世界最大のカメ「オサガメ」の大きさや生態など

生物

オサガメは現存するカメの中で最も大きいだけでなく、様々な能力を持っています。この記事はオサガメの大きさや生態について詳しく説明しています。

オサガメとは

オサガメは外洋に生息するカメで、原生種では本種のみでオサガメ科オサガメ属を構成します。オサガメの仲間は1億1000万年以上前の白亜紀に進化して以来、比較的姿を変えずに存在してきました。そのため、彼らはほかのウミガメと違った特徴を多く持っています。

オサガメは現存する全てのウミガメの中で最も広い分布域を持ち、北はアラスカとノルウェー、南はアフリカ、ニュージーランドに達しています。オサガメは全ての熱帯および亜熱帯の外洋に見られるうえ、北極圏にまで生息することができるのです。

オサガメの大きさ

まず、このカメの特徴で真っ先にあげられるのが、その大きさです。

孵化したばかりのオサガメは、甲羅の長さが平均6cm、体重が約46gと、ほかのウミガメとほとんど同じぐらいの大きさしかありません。

しかし、彼らはその後、成長すると、現生する全てのカメの中で最も大きくなり、全長1.8m、重さが500kgの体重に達します。これまでに確認されている個体で最大のものはパキスタンのサンドスピットビーチで発見された個体で、全長が213cm、体重が650kgでした。また、そのほかにも256.5cm、916kgという報告もありますが、こちらはあまり信憑性が高くはありません。

しかし、ある科学論文では、オサガメは最大1000kgにまで成長する可能性があるといわれています。

ゾウガメでも最大で270kg程度なので、オサガメがどれだけ大きいかがよく分かります。

オサガメの潜水能力

さらに、オサガメは最も深く潜ることができる海洋生物のひとつでもあり、ある個体が水深1280mまで潜水したという記録が残っています。

また、潜水時間も極めて長く、平均では3~8分程度ですが、最長では30~70分も潜ることができます。

オサガメがこれほど深くまで潜ることができるのは、その独特な甲羅にあります。彼らの甲羅にはほかのウミガメと違って、骨質と鱗が発達していません。その代わりに、彼らの甲羅は脂肪と柔軟な皮のような皮膚で覆われています。この柔軟な甲羅は空気を取り込むと膨張し、深海に潜水すると収縮するために、高い水圧に耐えることができるのです。

さらに、彼らの骨格は薄く弾力があるので、気圧を分担し、脳や内臓へのダメージを避けることができます。

Gunnar CreutzCC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

また、オサガメは冷たい深海に耐えるため、代謝によって発生する熱を利用して高い体温を維持する能力を持っています。そのため、彼らは現存する爬虫類の中でも特異な存在とされてきました。

彼らは1日のわずか0.1%しか休みません。オサガメは絶え間なく泳ぐことによって、筋肉から熱を生み出しているのです。

そして、熱を保持する厚い脂肪および大きな体によって、オサガメは周囲の水と比較して高い体温を維持することができます。ある個体は、生息していた水温より18℃も高い体温だったことがわかっています。

オサガメの食性

オサガメはイカやタコなどの頭足類、小さな甲殻類、魚なども食べることがありますが、そのほとんどがクラゲや体の柔らかい刺胞動物などを餌としています。

彼らは歯がない代わりに、口の中に後ろ向きに生えた無数の棘があり、食べ物を飲み込んだとき、獲物が逃げるのを防いでいます。

MdomingoaCC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

オサガメが深海に潜るのはクラゲを食べるためです。クラゲは100g当たり22kcalと栄養価が低く、体重数100キロの大型の個体となると、1日の摂取量は100kg近くになります。その為、オサガメは一日中、エサのクラゲを求めて追いかけます。

その結果、彼らは昼間はクラゲの生息するより深い場所に潜水し、夜になるとクラゲが水深の浅いところまで登ってくるので、一緒に浅いところまで戻ります。

深海は光が届かないため非常に温度が低くなりますが、オサガメたちは0.4度という極めて低い海域で活発にエサを取っていることがわかっています。彼らは体が冷えるたびに、より暖かい水面近くに戻って体温を取り戻し、体が温まると深い海に潜り続けます。

高い遊泳力を持つオサガメ

Nkansah RexfordCC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

オサガメはまた、最も早く泳ぐ爬虫類でもあります。普段は時速10kmぐらいで泳ぎますが、ギネスブックの1992年版には時速35.28kmで移動するオサガメが記載されています。

オサガメはウミガメの中で最も流体的な体を持ち、巨大な前脚は水を掻くのに適しています。他のウミガメも同様に外洋で泳ぐために適した平らな前足を持っていますが、その中でもオサガメの足ヒレは、現存するウミガメの中で体に対する比率が最も大きいのです。

これらの特徴が、このカメのスピードを生み出しています。

オサガメの性質

オサガメは活動時間や移動距離が長く、常に四肢を動かして遊泳するため、狭い環境で停まっていることができません。そのため、飼育環境では水槽の壁に頭が激突してしまい、飼育は難しいとされています。

また、その活発な行動のためか、ほかのウミガメと違い、性質が非常に荒くなります。大人のオサガメが噛もうとしてきたサメを逆に追いかけ、攻撃を仕掛けた様子が観察されています。

さらには人間を乗せたボートを攻撃したケースもありました。

オサガメの保全状況について

Elise PetersonCC BY 3.0, via Wikimedia Commons

これまで見てきたように、さまざまな高い能力を持ったオサガメですが、現在絶滅の危機に瀕しています。1980年、全世界で推定115,000匹のメスが産卵していましたが、現在では26,000から43,000匹にまで劇的に減少しています。

オサガメの肉はクラゲ由来の毒を含んでいるので食用には適しませんが、卵は食べることができます。そして、カリブ海などの一部の文化では卵を媚薬と見なしています。そのため、世界中で今でもオサガメの卵が採られており、この事が個体数減少の最も重要な要因として考えられています。これはタイやマレーシアなどの国々での採卵により、地域の営巣個体群がほぼ完全に崩壊してしまっているほどです。

さらに、漁業による混獲、特にマグロ用のはえ縄漁も個体数の減少につながっています。オサガメはこれまでに約5万頭が混獲されたと推定されています。

その他の原因に、海に浮かぶビニール袋があります。これは、外洋に棲むオサガメはこれらのビニール袋をクラゲと間違えて食べてしまうからです。

オサガメは、クラゲの主要な捕食者であるため、クラゲの個体数を抑えるのに役立っています。クラゲの餌は主に小魚で、オサガメが減少すると漁獲量が減ってしまいます。そのため、オサガメの保護は人間活動にとっても重要となるでしょう。

この記事はYouTubeの動画でも見ることができます。

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