アマランサスはヒユ科ヒユ属に属する植物の総称で、世界に60〜80種(変種・亜種を含めると110種以上)が存在します。中央アメリカやアンデス地方が起源とされる一群は「穀物(グレイン)アマランサス」として種子を食用にし、熱帯アジア原産の一群は「野菜(リーフ)アマランサス」として葉を食用にします。どちらも非常に栄養価が高く、グルテンフリーで育てやすいことから、近年「スーパーフード」として世界中で注目が集まっています。
この記事では、アマランサスの基礎知識から栄養価、食べ方・レシピ、家庭での栽培方法まで、実用的な情報をまとめて紹介します。
アマランサスの基本情報

- 分類:ヒユ科ヒユ属(Amaranthus属)
- 主な穀物用種:A. hypochondriacus、A. cruentus、A. caudatus
- 主な野菜用種:A. tricolor、A. cruentus、A. blitum、A. dubius
- 草丈:種類により1〜2.5m程度まで成長
- 特徴:夏から秋にかけて稲穂のような花穂をつけ、赤・クリムゾン・紫・黄・緑など鮮やかな葉色を持つ品種も多く、観賞用(「ジョセフス・コート」など)としても栽培される
- 別名:中国野菜としては「シェンツァイ(莧菜)」、英語では「チャイニーズ・スピナッチ」「レッド・スピナッチ」とも呼ばれる
種子は穀物のようにプチプチとした食感とナッツのような香ばしさがあり、葉はほうれん草に似た風味でわずかなコクとえぐみを持ちます。両方とも非常に用途の広い食材です。
アマランサスの栄養価

種子(グレイン)の栄養的特徴
アマランサスの種子はタンパク質を約12〜18%含み、米や小麦などの一般的な穀物より高いタンパク質含有量を誇ります。特に、多くの穀物で不足しがちな必須アミノ酸のリジンを豊富に含み、アミノ酸バランスに優れているのが大きな特徴です。また、鉄・カルシウム・マグネシウムなどのミネラルや、食物繊維も豊富です。小麦や大麦のようなグルテンを含まないため、グルテンフリー食を実践する人にも適しています。
葉(リーフ)の栄養価
米国農務省(USDA)のデータをもとにしたアマランサスの葉(茹でて水切りしたもの・可食部100gあたり)の栄養価は以下の通りです。
| 栄養素 | 含有量 |
|---|---|
| 水分 | 91.5 g |
| エネルギー | 21 kcal |
| タンパク質 | 2.11 g |
| 脂質 | 0.18 g |
| 炭水化物 | 4.11 g |
| カルシウム | 209 mg |
| 鉄 | 2.26 mg |
| マグネシウム | 55 mg |
| リン | 72 mg |
| カリウム | 641 mg |
| ナトリウム | 21 mg |
| 亜鉛 | 0.88 mg |
| ビタミンA | 139 µg RAE |
| ビタミンC | 41.1 mg |
| 葉酸 | 57 µg |
| ナイアシン | 0.56 mg |
| リボフラビン | 0.13 mg |
| チアミン | 0.02 mg |
特筆すべきはカルシウムと鉄の豊富さで、品種によってはほうれん草を上回るとされます。低カロリーながら、ビタミンA・Cやカリウムもしっかり含まれており、栄養密度の高い葉物野菜と言えます。
期待される健康効果
アマランサスは伝統的に整腸・利尿作用のある植物として知られており、ポリフェノールによる抗酸化作用や、タンニンによる抗菌作用など、いくつかの薬理学的な働きが報告されています。ただし、これらは民間療法や予備的な研究に基づくものであり、特定の疾患の治療を目的とした利用は推奨されません。
食べる際の注意点
アマランサスの葉と茎には、硝酸塩やシュウ酸など「抗栄養素」と呼ばれる成分がわずかに含まれています。シュウ酸はカルシウムと結合しやすく、体質によっては尿路結石のリスクに関わるとされるため、腎臓結石になりやすい人は摂り過ぎ(目安として生の状態で1日200g以上)に注意し、しっかり加熱調理することが推奨されます。加熱することでこれらの成分の多くは減少します。
アマランサスの食べ方

