チンパンジーによるゴリラ襲撃:2019年に起きた衝撃の事件を徹底解説

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2019年、チンパンジーが集団でゴリラを襲撃したことが初めて観察されました。この襲撃により、1頭のゴリラが命を落としています。近年、チンパンジーとゴリラの世界で一体何が起きているのでしょうか?この記事は、チンパンジーによるゴリラへの襲撃の詳しい内容について説明しています。

哺乳類の争いについて

同種間の暴力は哺乳類の間ではよく見られることです。人間の間でもネズミの間でも起こります。これは多くの場合、食料の奪い合いが原因で、ひとつしかない食料を複数の動物が争う中で致命的なダメージを相手に与える結果となることもあります。一方、他種間の暴力は捕食という形でよく見られます。そのため、他種間での食料の奪い合いはこれよりもずっとまれです。

チンパンジー同士やゴリラ同士の殺し合いは、複数の群れで頻繁に報告されています。しかし、オランウータンではそのような殺し合いは見られません。

チンパンジーの同種間の争いで最も多いのは、大人のオス同士による殺害です。そして、この殺害はコミュニティ内よりもコミュニティ間でより多く発生しています。この争いは、チンパンジーの群れが縄張りの境界をパトロールしている時に特に頻繁に起こります。

チンパンジーは、他のチンパンジーの存在を確認するために、コミュニティの縄張りに侵入することがあります。この場合、しばしば争いに発展することになります。これは、人間社会で起きる戦争と似ています。

一方、ゴリラ同士の殺し合いは、あるグループが他のグループに出会った時に発生することが多くなります。

事件の背景

Agence National des Parcs NationauxCC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

チンパンジーの生息域は中央アフリカから東アフリカに広がり、いくつかの地域でゴリラの生息域と重なっています。ガボン共和国西部にあるロアンゴ国立公園でも同様に、チンパンジーとニシローランドゴリラの生息域が重複しており、事件はこの場所で起き、2度発生しています。

1回目の事件:2019年2月6日

ロアンゴ国立公園に生息する「レカンボ」と呼ばれるチンパンジーの群れが、正午ごろ自分たちの縄張りの外にパトロールに出ました。この時、グループの頭数は27頭でした。夕方になり、他のグループのチンパンジーの形跡が見られなかったため、パトロールを終えて縄張りの東側の境界線の内側に戻りました。この時、27頭のグループは18頭と9頭の小グループに分かれていました。

その付近で、チンパンジーの大きなグループが突然ゴリラの群れと遭遇したのです。ゴリラの群れには1頭のシルバーバック、3頭のメス、そして1頭の子どもが含まれていました。1頭のオスのチンパンジーが吠え声をあげると、他のチンパンジーたちも一斉に吠え出しました。ゴリラたちもこれに応じて咆哮します。

始めに攻撃を仕掛けたのはゴリラのシルバーバックでした。彼は1頭の若いメスのチンパンジーに襲い掛かり、放り投げました。この攻撃に反応し、数頭のオスとメスのチンパンジーがシルバーバックを取り囲み、連携して攻撃しました。

一方、その混乱の中で「リトルグレイ」と呼ばれるオスのチンパンジーが子どものゴリラを押さえ込みました。子どものゴリラは激しい鳴き声を上げましたが、数頭のチンパンジーによって動きを封じられ、最終的には致命的な攻撃を受けました。この争いはおよそ1時間続き、ゴリラの子どもが命を落とす結果となりました。

2回目の事件:2019年12月11日

この日、27頭のチンパンジーたちは北側の縄張り境界線へ向かって進んでいました。彼らは頻繁に地面を嗅ぎ回り、まるで差し迫った何かを感じているかのような様子でした。正午ごろ、オスのフレディが突然毛を逆立て、警告の声を上げました。近くの大木が揺れており、彼はその木の中にゴリラの姿を見つけたのです。

ゴリラの群れには1頭のシルバーバック、それぞれ赤ちゃんを抱えた2頭のメス、そしてその他の若いゴリラが含まれていました。合計6頭でした。チンパンジーたちはその瞬間から攻撃態勢に入りました。ほとんどのチンパンジーが木の上に登り、ゴリラを包囲しました。一方で残りの4頭は地面に留まり、待機していました。チンパンジーたちはゴリラに向かって吠え立て、大きな騒音を生み出しました。

しばらくすると、シルバーバックのゴリラが隙をついて木を駆け下り、逃げ出しました。その際、チンパンジーたちはシルバーバックに向かって攻撃を仕掛けましたが、追跡する者はいませんでした。その後、赤ちゃんを抱えたメスのゴリラが木を降りてきた際、チンパンジーたちに取り囲まれてしまいました。彼らは赤ちゃんゴリラを執拗に攻撃しましたが、母親のゴリラは何度か赤ちゃんを取り返しました。最終的に、彼女と赤ちゃんは逃げることができました。この時、メスのチンパンジーたちは、その様子を傍観するだけで何も行動を起こしませんでした。

もう1組の親子ゴリラも、同じように包囲されました。そして、母親は赤ちゃんゴリラを奪われてしまい、最終的に赤ちゃんゴリラはチンパンジーたちによって食べられてしまいました。この争いは1時間20分も続きました。

襲撃の背景と意図

これらの襲撃が発生した背景や目的については、まだ完全には解明されていません。2019年2月に発生した最初の事件では、ゴリラの子どもが命を落としましたが、捕食行動は見られませんでした。一方、同年12月に発生した2回目の事件では、赤ちゃんゴリラが捕食される様子が観察されました。この違いから、研究者たちは以下のような疑問を持っています:

  • これらの襲撃は捕食が主な目的なのか、それとも他の理由があるのか?
  • チンパンジーとゴリラの関係性に、食糧や縄張りを巡る争いがどの程度影響を与えているのか?

研究者たちは、この2つの出来事を単なる偶然の衝突と見るのではなく、資源不足や生息域の変化など、外部要因が関与している可能性があると考えています。

人間の影響

チンパンジーとゴリラは、進化の過程で同じ地域での共存に適応してきました。ゴリラは主に地上の草を食べ、チンパンジーは木々の果実を主食としています。このように食物の競合が少ない環境でバランスを保ちながら生活していました。

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しかし、近年の人間による開発活動が、これらの共存関係を大きく変えつつあります。生息域の縮小や森林伐採による環境破壊は、チンパンジーやゴリラの生活に深刻な影響を及ぼしています。例えば、果実や植物などの主要な食糧資源が減少し、それが食糧を巡る争いを引き起こしている可能性があります。

今後の展望

研究者たちは、これらの襲撃が突発的な現象ではなく、今後も繰り返される可能性があると考えています。特に、ロアンゴ国立公園内では少なくとも7つのゴリラの群れがチンパンジーの縄張りと重複しているため、再び遭遇する状況が想定されます。

研究者たちは引き続き調査を続け、両種の関係性や生態系の変化についてさらなる理解を深めることを目指しています。また、人間が自然環境に与える影響についても注視し、絶滅危惧種の保護に向けた取り組みが重要視されています。

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