ミョウガガイ科に属するカメノテの近縁種「ペルセベ」は、見た目はグロテスクですが、実は非常に高価で、1kg、約3,000円もの値段が付くものもあります。
それではなぜこのグロテスクな見た目の生物が高値で取引されているのでしょうか?
この記事はペルセベについて説明しています。
ペルセベとは?

ペルセベは潮間帯の上部、引き潮のときには干上がるような場所に群生して生息しています。この生物は硬い殻を持ち、動かないことから一見貝と思われそうですが、エビやカニと同じ甲殻類の仲間です。
ペルセベは雌雄同体で、ふ化後プランクトン生活を送り、変態して岩などの硬い表面に固着します。エサは触角の動きではなく水の動きに依存し、海水中のプランクトンなどを濾過摂食します。
高級食材としてのペルセベ

近縁のカメノテは磯などで簡単に採取できるので、高知市周辺や愛媛県宇和島市、大分県佐伯市などでは食用にされます。外の硬い殻を外して抜き出した中身が塩茹でや味噌汁の具などにされ、その味は濃厚な旨味を持つといわれています。
そしてこのペルセベも一部地域ではカメノテ同様に食用とされているのです。特にスペインやポルトガルでは珍味とされ、非常に人気で、ロブスターやカニ、ハマグリのような味がするといわれています。
ペルセベは世界で最も高価な魚介類のひとつといわれ、キャビアより高く、ロブスターの約7倍の値段がつくこともあるくらいです。
ペルセベが非常に高価なのは、その見た目に反して手に入れるのが困難だからです。ペルセベの収穫には重大なリスクが伴い、死に至る可能性すらあります。
ではなぜこの全然動かない生物の収穫が難しいのでしょうか?
漁獲には危険が伴うペルセベ

スペインで食べられるペルセベのほとんどはガリシア産で、この漁を専門に行う漁師をガリシア語でペルセベイロと言います。ガリシア州は西に大西洋、北にビスケー湾があり、特に波が激しい北部海岸では最高級のペルセベが獲れます。
ぺルセベを収穫する危険は、この生物が生育する小さな岩の島に到着する前から始まっています。出発時、沖合でのボート乗りは順調ですが、少し経つと波が高く打ち寄せ始めます。そして、ペルセベイロはこの激しい波の中、ボートから岩に飛び移る必要があります。
彼らはできるだけ多くのペルセベを収穫したいところですが、8時間フルに時間があるわけではありません。この岩は干潮時にのみ近づくことができ、収穫できるのは岩が露出している間、つまり1日に数時間だけなのです。
この限られた時間以外はペルセベは海に沈み、収穫できなくなります。そのため、ペルセベイロたちは非常に短い時間を最大限に活用する必要があります。
ただ、足元は滑りやすく、誤って波に飲み込まれる可能性があるため、仕事を迅速かつ慎重に行うことが不可欠です。ロープで体を海岸につなぎ、波が岩に打ち付けた直後から次の波が来るまでのわずかな間に、彼らは常に潮の流れをチェックしながら収穫します。これには熟練した技術が必要で、誰にでもできる仕事ではありません。
特に少人数のチームで作業する場合はなおさらで、全員が船を操縦でき、お互いに助け合いながら、効率よく収穫する必要があります。
さらにリスクが増すのは、島で最も危険な場所に最も貴重なペルセベが繁殖しているためです。このような場所では、激しい波が絶えず打ち寄せるため、ペルセベは波に耐えられるように岩にしっかりとくっつき、大きく成長するため頻繁に餌を食べます。
その結果、これらの個体は密度が高くぎっしりと詰まった身を持ち、非常に美味となります。しかし、ただでさえ危険な場所にいるペルセベが、しっかりと岩に固着しているため、取り除くにはよりいっそう困難となります。
ペルセベイロは通常、道具を使ってペルセベを岩からこじ開けます。また、場合によっては手でひとつひとつ引き抜く必要もあります。
彼らは自分の身の安全を心配しながらも、収穫方法にも注意しなければなりません。ペルセベに付着している他の生物を取ったり傷つけたりしないように努め、また、ペルセベ自体を傷つけないよう細心の注意を払います。傷がつくと価値が下がってしまうからです。
このように、非常に危険な環境のため、命を失うペルセベイロもおり、平均して毎年5人が波にさらわれ亡くなる事故が起きます。最高級のペルセベが生息するラ・コルーニャ県のコスタ・デ・モルテ(通称、死の海岸)では亡くなった漁師を弔う2つの十字架が建てられています。
非常に貴重なペルセベ

また、島にはペルセベが豊富にいるように見えますが、取れる数には限りがあります。2000年3月から国によりペルセベの出荷量がコントロールされ漁場や漁獲量に制限が設けられたほか、漁には免許が必要になりました。
出荷時の成熟度も決められ、生後6ヶ月以上で全長4cm以上のものしか漁獲出来ません。そのため、市場価値があると見なされているペルセベは全体のはわずか10%未満です。ペルセベイロはが岩から市場価値のある7.5%を収穫すると、過剰採取を防ぐためにその岩は6か月間禁漁となります。
ただ、違法に漁を行う人も少なくなく、路上でビニール袋に入ったペルセベを売りさばく人も見かけらます。
保存が難しいペルセベ

収穫後、ペルセベは急速に劣化するため、新鮮な状態で地元のレストランに配達されます。例えば、サーモンの場合、冷凍し、燻製にすれば、数か月、製品の寿命を伸ばすことができます。
しかし、ペルセベはそうではありません。ペルセベは冷凍すると解凍時に食感と風味が大幅に失われ、価値が下がります。
ペルセベの味や栄養素について

ペルセベを加熱するときは水に塩をたっぷり入れ、塩分濃度を海水と同じくらいにします。そして、食べる時は味付けしすぎず、レモン汁を少し振りかけるだけが一番おいしいといわれています。
さらにペルセベはおいしいだけでなく、驚くほど健康的で、たとえば、鉄、ビタミン B12、カルシウムなどの豊富な栄養分が含まれています。また、体の自然な免疫力を高めることでも知られています。
ただし、ペルセベはヨーロッパ以外では珍しく見つけにくい珍味です。ヨーロッパ旅行されたかたはぜ食べてみてはいかがでしょうか?
この記事はYouTubeの動画でも見ることができます。
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