ウイトラコチェは黒穂病に感染したトウモロコシのことをいい、そのグロテスクな見た目に反し、メキシコでは珍味とされ、ケサディーヤやトルティーヤベースの料理の具材として、また、スープに入れて食べられます。
この記事はウイトラコチェについての基本的な情報から料理方法と実際に食べてみた感想などをシェアしています。
ウイトラコチェとは何か?
ウイトラコチェは黒穂病に感染したトウモロコシのことを指します。黒穂病は病原菌によって引き起こされる植物の病気です。大麦、小麦、粟、トウモロコシなどの穂に黒病菌が付着すると、侵入してぎっしりと黒い粉が詰まって、実が正常に実らなくなります。黒穂病に罹ったトウモロコシの穂は腫瘍のようなこぶができ、これらのこぶは感染したその植物の肥大した細胞と、菌糸、胞子で構成され、その組織、質感、発達パターンはキノコに似ます。
トウモロコシが黒穂病に感染するとその畑の収穫量は減少します。それは、黒穂病の菌は風に乗って健康なトウモロコシに感染するため、ひとつ感染すると畑全体に広がってしまうからです。
そのため、通常は農家からは嫌われ黒穂病に感染した作物は多くの場合、廃棄されます。しかし、こぶが未熟なものは食用として利用でき、食べても体に害はありません。それどころか、メキシコでは珍味として高く評価されています。
これはウイトラコチェと呼ばれ、見た目は非常にグロテスクですが、感染していないトウモロコシよりもかなり高い価格で販売されています。
成熟しきったこぶは乾燥しており、ほぼ完全に胞子で満たされているため、料理に使用する場合、こぶが未熟な状態で収穫されます。トウモロコシの穂が感染してから2~3週間後に収穫された未熟なこぶは水分を多く保持しており、火を通すことによって柔らかい食感になるのです。
その味は土っぽいキノコのような風味と言われ、素晴らしいスモーキーさがあり、トウモロコシの糖分からほのかな甘味が感じられます。また、黒トリュフとアミガサタケの中間のような風味とも言われています。このことから、ウイトラコチェは「メキシコのトリュフ」とも呼ばれています。
今日、ウイトラコチェはメキシコの珍味として屋台から青空市場、ミシュランの星を獲得したレストランまで見つけることができます。
関連動画:ウイトラコチェとは?味や栄養について。日本で食べれるかなども
ウイトラコチェ(タコス)の調理方法
今回は知人の紹介でTakumaさん(https://www.instagram.com/takumas_tacos)という方にタコスを作っていただきました。
タコスはメキシコを代表する料理のひとつで、メキシコ人の主食であるトウモロコシのトルティーヤで様々な具を包んで食べる、まさに国民食と言えるものです。トルティーヤはすり潰したトウモロコシの粉や小麦粉から作るメキシコ、アメリカ合衆国の伝統的な薄焼きパンのことをいいます。
材料
ウイトラコチェ | 1缶(380g) |
玉ねぎ | 1つ |
青唐辛子 | 2本 |
ニンニク | 1欠け |
バター | 8g |
塩 | 少々 |
残念ながらウイトラコチェは現在、日本の市場には出回っていないので、今回、缶詰をネットで購入し
海外から取り寄せました。1缶の内容量は380gで、6,623円(税込み・送料別)です。購入から到着までちょうど2週間かかりました。
まずは具材から作っていきます。
玉ねぎ、青唐辛子、ニンニクをみじん切りにしてフライパンに油をひき、玉ねぎ以外を弱火で炒めます。
そして、香りがたってきたら、玉ねぎがきつね色になるまで中火で炒めます。
そこに、ウイトラコチェを入れ、水分がなくなるまで10から15分程度中火で炒めます。
十分水分がなくなったら、バターをいれて軽く混ぜて完成です。
次は生地です。
生地はトウモロコシを石灰水処理したマサハリナという粉を使用しています。
石灰水処理はニシュタマリゼーションとも呼ばれ、このプロセスにはいくつかの利点があります。まず、ニシュタマリゼーションはトウモロコシの細胞壁を分解し、消化しやすくします。トウモロコシには不溶性食物繊維が沢山含まれているので下痢になりやすいため、トウモロコシを毎日食べるメキシコ人にとってニシュタマリゼーションは必要不可欠です。そして、ニシュタマリゼーションをすることによって、トウモロコシに独特の風味と柔らかい食感を与えることができるため、トルティーヤ、タマル、その他の伝統的な料理に最適です。
このマサハリナと水を3:4の割合で混ぜ、塩を少し加えます。
混ざったら丸めてプレスし、両面を2分程度焼いて完成です。
食べてみた感想
実際に食べてみた感想は、生地との相性が良くて非常に美味でした。また、確かに食感は柔らかく、弾力があり、やはりキノコに近い感じでした。一方でトウモロコシを食べている感じは全くありませんでした。試食していただいたかたによると、その味は独特で、トリュフとも違うそうです。そして、食べていただいたみなさんに絶賛で、5、6人ですぐに完食してしまいました。
このタコスをケサディーヤにもしていただきました。ケサディーヤとはチーズ入りの焼きトルティーヤのことです。トルティーヤ生地にチーズなどをトッピングしてフライパンでこんがりと焼き上げます。焼きあがった生地はサクサクで、チーズとの相性も抜群でした。
この記事を読まれて興味を持たれた方はぜひウイトラコチェを食べてみてください。
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