七面鳥は日本ではあまりなじみのない鳥ですが、アメリカとカナダでは丸焼きが感謝祭でのごちそうとなっています。また、イギリスやオーストラリアではクリスマスのディナーとして七面鳥を食べるのが一般的です。
このように七面鳥の肉は非常に人気ですが、その一方で卵はほとんど食べられていません。これは一体どうしてでしょうか?
この記事は七面鳥の卵が食べられていない理由について説明しています。
七面鳥ってどんな鳥?

七面鳥は大型になるキジ目の鳥で、彼らの最大の特徴は、羽毛のない頭と首です。これらは皮膚が露出し、発達した肉垂(にくすい)があるため、容易に他の鳥と区別することができます。また、オスが興奮すると頭への血流が増加し、皮膚とにくすいが赤くなるので、これが日本語の名前の由来にもなっています。
このように、独特な見た目を持つ七面鳥は、鶏肉などの他の家禽とは一線を画す、濃厚で力強い味を持ちます。
ただ、日本では肉質がパサパサしていて、美味しくないといわれることがあります。これは、七面鳥は大きな鳥なので、均一に火を通すのが難しいためです。しかし、ハーブとスパイスを使用したり、水分を保つよう適切に調理することで、肉がジューシーになり、風味も増します。
昨今では、七面鳥はクリスマスや感謝祭などの特別な機会だけでなく、一年中食べられるようになっており、多くの料理に取り入れられています。海外では頭、足、羽を取り除いた丸ごとの状態のほか、スライスされた状態でも購入することができ、特にサンドイッチの肉としてよく使用されています。
現在、世界中で毎年約6億2000万羽の七面鳥が食肉用として消費されています。
このように、七面鳥の肉は一般に食べられているのですが、その一方で卵は食べられていません。
卵大好きアメリカ人
アメリカ人は平均すると、1年に約250個の鶏卵を食べています。
さらに、彼らは最近ではほかのおいしくて、興味深い種類の卵にも手を出し始めています。例えば、濃厚で大きな黄身を持つアヒルの卵や、小さくて繊細なウズラの卵などです。
それなのに、七面鳥の卵は食べられていません。これは、七面鳥の卵がおいしくないからというわけではないようです。
七面鳥の卵の味

実際、七面鳥の卵は鶏卵とかなり似た味がするといわれています。その味はまったく同じではありませんが、違いは微妙で、多くの人は区別がつかないと感じます。
ただ、脂肪分が比較的多いため、七面鳥の卵の方がややクリーミーに感じられるかもしれません。そのため、食通の人の中には、七面鳥の卵は鶏卵よりも濃厚でなめらかな味が感じられると主張する人もいます。
しかし、これはごくわずかな違いで、七面鳥の卵は、アヒルの卵のような非常に濃厚なものよりも、鶏卵にはるかに近い味です。
それなのになぜ、七面鳥の卵は食べられていないのでしょうか?
七面鳥の卵が食べられていない理由

その答えは、さまざまな要因の組み合わせにあります。これらの要因がすべて合わさって、七面鳥の生産者は卵市場に参入するのを思いとどまっているのです。
まず、七面鳥は他の家禽よりも育てるのに費用がかかることがあげられます。
現在、様々な国で消費されている七面鳥は、野生の七面鳥を家畜化したものです。野生の七面鳥は北アメリカ原産で、この鳥の家畜化は少なくとも2,000年前にメソアメリカで起こったと考えられています。今日の主要な七面鳥の品種はすべて、中央メキシコで飼育されていた七面鳥の子孫です。古代メソアメリカ人は七面鳥の肉と卵を主なタンパク質源として使い、羽を装飾に使用していました。
そして、16世紀になると、スペイン人によってヨーロッパに輸入され、その後、多くの異なる品種が開発されることとなります。
ただし、19世紀後半までは、イギリスでは七面鳥は贅沢品で、労働者階級の間ではガチョウや牛肉の方がクリスマスの夕食として一般的でした。それが、1940年代後半から大量飼育が可能となり、価格が劇的に下がりました。さらに、冷蔵設備も利用できるようになったことで、七面鳥を丸ごと冷凍して遠方のいちばに出荷できるようになり、労働者階級にも手頃な価格となりました。その後、疾病管理や輸送技術の進歩、消費者の嗜好の変化、農場の急増などにより、新鮮な七面鳥がさらに安価で入手しやすくなっています。
しかし、かなり手ごろになったとはいえ、体の大きな七面鳥は、ニワトリよりも飼育に費用がかかります。一般的な鶏の平均体重は約3.25kgですが、成熟したオスの七面鳥の体重はおよそ14kgになります。つまり、七面鳥は平均的な鶏の約4.5倍の重さがあるのです。そのぶん、七面鳥には鶏よりも多くのエサ代が必要となります。
七面鳥の飼料は一般にトウモロコシや大豆などで、年齢と栄養状態に基づいてタンパク質、炭水化物、脂肪が調整されます。これは、1羽あたり月に約2,000円から3,000円かかることがあります。
さらに、七面鳥の飼育舎には鶏よりもより広く、頑丈で強いものが必要です。
このように、七面鳥は飼育するのに費用がかかり、鶏よりもはるかに多くのスペースとエサが必要となります。

にもかかわらず、七面鳥の産卵頻度はほかの鳥に比べて低いです。鶏やアヒルが1日におよそ1個の卵を産むのに対し、七面鳥は1週間に最大でも約2個しか産みません。
さらに、七面鳥は産卵を始めるのがほかの鳥よりも遅くなります。鶏は約5か月で卵を産み始めますが
七面鳥のライフサイクルはより長いので、卵を産むまでに約7か月が必要です。
これは、それほど違いがないように思えるかもしれませんが、七面鳥の飼育と餌の費用が高いことを考えると、この数か月の延長によって、大きくコストが吊り上がります。
このように、生産コストと成長の遅さのため、七面鳥の卵はかなり高くなる傾向にあります。七面鳥の卵1個の価値は、市場で約3.5米ドル(約521円)と推定されており、これは鶏卵1ダースよりもかなり高価です。したがって、卵を販売するよりも、七面鳥を長期間飼育し、食肉用として出荷する方が合理的なのです。
七面鳥の卵ってどこで手に入るの?

どうしても七面鳥の卵を食べてみたいというかたは、七面鳥を飼育している地元の農場から直接入手してみてください。また、ファーマーズマーケットを訪れ、販売業者に七面鳥の卵を販売しているか、または販売している農場を知っているか尋ねてみてください。マーケットでの個人的なつながりがあるかたが、教えてくれるかもしれません。
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