北米に生息する捕食動物といえば、オオカミ、クマ、ピューマなどが挙げられます。しかし、これらの動物のほかに、生態系のバランスを保つ上で、密かに重要な役割を果たしているのがボブキャットです。
適応力の高い隠密性に優れたこのネコ科動物は多才なハンターであり、在来種だけでなく、大きな問題となっている外来種の個体数の抑制に影響力を持っています。彼らは自然の生息域と人間が改変した景観の両方に恩恵をもたらしているのです。
この記事はボブキャットがどのような外来種を駆逐しているのかについて詳しく説明しています。
ボブキャットとは?

学名”Lynx rufus”と呼ばれるボブキャットはカナダ南部からアメリカ、メキシコにいたるまでの広範囲に分布する北米で最も順応性に優れた捕食動物のひとつです。彼らは森林、砂漠、山岳、そして最近では郊外など、多様な生息地で見られ、さまざまな生態系や気候で繁栄することができる能力を持っています。
ボブキャットは比較的小型で筋肉質のネコ科動物で、体長は通常、78~94cm、体重は12~18.5kgです。彼らは一部生息地が重なるカナダオオヤマネコよりは小型ですが、大型のイエネコの二倍くらいの大きさがあります。
ボブキャットは黒い斑点や縞模様がある赤茶色から灰色がかった毛皮と、先端が黒い房状の耳、そして、その名前の由来となった特徴的な短いボブテールを持ちます。4種いるオオヤマネコの中では最も小型ですが、力強い体格と鋭い感覚を持つボブキャットは、非常にタフで粘り強いハンターです。
オオカミなどの大型捕食動物が絶滅または大幅に減少した生態系では、ボブキャットが外来種と在来種の両方の個体数を調整するのに貢献しています。これはさらに人間の開発により生息環境が断片化され、北米全土で捕食者と獲物の動態が変化するにつれて、彼らの役割はますます重要になっています。
ボブキャットが狩る外来種①ウサギ

そして、ボブキャットが生態系に果たす最も重要な貢献のひとつがウサギの個体数の抑制です。北米において、在来種および外来種のウサギは数が制御不能に増えると、農作物や在来植物に多大な損害を与える可能性があります。
ボブキャットはこのウサギを狩るのに特に優れており、研究によると、1匹の成獣が年間数百匹のウサギを消費することがあります。この自然な個体数抑制は、農業の利益と在来植物の両方を保護しながら、
生態系のバランスを維持するのに役立っています。
ボブキャットが狩る外来種②ネズミ

ボブキャットはウサギの駆逐に加え、ネズミがりの名手でもあります。
外来種を含む様々なネズミのシュを巧みに狩るボブキャットは、作物に損害を与え、病気を広め、在来の野生生物と資源をめぐって競合するこれらのシュの抑制に役立っています。ボブキャットはネズミの数を自然に調節することで、有害な化学農薬や殺鼠剤の必要性を減らし、経済的にも環境的にも利益をもたらしているのです。
ボブキャットが狩る外来種③ヌートリア

ボブキャットの獲物は小型のげっ歯類にとどまりません。北米の湿地帯に侵入したヌートリアの存在は、重大な生態学的課題を引き起こしています。もともと毛皮の養殖のために南米から北アメリカ大陸に持ち込まれた。
体重が9kgにもなるこの大型のげっ歯類は水生植物を食べ、土壌を不安定にし、在来種と競争して湿地帯の生息地を破壊しています。
適応力に優れたハンターであるボブキャットは、このヌートリアをも捕食対象に取り入れています
ボブキャットはヌートリアを捕食することで、脆弱な生態系と、それが支える生物多様性を保護するのに役立っているのです。
ボブキャットは害獣の個体数の抑制に役立っている

北米では300万頭を超えるミュールジカが生息していると考えられています。
ミュールジカはアメリカの在来種ですがボブキャットは増えすぎたこのシュの個体数を調整する役割も果たしています。
ボブキャットが1.2~1.9mにもなる、成熟したミュールジカを単独で殺した記録もあります。これは、ボブキャットがいかにタフであるかを示しています。
また、個体数を直接制御するだけでなく、その存在は獲物の行動に影響を与え、特定の地域を避けたり、より警戒したりする可能性があります。この行動の変化により、実際の捕食率が比較的低い場合でも作物の被害が軽減されることがあります。
このことは、農業地帯でボブキャットの個体数を維持することの重要性を実証しています。特にネズミは人間が開発した環境で繁栄する傾向があるため、ボブキャットの存在は重要です。
より大きな獲物に焦点を合わせることがある一部の捕食動物とは異なり、ボブキャットは獲物の種類を簡単に切り替える日和見的なハンターです。この柔軟性により、彼らは害獣の個体数の変動に対応でき、単一の種が過剰に増えるのを防ぎます。
ボブキャットが狩る外来種④鳥類

さらに、ボブキャットは哺乳類だけでなく、鳥類の個体数の制御にも重要な役割を果たします。
これにはホシムクドリやスズメなどの外来種の鳥も含まれますが、これらの鳥はエサや巣作り場所をめぐって在来種の鳥と競争して勝つことがよくあります。
ボブキャットは主に地上で狩りをしますが、木登りも得意で、地上と樹上の両方で巣作りをする鳥を捕食することができます。
ボブキャットが狩る外来種⑤ヘビやワニなどのより危険な種

フロリダではさらに危険な外来種が問題となっています。
ビルマニシキヘビは東南アジア原産で、ペットとして持ち込まれたものが逃げ出したり捨てられたりした結果、現在ではエバーグレーズ国立公園などで繁殖しています。
このヘビは非常に大きくなり、最大で6mに達することもあります。
フロリダ州では、ビルマニシキヘビの個体数を抑制するために、退役軍人やボランティアのスネークハンターが活動しています。例えば、2020年には全長5.73メートルのビルマニシキヘビが捕獲され、州内で最大の記録を更新しました。
また、フロリダ州にはいくつかの外来種のワニが生息しています。
特に注目されているのはナイルワニです。ナイルワニはアフリカ原産で、非常に大きくなり、体長は最大で5.5mに達します。
これら危険な外来種であるビルマニシキヘビや若いワニを、ボブキャットが捕食しているのも観察されています。
まとめ
このように、ボブキャットは北米からより大きな競争相手が姿を消して以来、新たな頂点捕食者になったようです。こうした食性の拡大は、この捕食者が適応能力を持ち、独自の方法で外来種を管理するのに役立っていることを物語っています。
外来種問題が深刻になっている現代、生態系のバランスを維持する上で、ボブキャットの重要性がますます明らかになっています。さまざまな環境に適応しながら害獣の個体数を効果的に制御する能力により、ボブキャットは野生生物の管理と農業保護の両方においてかけがえのない味方となっているのです。
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