遠いものです。アマゾンに住む先住民は、何世紀ものあいだ、アサイーを収穫し、消費してきました。そして今でも現地の人々にとって毎日の主食となっています。

近年、アサイーは、この産業で子供たちが働いているという報道で、アメリカやブラジルのメディアでも大きく取り上げられています。13歳の幼い子供たちが収穫のために労働者として雇われ、このプロセスにより、一部の子供たちは転落して重傷を負っているなどといわれています。

しかし、現地の農家は、これは昔からそうで、家族全員が手伝って商売を学ぶのは彼らにとって普通のことだといいます。このような集落はキロンボまたはキランボラ共同体と呼ばれ、何世紀にもわたって存在してきました。

これらの共同体は奴隷にされたアフリカ人の子孫がジャングルに逃げ込み設立したものです。彼らの多くはアサイーを含む、在来の食物の収穫と加工方法を先住民から学びました。ブラジル政府は国内に約6000のキランボラ共同体があると推定しています。

彼らが収穫するアサイーの木は、さまざまな在来の樹木や植物と一緒に自生しています。しかし近年では、より多くの果実を生産するための、大規模な単一栽培農園が増加しています。これらの農地面積は2006年以来、3倍以上に増えました。

単一栽培農園はアサイーの木が自然に繁茂する氾濫原から遠く離れた場所にあることがよくあります。これはつまり、キランボラ共同体のアサイーは近くの川からの、季節的な洪水に頼ってる一方で、大規模生産者はアサイーの木に灌漑を行う必要があるということです。

このようなことから、専門家らはさらにアサイーの人気が高まるにつれて、生物多様性や環境への負荷だけでなく、アマゾンに住む人々の文化的伝統が失われる可能性も懸念しており、そのため、地産地消の重要性を説いています。

美容に興味のあるかたはダイエットも兼ねて自分自身でアサイーの収穫をしてみてはいかがでしょうか?

この記事はYouTubeの動画でも見ることができます。

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