ピラルクーは世界最大の淡水魚として有名ですが、この魚は様々な特徴を持ち、アマゾン最強の魚とも言われています。この記事では巨大生物ピラルクーについて解説しています。
ピラルクーの基本情報
ピラルクーはアロワナ目アロワナ科ヘテロティス亜科アラパイマ属に属する魚類です。
ボリビア、ブラジル、ガイアナ、ペルーのアマゾン川流域とエセキボ川流域に分布し、沼地や川の流れの緩い部分に生息します。
現地ではPirarucuと呼ばれており、これがそのまま標準和名となり、カナ表記されています。英語ではArapaimaですが、日本と同様、原産地での呼び名のままPirarucu とも呼ばれます。また、語尾を伸ばさずにピラルクと発音表記される場合も多くあります。
ピラルクーの体色は黒から銀色まで個体差があり、成魚では体の後半部分が赤くなるのが特徴です。
ピラルクーに似た魚に同じアロワナ科のアロワナがいますが、アロワナは南米、オーストラリア、東南アジアの淡水に分布しています。アロワナの外観的特徴は小型2人を丸呑みするために下あごがせり出したような形をしていることからピラルクーと区別できます。
ピラルクーの大きさ
ピラルクーはの体長が3m、体重が100kgを超えることもあるため、世界最大の淡水魚のひとつといわれています。ただし、メコンオオナマズやヒマンチュラ・チャオプラヤ(プラークラベーン)、オオチョウザメを最大とする研究者もいます。
ピラルクーの記録された最大体重は200kgで、最長は3.07mでした。逸話的な報告では、4.57mもの長さの個体があったと言われていますが、証明はされていません。
彼らは進化において1億年間ほとんど姿が変わっていないと考えられ、生きた化石とも言われています。2300万年前、中新世のピラルクーまたは非常によく似た種の化石がコロンビアで発見されていませす。このため、既知の淡水魚の中で最も古い種のひとつとされています。
ピラルクーの特徴
ピアルクーは丸太のような円柱系の体型をしていますが、頭部は横に平たくなります。腹びれ、背びれ、尻びれ、尾びれは体の後半部分に集中してついています。
円形の鱗は固くザラザラしており、成魚で直径10cmほどもあります。この鱗は波条の表面を持つ石灰化した硬い外層を持ち、この外層の厚さは約0.5mmで重なり合って並んでいます。外層の下は多数のコラーゲン層が多様な角度で重なり合って螺旋形状を形成しています。これにより、彼らの体は強靭さと柔軟さの両方を兼ね揃えることができています。
これは同じアマゾンに生息するピラニアによる噛みつきに耐えるように設計されているためです。ピラニアの顎には三角形の尖った歯が一列で並んでいます。この歯はカミソリのように鋭く、歯のエナメル質構造はサメに似ています。
ピラルクーの鱗はピラニアに噛みつかれると柔軟に曲がり、波形の形態により力が分散されるようになっているのです。
通常、小型のピラルクーはワニに狙われることもありますが、大型の個体は鱗が非常に分厚く保護力があるため、天敵がほとんどいません。
ピラルクーの食性は肉食性で主に小魚や甲殻類を捕食します。また、水面上の鳥、哺乳類、果物、種子、昆虫および海岸近くに棲息する小型陸性動物も食べることがあります。
空気呼吸
熱帯の淡水域では酸欠状態となりやすいために、エラによる水中での呼吸以外にも水面に口を出して息継ぎをすることで酸素を取り入れることができます。これは肺に似た組織で構成された浮袋を備えているためです。そのためピラルクーは基本的に地表の空気に依存しており、5~15分ごとに浮上して水面で空気を吸う必要があります。
ピラルクーは空気呼吸が出来るため、酸素濃度が低い三日月湖でも生き残ることができます。一方、酸素濃度が低くなるとピラルクーの獲物は無気力になるため、彼らは湖の頂点捕食者となることができるのです。
ピラルクーの繁殖
産卵は水位が下がる8月から3月に行われます。そして、オスとメスがつがいになって卵や稚魚の世話をします。