種子(グレイン)としての食べ方
- お粥・ポリッジ(お粥状):水と一緒に炊いて、朝食用のポリッジやおかゆに
- ポップアマランサス:フライパンで乾煎りするとポップコーンのようにはじけ、香ばしいトッピングやお菓子の材料になる
- 炊いてサラダやスープの具に:茹でた種子をサラダのアクセントやスープの具材に混ぜる
- 粉(アマランサス粉):パンや焼き菓子、パンケーキなどの生地に混ぜて使う(グルテンがないため、小麦粉と併用するのが一般的)
- 炊いたご飯や他の穀物と混ぜる:玄米やオーツ麦と一緒に炊くと、粘り気が抑えられ食べやすくなる
葉(リーフ)としての食べ方
- 若く柔らかい葉はサラダとして生食も可能
- ほうれん草と同様に、茹でる・蒸す・炒める調理法が一般的
- ニンニクやきのこ、卵、エビなどと一緒に中華風の炒め物に
- 柔らかい茎はアスパラガスのように蒸したり炒めたりできる
- 白い根の部分もトマトと一緒に煮込んで食べられる地域もある
基本の調理方法

種子を茹でる(ポリッジ・ピラフの基本)
- アマランサス種子1に対し、水(またはだし・牛乳など)2.5〜3の割合を用意する
- 鍋に水と種子を入れて沸騰させる
- 弱火にして蓋をし、水分がほぼ吸収されるまで20〜30分ほど煮る
- お粥状にしたい場合は水分をやや多めにし、加熱時間を少し延ばす
- 焼く前にフライパンで軽く乾煎りしてから茹でると、香ばしさが増す
※アマランサスは煮込みすぎても大きく食感が損なわれにくく、常にわずかな「プチプチ感」が残るのが特徴です。作り置きは冷蔵で3〜5日程度を目安に。
種子をポップさせる(ポン菓子風)
- 厚手の深めの鍋またはフライパンをよく熱する(水滴を落として弾けるくらいの高温が目安)
- 種子を大さじ1〜2程度、少量ずつ加える
- 絶えず振る・かき混ぜながら、数秒〜十数秒でポップさせる
- 焦げやすいのですぐに取り出し、次のバッチへ
ポップさせたアマランサスは、そのままスナックにしたり、サラダやスープ、ヨーグルトのトッピングにしたり、蜂蜜で固めてメキシコの伝統菓子「アレグリア」のようなお菓子にもできます。
葉を茹でる(下ごしらえ)
- 葉をよく洗い、大きければざく切りにする
- たっぷりの塩水を沸かし、葉を入れて食感が柔らかくなるまで15分ほど茹でる
- しっかり水気を絞る
- 炒め物や煮込み料理に加える
アマランサスを使ったレシピ例

① アマランサスの朝食ポリッジ
材料:アマランサス種子 1/2カップ、水または牛乳 1.5カップ、塩 少々、お好みでシナモン・ナッツ・ドライフルーツ・蜂蜜
- 種子と水(牛乳)を鍋に入れ沸騰させる
- 弱火にして蓋をし、20分ほど煮込みトロっとするまで加熱する
- 器に盛り、蜂蜜やナッツ、フルーツをのせて完成
② アマランサスの葉とココナッツミルク煮
材料:アマランサスの葉 適量、玉ねぎ 1個(みじん切り)、トマト 2個(ざく切り)、ココナッツミルク 1カップ、油、塩、レモン汁
- 塩を加えた湯でアマランサスの葉を15分ほど茹で、水気をしっかり切る
- 別の鍋で油を熱し、玉ねぎを飴色になるまで炒める
- トマトを加え、柔らかくなるまで炒める
- 茹でた葉を加えて混ぜ合わせる
- ココナッツミルクを加え、10分ほど煮込む
- 塩やレモン汁で味を調えて完成
③ ポップアマランサスのはちみつバー(アレグリア風)
材料:ポップさせたアマランサス種子 2カップ、はちみつ 1/2カップ、ナッツやドライフルーツ 適量
- はちみつを鍋で7分ほど煮詰める
- ポップアマランサス、ナッツ、ドライフルーツを加えて手早く混ぜる
- バットに広げて押し固め、冷めたら食べやすい大きさにカットする
④ アマランサス入り炒め野菜
材料:アマランサスの葉 適量、ニンニク・きのこ・エビなどお好みの具材、油、醤油や塩
- アマランサスの若く柔らかい葉を水洗いする
- 中華鍋やフライパンでニンニクを香りが出るまで炒める
- きのこやエビなどの具材を加えて炒める
- アマランサスの葉を加え、しんなりするまで手早く炒める
- 塩や醤油で味を調えて完成
アマランサスの栽培方法

