アキーはカリブ海地域を中心に広く食べられている果物で、特にジャマイカでは国果に指定されるほど国民に親しまれています。甘みは少ないものの、クリーミーでコクのある独特の味わいが特徴です。
日本ではあまり見かけない果物ですが、実際にはどんな見た目で、どうやって食べるのでしょうか。今回はアキーの正体や食べ方、そして日本で手に入るのかどうかについて詳しく紹介していきます。
アキーという植物

アキーはムクロジ科アキー属の常緑樹で、成長すると高さ約10メートルほどになります。幹は短く、枝を大きく広げてこんもりとした樹冠を作ります。
葉は羽状複葉と呼ばれる形で、小さな葉が左右に並んでいるのが特徴です。それぞれの葉は長さ8〜12センチほどの楕円形で、厚みと硬さがあります。暖かい季節になると、香りのよい緑がかった白色の花が房状に咲きます。
もともとはサハラ砂漠以南の西アフリカが原産ですが、1700年代にアフリカからカリブ海地域へ連れて来られた人々によって持ち込まれ、ジャマイカをはじめとする多くのカリブ海諸国で栽培されるようになりました。現在では熱帯・亜熱帯地域を中心に、アメリカのフロリダ州などでも栽培されています。
アキーの実はどんな見た目?

アキーの果実は洋ナシのような丸みを帯びた形をしており、重さは100〜200グラムほどです。育ち始めは緑色ですが、熟すにつれて鮮やかな赤色や黄橙色に変化していきます。
そして十分に熟すと、果実は自然に裂けて開きます。中は3つに分かれた房状になっていて、白く柔らかな「仮種皮」と呼ばれる部分と、黒く大きな種子が現れます。この仮種皮こそがアキーの食用部分で、ナッツのような風味とスクランブルエッグのような食感を持っています。
品種は最大48種類ほどあるとされ、大きく分けると缶詰業界でよく使われる「チーズタイプ」と、口当たりが繊細な「バタータイプ」の2つに分類されます。
種から育てると実をつけるまでに3〜4年、挿し木なら1〜2年ほどかかります。収穫時期は主に1〜3月と10〜11月です。
アキーはどうやって食べる?

熟したアキーは加熱調理したり、冷凍・缶詰にしたりして食べられます。食べる際はまず種を取り除き、新鮮でしっかりとした仮種皮を塩水や牛乳で下茹でするのが基本です。その後、バターで炒めるなどして料理に使います。
もっとも有名な料理が、アキーと塩漬けタラを合わせた「アキー・アンド・ソルトフィッシュ」で、ジャマイカの国民食として親しまれています。塩茹でした黄色いアキーの実と、塩抜きしたタラを、玉ねぎやトマト、ピーマン、タイムなどのハーブと一緒に炒めて作ります。見た目は黄色くスクランブルエッグのようですが、味は卵とはまったく異なり、甘みはほとんどなく、クリーミーで濃厚な食感とナッツのような風味が楽しめます。
ジャマイカでは朝食や昼食でも気軽に食べられていて、朝ならゆでたヤム芋やグリーンバナナ、パンノキと一緒に、昼食ならココナッツミルクで炊いた豆入りご飯と組み合わせて食べられることもあります。
栄養面でも優秀で、炭水化物・タンパク質・脂質がほどよく含まれるほか、仮種皮の乾燥重量の51〜58%ほどをリノール酸やパルミチン酸などの脂肪酸が占めています。ビタミンAやビタミンCも豊富で、肉や魚をあまり食べない人にとっても貴重な栄養源となってきました。
食べるときに気をつけたいこと

アキーは十分に熟して正しく処理すれば安全に食べられますが、未熟な果実や、完熟していても果皮・種子には「ヒポグリシン類」という毒性成分が含まれているため、食用には向きません。この成分は熱に強く、加熱しても無毒化されないのが厄介な点です。
危険な量を摂取すると、軽い嘔吐で済むこともあれば、重症化すると激しい嘔吐や重度の低血糖、強い眠気、筋力低下などを引き起こし、最悪の場合は命に関わることもあります。実際、ジャマイカでは家庭での誤食による中毒事故が今でも起きています。
そのため、加工業者はアキーの実がまだ割れていないか割れ始めたばかりの段階で買い付け、熟成用のラックに並べて完全に熟すまで見守り、3〜4日たっても熟さない実は廃棄するという徹底した管理をしています。アメリカ食品医薬品局(FDA)も、毒性成分の含有量が一定基準を超えるアキーは食用として認めないなど、厳しい基準を設けています。
日本でアキーは買える?
結論から言うと、生のアキーが日本のスーパーに並ぶことはまずありません。安全に食べられる熟度を見極めるのが難しく、収穫のタイミングを少しでも誤ると毒性成分の残留量が基準を超えてしまうため、生のまま長距離輸送すること自体が世界的に見ても極めて限られているのです。
日本でアキーを味わいたい場合、現状では缶詰を選ぶことになります。日本で流通している缶詰の多くは、アメリカ食品医薬品局などの厳しい安全基準をクリアしたジャマイカの大手メーカーの製品です。ただし、これもスーパーで常時売っているような身近な食品ではなく、一部の輸入食品店やオンラインショップでの取り扱いが中心です。収穫時期が限られているため、時期によっては品薄になり、入荷待ちになることもあります。
なお、アキーの苗や種子については、一部の熱帯果樹専門店などで観賞用・園芸用として販売されることがあります。ただし流通量はごくわずかで、仮に自宅で実がなったとしても、それは食用として安全性が確認されたものではないため、自己判断で食べるのは絶対に避けてください。栽培自体も、熱帯〜亜熱帯性の植物であるため日本の寒い冬には向かず、温度管理が必要になります。
もし本場の味を体験したいなら、ジャマイカを訪れて現地のレストランでアキー・アンド・ソルトフィッシュを注文するのが一番です。現地で採れたものを自分で調理するのは危険なので避け、プロが処理したものを楽しみましょう。缶詰よりもやわらかな食感とコクのある味わいが楽しめるはずです。
アキーの食用以外の顔
アキーは食用以外にもさまざまな用途で利用されてきました。仮種皮には石鹸のような性質があり、洗濯用洗剤や魚を弱らせるための毒として使われたこともあります。香りのよい花は装飾品やコロンに、丈夫な心材は建築材やオール、樽などの材料に利用されてきました。アフリカの伝統医療では、熟した仮種皮や葉、樹皮が体調不良の治療に用いられ、近年の研究では抗癌作用や抗菌作用、抗酸化作用なども報告されています。また、葉には蚊の幼虫を死滅させる効果もあるとされ、虫よけとしても活用されてきました。
まとめ
アキーは、洋ナシのような見た目からは想像しにくい、クリーミーでナッツのような風味を持つユニークな果物です。ジャマイカでは国民食として親しまれる一方、毒性成分を含むため収穫や加工には厳格な管理が求められ、その難しさが生のアキーが世界的に流通しにくい理由になっています。日本で味わいたい場合は、輸入食品店やオンラインショップで缶詰を探してみるのがおすすめです。
アキーについてより詳しく知りたい方はこちらの動画もご覧ください。


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