まず、両親は通常、泥の底に幅約50cm、深さ15cmの巣を作ります。そして雨季に入り、水位が上昇すると卵が孵化します。孵化後、稚魚は8~9日間はエラ呼吸のみを行ないますが、それ以降は空気呼吸に移行します。この間、オスは口の中で保護し、またメスはそのオスと稚魚を守ります。
空気呼吸に移行した稚魚はオタマジャクシのように全身が黒く、水面に群れをなして泳ぎ、それを親が下から見守ります。オスもメスも頭部に腺状の分泌器官を持ち、この分泌物は400種類の物質で構成されており、ホルモン、タンパク質、ペプチドおよびおそらくフェロモンで構成されています。稚魚はその物質を食べていることが報告されています。
稚魚の食欲は旺盛で急速に成長し、両親は孵化後約3ヶ月間はとどまって子を守ります。
ピラルクーは4から5歳で性的成熟に達し、飼育下での平均寿命は15~20年です。
ピラルクー漁
この魚は生息地では重要な食料源として、アマゾンの先住民により古来から漁が行われてきました。ピラルクーは空気を吸うために浮上する必要があるため、この時に漁師は銛で突いたり、大きな網で捕獲したりします。
1匹の魚から得られる肉の量は70kgにもなり、その昔、引き上げると1年は暮らせると言われるほど貴重な食糧源でした。
ピラルクー料理と味
ピラルクーの骨なしステーキは珍味と見なされています。ブラジルのサンパウロ市内にある一部の日本食レストランや魚料理店でもピラルクー料理が提供されているようです。
川魚は一般的に泥臭い、生臭いなどのイメージがありがちですが、ピラルクーは驚くほど臭みがない白身で、むしろ味があまりしないくらい淡泊と言われています。ただし、頭の部分は最も美味しいらしく、脂ののった身が舌でとろけるそうです。そのため、ピラルクーの頭は吊り上げた漁師が兜焼きにして食べ、その貴重な部分は現地でもなかなか市場に出回りません。
また、肉を塩漬けして乾燥させ、腐らずに保存できるため、冷蔵庫がほとんどない地域では重宝されtいます。これは「アマゾンのタラ」と呼ばれ、塩漬けしたタラと同じ方法で調理できます。この塩漬けは祝いの席などで提供されます。
肉の利用の他、大きな鱗は靴べらなどにも使われていました。近年では、デザイナーたちは革として使い、ジャケット、靴、ハンドバッグを作ったりし始めています。
ピラルクーの保護
ピラルクー漁が商業的に最盛期を迎えた1918年から1924年にかけて、年間約7000tが捕獲されました。このため在来種は減少し、ワシントン条約による保護動物に指定されています。
ブラジルでは1996年にピラルクーの漁が全面禁止されました。また、コロンビアは繁殖期の10月1日から3月15日までの間のみ漁獲と消費を禁止しています。
さらに、先住民によって捕獲する代わりに養殖が行われるようになりました。
ただし、このような漁獲量を制限する取り組みはほとんど成功せず、市場では高価で取引されるため、伝統的な漁獲はついています。実際、2014年の研究では調査された場所の93%で魚が激減しており、適切に管理されているか漁が行われていない場所はわずか7%であることが判明しました。
この乱獲の結果、2mを超えるピラルクーが野生で見つかることはほとんどありません。
ピラルクーの外来種問題
これとは対照的に、ピラルクーは在来範囲外の南アメリカやいくつかの熱帯地域に導入されており、そこでは外来種とみなされることもあります。ボリビアでは1976年に初めて発見され、恐らく洪水により、養殖場から流されたものと考えられています。
また、タイやマレーシアでは釣りの為に導入されました。タイではいくつかの湖で釣りができ、150kgを超える個体が釣り上げられることがよくあります。インドでは2018年の洪水の後、養殖の池から逃げ出したものが地元の川で発見されたと報じられました。2020年5月14日には、カンボジアのアンコールワット近くの川に30kgの個体が浮かんでいるのが発見されました。
ピラルクーは人間に対して危険か?