アマランサスは初心者にも育てやすい野菜・穀物として知られ、家庭菜園でも人気があります。
種まき・発芽
- 種は黒褐色で非常に小さい(直径約1mm)
- 深さ0.3〜0.6cm程度の浅い位置に、条間30〜45cm程度で種をまく
- 家庭菜園では2.5cm間隔でまき、成長に応じて15cm間隔になるよう間引く
- 発芽適温は21〜24℃で、1週間ほどで発芽する
- 地温が21℃以上になると発芽が早く進み、10℃以下では発芽率が大きく低下する
- 遅霜の心配がなくなり地温が21℃程度に上がってから種まき・植え付けを行う(生育初期に定植が遅れると、早期抽苔や生育不良の原因になる)
生育環境
- 熱帯原産の暖地性一年草で、生育適温は21〜29℃、最大でおよそ10〜43℃まで耐えられる
- 気温が4℃を下回ると低温障害で枯死する
- 日当たりを好むが、気温が高ければ半日陰でも育つ
- 草丈は1.5m前後まで伸びることがあり、倒伏防止に支柱が必要になる場合がある
水やり
- 中程度の耐乾性があるが、深刻な水不足は早期抽苔や収量低下の原因になる
- 生育初期の水やりが特に重要で、過湿による根腐れには注意する
- 家庭菜園では、土の表面が乾いたら適度に、かつ均一に水を与えるのが基本
- 年間降水量として1,300〜1,500mm程度を好むが、250〜2,800mm程度まで許容範囲は広い
土壌・肥料
- 土壌適応力が高く、幅広い土質で育つが、水はけがよく肥沃な土壌を好む
- 土壌pHは4.3〜8.0で耐えられ、5.5〜7.0が最適
- 肥料を多く与えても収量が劇的に増えるわけではないとされ、特に窒素を与えすぎると葉が白っぽくなったり、硝酸塩が蓄積したりする原因になるため注意する
- 一般的な葉物野菜と同程度の施肥を目安にするとよい
病害虫対策
- 茎腐れ病・軟腐病:多湿環境で発生しやすいカビが原因。株間を適切に空けて風通しをよくすることで予防できる
- 白さび病:苗立枯病などを起こす糸状菌が原因。種を適切な深さにまくことで発生を抑えられる
- 害虫:葉や茎を食害する幼虫類、茎に穴を開けるゾウムシ類などが問題になることがある。伝統的には木灰を害虫対策に用いる方法もあり、被害株の抜き取りや傷んだ葉の除去も効果的
収穫・保存
- 種まきからおよそ30日で収穫適期を迎える
- 一度に株ごと引き抜いて収穫する方法と、外葉を少しずつ摘み取り再生させながら繰り返し収穫する方法がある
- 開花が始まると葉が減り食用に適さなくなるため、開花前の収穫がおすすめ
- 葉は表面積が大きく萎れやすいため、収穫後は4〜13℃程度の低温・高湿度(湿度75%前後)の環境で保存するのが望ましい
- 常温(約25℃)で保存すると、ビタミンCが短時間で大きく失われるとされるため、できるだけ早めに使い切るか冷蔵保存を心がける
種子(グレイン用)を育てる場合
種子用に栽培する場合も基本的な栽培条件は同様ですが、開花・結実まで育てて種子を収穫するため、より長い栽培期間が必要になります。花穂が茶色く乾燥してきたら、株ごと刈り取って逆さに吊るして乾燥させ、袋などをかぶせて振るい落とすようにして種子を採取します。
購入方法
アマランサスは日本国内でも、輸入食品を扱うスーパーや自然食品店、オンライン通販などで「アマランサス粒」や「アマランサス粉」として購入できます。一般的なスーパーには常時並んでいるとは限らないため、確実に手に入れたい場合はオンライン通販の利用が便利です。
まとめ
アマランサスは、種子は高タンパクでアミノ酸バランスに優れた「穀物」として、葉はカルシウムや鉄が豊富な「野菜」として、二重に楽しめる非常に懐の深い植物です。グルテンフリーで栄養価が高く、家庭菜園でも比較的育てやすいことから、日々の食卓に取り入れやすい食材と言えます。ポリッジやポップスナック、炒め物やスープなど、和洋中を問わず幅広い料理に応用できるので、ぜひ一度取り入れてみてください。
アマランサスについてより詳しく知りたい方はこちらの動画もご覧ください。
参考:Growing amaranth an ancestral tradition that carries on in CDMX pueblo
The Promise of Amaranth – Berkeley Food Institute




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