メガマウスは名前の通り大きな口を持つ、最大約7mにもなる大型のサメで、ジンベエザメ、ウバザメとともに三大ザメのひとつに数えられています。この大きくてユニークなサメをあなたは水族館で見てみたいと思われるかもしれませんが、残念ながらそれは不可能です。
この記事ではメガマウスを飼育できない理由について説明しています。
メガマウスの特徴
メガマウスはネズミザメ目メガマウスザメ科に属し、現生では本種のみでメガマウスザメ属を構成します。
メガマウスは体長は大きいもので、全長7mを超える個体が確認されています。
彼らは3600万年前ごろから生息していたといわれるネズミザメ目のサメの中ではミツクリザメと並んで原始的な形態を残しており、現代に繁栄しているサメの形態とはかなり異なる点が多いのが特徴です。
また、メガマウスの生殖様式は卵胎生と考えられています。卵胎生とは卵を体内で孵化させて子を産む方法のことを指します。しかし、胎児を持った個体がまだ見つかっておらず、詳しいことは不明です。
メガマウスはプランクトンを主食にしているため、サメの特徴である歯はとても小さくやすり状の列になっています。
また、口を開ける筋肉が非常に発達しています。柔軟な皮膚を利用してアゴを伸ばして前方に突出させて、口を突き出して開けることができます。この大きく開く口は名前の由来にもなっています。
メガマウスの餌を食べる様式は、ヒゲクジラに近い構造となっていて、現生でこの構造を持ったサメは他にはありません。更に口の内壁は、光が当たると銀色に輝きます。それに加えて、上あごの歯が蛍光色に輝き、プランクトンをおびき寄せると言われていますが、定かではありません。
メガマウスは太平洋やインド洋など、熱帯から温帯の水深200m付近のやや浅い深海に生息しています。ですが、彼らは夜間に浅い所まで浮上してくるとも考えられています。これはプランクトンを食べに上がってくるためと言われていますが、本当のことはまだよくわかっていません。
メガマウスを飼育できない理由①:希少性
まずメガマウスを飼育できないひとつめの理由として、このサメが非常に珍しい生物であることが挙げられます。
メガマウスが発見されたのは非常に最近のことで、1976年11月にアメリカ合衆国海軍の調査船がハワイ沖で活動中にそのシーアンカーに絡まっていたオスの個体が発見されたのが最初です。こうしてこのサメが新種だとわかりましたが、それ以降は数年に一度のペースでしか見つからず、「幻のサメ」と言われています。
日本では1989年に静岡県で浜辺に打ち上げられた個体が見つかったのが最初です。この個体は推定3~4mのを素手写真記録が取られたものの、その後流出してしまっています。
このようにメガマウスの捕獲および目撃例は世界的に見ても極めて少なく、深海に生息することから死体が漂着するのも極めて稀で、未解明な部分が多いのです。また、不思議なことにメスの個体は北半球でしか見つかっていません。
メガマウスは生態もよく分かっていない上、生きたまま捕獲することも滅多にないため、飼育が難しいので。
メガマウスを飼育できない理由②:環境の変化に弱い
メガマウスを飼育できないふたつめの理由として、環境の変化に弱いことが挙げられます。
非常に珍しいメガマウスですが、日本近海では目撃例と捕獲例が比較的多く、2011年現在、全世界で50例あるうち13例が日本におけるもので、東京湾の海底谷や沖合いでも発見されています。
しかし、水揚げされた個体は既に死んでいるかほとんどが弱っています。
また、陸では自分の重さで潰れて死んでしまいます。
このように、メガマウスは環境の変化に弱いサメであるようで、生きたまま捕獲することが困難なのです。
メガマウスを飼育できない理由②:大きすぎる
そして、飼育できないみっつめの理由として、メガマウスが巨体であることが挙げられます。
水揚げされると殆どが死んでしまうメガマウスですが、生きたまま捕獲された例もわずかですがありました。
静岡県賀茂郡東伊豆町北川沖の相模灘では、2007年6月7日、定置網でメガマウスが混獲されました。漁師から連絡を受けた下田海中水族館の職員が確認のために訪れましたが、輸送方法や飼育環境の準備を整えることができないため、飼育を断念せざるを得ませんでした。このとき、今後の調査のために標識をつけて放流しています。
このようにメガマウスは巨体のため、輸送手段と水槽を確保するのが容易ではありません。
また、当時としてはメガマウスが海中で元気に泳ぐ姿の撮影に成功したのは世界で2例目、日本では初めてのことでした。
そして2011年1月14日には、三重県尾鷲市九鬼町の沖合い500mにて、生きたまま定置網にかかっている約5mの個体が発見されました。翌日の朝に大阪市の水族館が引き取りに来るまで網に入れたまま泳がせていましたが、その日の午後にいなくなっているのが確認されました。網が破られた形跡はなく、網の上を乗り越えたとみられています。
このメガマウスが生きたまま展示されていれば世界初になるはずでした。
メガマウスの標本が見れる水族館
これまでメガマウスを水槽に持ち込むことすらできていないというのが現状ですが、どうしてもメガマウスを見たい方は標本を見てみてはいかがでしょうか?
メガマウスの標本は沼津港深海水族館で見ることができます。この水族館に展示されているのは、体長5m、体重1t弱のオスで、2019年に沼津市の滋賀海岸に打ち上げられたものです。
その他メガマウス標本を展示している水族館としては鴨川シーワールド、鳥羽水族館、美ら海水族館などが挙げられます。
メガマウスの味
最後に、メガマウスの味についてですが、肉質は水っぽく美味しくないため、食用としては不向きとされています。
ただ、メガマウスの刺身を食べたある人は、くせがなく美味しいと述べてもいます。
このように、本当の味は実際に食べてみないと分からないみたいです。
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