ピラルクーは肉食性ですが、前述のように主に小魚を食べる魚食性で、人間を獲物とはみなしておらず、人間を捕食する本能や身体的能力を持っていません。歯が無いため裂傷による損傷はあり得ず、口は先が細くなっており、人間を飲み込もうとしても飲み込むことができません。
また、基本的に獲物以外のものに対して攻撃的な性質を持っていません。このため、意図的にピラルクーを挑発しない限り、人間に対して敵対的な行動を示すことは非常に稀です。
しかし、何らかの理由であなたが危害を加えようとした場合、反撃される可能性があります。ピラルクーの膨大な筋肉量とミサイルのような体形、その大きさと強さは潜在的に危険です。
ピラルクーはその分厚く、骨ばった頭を武器として使用します。彼らは信じられないほど激しい頭突きをすることができます。そのため、巨大なサイズのピラルクーが人間の胸や頭を頭突きした場合、生命を脅かす危険性があります。
彼らは身の危険を感じると勢いよく水面から飛び出すため、カヌーやボートにあたって転覆させる、体当たりされた人間が重軽傷を負うなどの事故が多発しています。
生物学者で冒険家、そして釣り人であるジェレミー・ウェイドは暴れ回るピラルクーが胸に当たり、そのせいで肋骨が折れ、その痛みは何日も続いたといいます。このピラルクーは比較的小型で、重さは45キロ以下でした。
最も危険なのが釣り上げた後の釣り糸を外すためにピラルクーを、持っている時で大型の個体を扱う場合は拘束するのに少なくとも2から3人が必要になります。
ピラルクーの飼育
ピラルクーはその特徴的な形態や大きさアマゾン川に生息する巨大よとして有名であることから水族館で展示する魚として人気があり日本を含む世界各国の水族館で飼育する魚として人気があります。
アメリカではオヒョウなどの魚の安価な代替品として養殖のピラルクーの販売が始められています。
タイでは2018年初頭から水産省とワシントン条約の両方によって養殖が承認され、鑑賞漁として世界中に輸出されています。
このため、国内のペットショップ等で幼魚が流通していることもあります。販売されている個体は全て養殖されたピラルクーで、稚魚が1万円から3万円程度で販売されています。ただし、販売量は少なく、熱帯魚専門店で数年に数匹ほど販売されている程度です。
また、巨大なサイズに成長する上、神経質で繊細な性質のため、飼育は非常に難しく、一般家庭での飼育はまず不可能といわれています。
彼らは飼育下では野生の個体ほど大きく成長しませんが、それでも体長2m前後に育ちます。もし飼育するなら最低でも3メートル以上の幅とトン単位の容量があるうえ、ピラルクーが突進するときのパワーと水量の圧力に耐えられる厚さ15mm以上の頑丈な水槽を用意しなければなりません。
このような条件を満たした特注の水槽は値段が300万円ほどになります。さらに、強力なろ過装置、膨大な水量に対応できるヒーターといった機材が必要となります。そして、大量の新鮮な餌にも多額の費用が必要になります。
また、驚くと激しく暴れる、食事に大きな音を出すなど、同居漁に大きなストレスを与えるので、混泳にも向きません。蓋もよほど頑丈なものでないとピラルクーが突き破って水面から飛び出してしまいます。ピラルクーが水槽から飛び出して暴れ回った場合、飼育者が怪我をする恐れもあります。
このため、ピラルクーの稚魚を購入して水槽で育てても、ほとんどの人が大人にさせることができずに死なせてしまっています。
この記事はYouTubeの動画でも見ることができます。
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