和牛よりも高価なタケネズミの料理と味について

生物

タケネズミと呼ばれる大きなネズミは東南アジアや中国南部では和牛よりも価値があります。それではなぜネズミがそんなに高価なのでしょうか?

この記事はタケネズミが高価な理由と料理や味について説明しています。

タケネズミとは?

IUCN Red List of Threatened Species, species assessors and the authors of the spatial data.CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

タケネズミは中国南部、ミャンマー北部、ベトナム北部に分布する齧歯類の一種です。通常、高地の竹林、松林、プランテーションに生息します。

頭胴長は21~38cm、尾の長さは5~9cmあり、見た目はモルモットを大きくした感じです。

タケネズミは繁殖期を除いて単独で生活します。彼らは地面にトンネルを掘って生活し、巣穴の深さは20から30cm、長さは最大45mにまで及びます。

主に竹の芽や根を食べ、一年後くらいに食料が枯渇すると別の場所に移動します。

生息範囲は非常に広く、特定の地域ではよく見られ、中国の一部では農園の害獣とみなされています。

タケネズミの捕食者にはユキヒョウやレッサーパンダがいますが、主な脅威は人間です。

鼠食文化について

Hector GarciaCC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

ネズミの肉は一部の文化では病気の恐れや宗教上の理由でタブーとされ、日本でも珍しいのですが、
一方で主食としている文化もあり、アフリカ、アジア、ヨーロッパなど世界各地で食べられています。ネズミの肉を食べる習慣は鼠食文化と呼ばれています。

東アフリカのマラウイではトウモロコシ畑でノネズミを狩って食用としています。ここでは棒に刺して調理したり、塩漬けにしたり乾燥させたりして食べられ、市場や道端の屋台では人気のある珍味となっています。

アメリカではラットシチューがウェストバージニア州の特産品で、これは車両に轢かれた動物を料理する料理法であるロードキル料理の一種です。

イングランド北部ではネズミのパイが伝統的な料理となっています。ヴィクトリア朝イギリスにおいては、貧しい労働者階級の食糧源となったほか、金持ちの間でも珍味とされていました。また、第二次世界大戦期には、イギリスの生物学者らが実験用ラットをクリーム状にして食べていました。

食用として飼育されるタケネズミ

タケネズミの肉は特にタンパク質が多く、美味とされています。

そのため、近年、多くの地域でタケネズミの養殖が進んでいます。タケネズミを飼育している農村はベトナム北部など、丘陵地帯にあることが多く、牛や豚を飼育するのに十分な平地を見つけることさえ難しい場所にあります。そのため、タケネズミのような小型家畜の方がはるかに適しており、飼育コストもそれほどかかりません。

タケネズミはコンクリートの壁で仕切られた独特の小屋で飼育されます。ひとつの部屋に成長中の小さな個体なら6匹から7匹入れることができます。ある農場では一度に400匹飼育しているといいます。

タケネズミの飼育は比較的簡単で、ほかの動物よりも手間がかからないといわれています。

ただ、彼らのエサを用意するのは多少苦労します。タケネズミのエサは主に竹で、そのほかにサトウキビも食べます。この竹を切り倒すのは見た目ほど簡単ではありません。農家はネズミに餌を与えるためだけに、永遠に山の竹を切り続ける必要があります。

また、ネズミがエサをしっかり食べているか、注意深く観察する必要もあります。エサを食べていない個体は歯が折れていたり、お腹を壊している場合があり、迅速な対応が必要です。

特に注意が必要なのは妊娠中や授乳中の親子です。タケネズミの繁殖は年に2回から4回行われ、春にピークを迎えます。そして通常、2から4匹、最大で8匹の子が生まれ、生後3か月で離乳します。この時に母ネズミには十分な栄養を与えるようにします。

タケネズミは竹とサトウキビしか食べないのにも関わらず、かなり成長が早い動物です。子どもは離乳後約1か月半で、すでに300グラムから400グラムになり、1年以内で5kgにまで成長します。

タケネズミの価格

Scott EdmundsCC BY 2.0, via Wikimedia Commons

タケネズミの肉は珍味で、素晴らしい味と評され、その肉は鶏肉を濃くしたような味といわれています。

そのため、ハノイの高級レストランではタケネズミの肉が1kg当たり1万円以上で売られています。和牛の価格は品質や種類、地域によって異なりますが、タケネズミの肉はこの和牛よりも高価になるときがあります。

ちなみにアルビノのタケネズミもペット用に増やされており、普通種よりもさらに高価です。

ただでさえ高価なタケネズミですが、さらに価格が急騰しています。それは、タケネズミの養殖は許可されていますが、野生のものを捕まえることは違法とされているからです。

それに加え、すでに複雑だったこの業界の仕組みに、パンデミックはさらなる支障をきたしました。タケネズミの養殖が大きな産業となっていた中国では、人獣共通感染症を防ぐために急遽、何百万ものタケネズミが殺処分されました。

こうして、中国でタケネズミが禁止された結果、ベトナムでの価格が高騰しました。

野生動物は多くの寄生虫や細菌、ウイルスを持っています。日本でもジビエと呼ばれる野生動物を食べる風習がありますが、厚生労働省からも食中毒を防ぐため、ジビエを食べる時はよく加熱するようにとの指導がされています。

2003年8月には野生のシカ肉を刺身で食べたことが原因で、4名がE型肝炎を発症したとの報告があります。ただし、農場では清潔な環境でタケネズミが育てられており、野生のものを購入することはありません。

タケネズミの飼育で成功した一部の農家は村のほかの世帯にもタケネズミの飼育技術を導入することで
経済成長の推進、貧困解消、青年の就労など、現地の社会経済開発に大きく貢献することとなりました。さらに、地元の青年同盟はこれに関連するコミュニティーツーリズムを開発する予定も立てています。このように、ある地域ではタケネズミによって経済が潤ったのでした。

タケネズミの料理と味

ハノイはベトナム料理の中心地であり、珍味を専門に扱う店が多数見られ、タケネズミもこのような店で出されています。

まず、養殖場から購入されたタケネズミは沸騰したお湯にそのまま入れられます。その後、お湯から出されたネズミの皮を強く引っ張ると、簡単に毛皮を剝がすことができます。

そして、すぐに紙で包んで、今度は丸焼きにします

十分に加熱された後、骨と肉を分離し、骨は細かく砕かれます。

一方で、ショウガ、玉ねぎを含むさまざまな種類の野菜とレモングラスなどのハーブを用意しておきます。

そして肉を大きな圧力鍋に入れ、少量の油、塩、沸騰したお湯を入れます。

肉を煮込んでいる間、先ほど取っておいた骨を野菜やハーブと一緒に入れ、スープを作ります。このスープに肉を加えて完成です。

サイドに蒸したジャガイモを添えてどうぞ。

こうして出来上がったタケネズミの肉はとても濃厚、クリーミーで、噛みごたえがあります。また、ハーブがたくさんの風味をつけ加えてくれます。

一部のベトナム人はこれと同等の価格で牛肉や高級ガニなどナンでも好きなものを食べることができるにもかかわらず、その代わりにこのネズミを楽しんでいるのです。

みなさんもベトナムに旅行したときはタケネズミを試してみてはいかがでしょうか?

この記事はYouTubeの動画でも見ることができます。

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