これまで、絶滅したと思われていた生物が実は生存していたという例がいくつか報告されています。そこで今回は、実際には絶滅していなかったことが判明した、ロマンあふれる生物たちを3種紹介したいと思います。
シーラカンス

シーラカンス目は、これまで中生代白亜紀末の大量絶滅を境に、すべての種が絶滅した古生物だと思われていました。しかし、1938年、南アフリカのイースト・ロンドン市付近で、漁船の網に大きくてグロテスクな魚がかかりました。この魚がきっかけで、絶滅と思われたシーラカンスが実在していたことが発見されたのです。
イースト・ロンドン博物館の学芸員であったマージョリー・コートニー=ラティマーは、以前から地元の漁師たちに珍しい魚を見つけたら知らせるよう依頼しており、漁船の船長から連絡を受けたラティマーは港へ急ぎました。彼女はこの魚を見て、学問的に貴重だと考え、魚の頭部や表皮の一部を塩漬けにして保存するとともに、魚全体のスケッチを作成しました。そして、スケッチや報告を南アフリカのロードス大学のスミス教授に送りました。
スケッチには、白亜紀末に絶滅したとされていたシーラカンス目の特徴が明確に描かれており、スミス教授は現地へ急行。標本を調査した結果、この魚が現生種のシーラカンスであると断定し、「ラティメリア・カルムナエ(Latimeria chalumnae) 」と命名しました。この発見は科学界に衝撃を与え、科学雑誌『ネイチャー』にも掲載されました。
その後、スミス教授は完全な標本を求めて、付近の漁師に対して賞金付きの調査を依頼。第二のシーラカンスが見つかったのは14年後の1952年、最初の発見地から約3000km離れたコモロ諸島でした。コモロでは、この魚は「役に立たない魚」という意味の「ゴンベッサ」として漁師の間で知られていましたが、保存された標本を通じてスミス教授はさらなる研究を行うことができました。
また、1997年にはインドネシアのメナド近海でも新たな発見がありました。カリフォルニア大学の生物学教授マーク・アードマンが現地市場でこの魚を確認し、1998年に「インドネシアシーラカンス」という新種であると判明しました。
このように、シーラカンス目は白亜紀を最後に化石記録が途絶えており、その後現生が確認されていなかったことから「生きている化石」と呼ばれています。古生代から中生代にかけて広く分布していたシーラカンス目の生物は、最大で全長6.3mに達する種類も存在しました。現在のシーラカンスは体長約1~2mで、深海に生息し、魚類やイカを捕食していると考えられています。
メタセコイア

この植物の発見には日本人が関わっています。メタセコイア類の化石は、これまで北半球の第三紀地層からしばしば発見されており、当初はセコイア属などに分類されていました。しかし、セコイア属とは異なり、枝や葉の輪生が規則的ではないことや、落葉性であると考えられることから、1941年に植物学者の三木茂氏が新たにメタセコイア属を提唱しました。
メタセコイア属は後期白亜紀に出現したとされ、シベリア東部や日本を含む北太平洋沿岸、カナダ極地周辺から化石が発見されています。古第三紀には、ヨーロッパを除く北半球の北極圏から中緯度地域に広く分布していたことがわかっています。しかし、新第三紀に寒冷化が進むと北極圏では見られなくなり、最終的には更新世には化石記録が途絶え、絶滅したと考えられていました。
三木氏がメタセコイア属を提唱した直後に太平洋戦争が始まったため、この論文は国外の多くの研究者の目に触れませんでした。しかし、中国北京の研究者がこの論文を読んでおり、中国四川省で神木とされていた木を研究した結果、三木氏が記載したメタセコイア属によく似ていることが判明しました。こうしてこの木は1948年にメタセコイア属の新種として記載されました。
現在、メタセコイアは「生きている化石」として知られています。メタセコイアは中国中部に自生しており、標高750~1500mに分布しています。1948年には、アメリカの植物学者がメタセコイアの種子を持ち帰り育成を開始。1950年には三木氏が結成したメタセコイア保存会を通じて、100本の苗木が日本国内の研究機関や植物園に配布されました。このため、現在では日本各地の公園や街路樹として親しまれています。
皆さんの中にも、地元の公園でメタセコイアを目にしたことがある方は多いのではないでしょうか。中国にのみ生き残っていたメタセコイアですが、成長が早く、美しい樹形を持つことから、現在では観賞用として世界中で植栽されています。
ニューギニア・シンギングドッグ

ニューギニア・シンギングドッグは、パプアニューギニア原産の野生犬です。また、オーストラリア原産のディンゴと近縁であるともされています。ニューギニア・シンギングドッグは、その名前の通り「歌う犬」として知られています。この名前は、不思議な遠吠えの音がまるで合唱のように聞こえることに由来します。彼らは個体ごとの発声の特徴に違いがあり、数頭から数十頭が集まって遠吠えを行うことで、合唱しているような印象を与えるのです。
外見は原始的な特徴を持ち、体重は8〜14キロほどで、中型犬程度の大きさになります。ニューギニア・シンギングドッグは、パプアニューギニア中央部の標高約2100mの地点で1897年に発見されました。しかし、その後、生息地の減少や他の犬種との交雑が進んだため、野生では絶滅したと考えられていました。
現在は、1970年代に捕獲された個体たちの子孫が、動物園や施設で約200頭のみ飼育されています。しかし、その個体数が少ないため、近親交配が進んでいるという課題があります。半世紀以上もの間、野生個体は目撃されていませんでしたが、2016年にインドネシア領ニューギニア島西部の高地で探検隊が15頭の野生の犬を発見しました。このうち3頭の血液を採取してDNAを調査した結果、その遺伝子配列が他のどの犬種よりもニューギニア・シンギングドッグに酷似していることが判明しました。
ただし、配列が完全一致しなかったのは、長期間別々に暮らしていたことと近親交配の影響だと考えられています。そのため、研究者たちは野生種を飼育されている個体と区別するため、「ハイランド・ワイルドドッグ」と呼んでいます。今後、ハイランドワイルドドッグとニューギニア・シンギングドッグを交配させることで、遺伝的多様性の向上を目指しています。
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