ウイトラコチェとは?味や栄養について。日本で食べれるかなども

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皆さんは病気に冒されたトウモロコシが高値で取引されているのをご存知でしょうか?このトウモロコシはウイトラコチェ(huitlacoche)と呼ばれ、1ポンド(453.6グラム)あたり40ドル(約5,629円)もの値がつくこともあります。それではなぜこのグロテスクな見た目のトウモロコシがそんなに高く売れるのでしょうか?

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ウイトラコチェの発明

14世紀から16世紀にかけて、アステカ人がメキシコ渓谷で広大な帝国を拡大して行く中で、彼らが直面した最大の問題は何百万人の国民をどうやって養うかということでした。アステカ人は増え続ける人口を支えるのに充分な食料を生産する必要があったのです。

彼らはこの問題を灌漑を利用した段々畑とチナンパと呼ばれる沼地に泥を盛り上げて作った浮島の畑を考案することで解決しました。こうした先進的な農業は、トマト、ピーマン、豆、カボチャ、そしてアステカ神話において聖なる作物であるトウモロコシを含む多様な作物の基礎となりました。

しかし、ほとんどの文明と同様に、アステカ人は農業革命の過程で予期せぬ課題に直面し、適応する必要がありました。こうした発見のひとつがウイトラコチェです。

ウイトラコチェとは

ウイトラコチェは黒穂病に感染したトウモロコシのことを指します。黒穂病は植物の奇形を伴う病気の一種で、葉や節、穂の中に黒い粉の詰まった組織を形成します。トウモロコシの場合、通常は雨期に発生し、粒を腫瘍状に変形させます。

最初は白から黄色ですが、次第に青みがかった色になり、熟すにつれて最終的に輝く黒檀色に変わります。この現象は自然に発生し、多くの場合、シカが穂軸をかじる等の妨害により発生します。

しかし、アステカ人はこれを意図的に栽培してきました。それは、そのグロテスクな見た目に反し、ウイトラコチェは食べることができるからです。それどころか、その独特の味と食感のため、現在でも高級料理として貴重な食材となっています。

ウイトラコチェの味と食べ方

ウイトラコチェは通常生で食べられず、火を通すことによって柔らかい食感になります。その味は土っぽいキノコのような風味と言われ、素晴らしいスモーキーさがあり、トウモロコシの糖分からほのかな甘味が感じられます。また、黒トリュフとアミガサタケの中間のような風味とも言われています。このことから、ウイトラコチェは英語で「メキシコのトリュフ」とも呼ばれています。

今日、ウイトラコチェはメキシコの珍味として屋台から青空市場、ミシュランの星を獲得したレストランまで見つけることができます。

ウイトラコチェは一般的にトルティーヤに入れて旨味たっぷりのベジタリアンタコスとして食べられます。これにはチーズ、またサルサが加えらることもあります。

ウイトラコチェの栄養価

ウイトラコチェは美味しいだけでなく、栄養価の高い食品で高タンパク質、飽和脂肪酸、免疫系と骨の健康に有益な必須アミノ酸リジン多く含んでいます。また、豊富な繊維、鉄、カルシウムなどの貴重なミネラル、ナイアシンやリボフラビンなどのビタミンも含まれています。

このユニークな栄養素の組み合わせにより、ウイトラコチェは珍しい植物ベースの健康的な料理で、肉の代替品としても最適です。

ウイトラコチェの価格

Feria de ProductoresCC BY 2.0, via Wikimedia Commons

ただ、ウイトラコチェは非常に高価です。

その理由はまずウイトラコチェには季節性があり、収穫期間が近いことが挙げられます。

ウイトラコチェは主に通常は7月から9月までに発生し、これは雨の後に野生のキノコが繁茂するのと似ています。このように収穫に最適な時期は短く、理想的な穀粒はふっくらと硬いのですが、早すぎると穀粒が苦くなり、遅すぎるとドロドロになります。

この限られた期間はウイトラコチェの希少性を高めているのです。

その他、ウイトラコチェの高価な理由として、取り扱いと保存が難しいことが挙げられます。

ウイトラコチェは繊細なため、収穫後2~3日以内に加工、または冷蔵保存する必要があります。強い匂いがする場合は通常、傷がついている可能性があります。また、大雨はウイトラコチェを台無しにし、穀粒がドロドロになり、商品価値が下がってしまいます。

さらに穂軸には虫が寄生することが多いため、農家は注意深く検査する必要があります。

新鮮なウイトラコチェは一般的なメキシコの買い物客にとって貴重な掘り出し物であり、アステカ時代と同様に美味しく、より高い利益を生み出すため、全国のトウモロコシ農家にとって恵みの象徴です。

アメリカでのウイトラコチェの扱い

このように、メキシコではウイトラコチェは高級食材ですが、国外、特に隣国アメリカでは残念ながら人気がありません。多くのアメリカのレストランのメニューにウイトラコチェが載っていないことは、この風変りな食材の評判がどれほど悪いかを物語っています。

これまでアメリカでは黒穂病はトウモロコシにとって望ましくない病気で、長い間、収穫量に大打撃を与え、収穫機を詰まらせる厄介者とみなされてきました。

米国農務省は農薬や黒穂病に耐性のあるトウモロコシのハイブリッド種を使って黒穂病を根絶する為の研究に何年も費やしてきました。

これに加え、ウイトラコチェは文化の違いなどからはアメリカの食料品店の棚から遠ざかっています。その青灰色がかった黒の外観はアメリカ人の目には魅力的には映らないようです。また、長年病気として扱われていることから、固定観念によって消費者は食べられないものと判断しているのかもしれません。

ただ、ほとんどの外国料理のトレンドと同様に、メキシコ料理の人気は通常、旅行者によるいわゆる発見から始まります。また、現在、インターネットの普及により、旅行先としてのメキシコへの関心が高まっています。一方、影響力のある料理人やテレビのパーソナリティは、このエキゾチックな食材に光をあてています。観光ブームと料理家のインフルエンサーが一緒になってこの食材を流行らせ、それがアメリカのレストラン、時には食料品店にまで入り込むことがあります。

アメリカのウイトラコチェ農家

実際、アメリカの農家の中にはようやくウイトラコチェを意図的に栽培する価値があることに気づき始めた人がいます。農家のロイ・バーンズ氏は1993年からフロリダ州グローブランドの農場でウイトラコチェの栽培を始めました。

バーンズ氏は自らトウモロコシを栽培し、ウイトラコチェが収穫されると、冷凍して梱包し、オレゴン州の企業オレゴンマッシュルームズなどの販売業者に出荷します。オレゴンマッシュルームズは全国の卸売業者、レストラン、家庭料理人にさまざまな菌類を販売している企業です。

ウイトラコチェの需要はゆっくりと着実に増加しており、今ではすべての州のレストランや卸売業者に販売しています。オレゴンマッシュルームズは十年間、ウイトラコチェを販売してきましたが、近年、特に家庭料理人による注文が急増しているといいます。

このように、アメリカでのウイトラコチェは一般的になりつつあります。このような食材を受け入れることは料理の視野を広げるだけでなく、先住民の文化遺産を尊重し、保護することにもなります。

日本でウイトラコチェを入手できるか?

皆さんはウイトラコチェを食べてみたいですか?残念ながら日本ではスーパーなどで取り扱いが無く入手が困難な食材です。ただ、ウイトラコチェの缶詰製品はネットで購入が可能なので興味ある方は試してみてください。

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