哺乳類、爬虫類、鳥類にはそれぞれ海の生活に適応した種がいます。それではなぜ海に両生類はいないのでしょうか?
この記事は両生類がいない理由を説明しています。
両生類の説明

両生類は陸上生活への適応を示しながらも、その身体の構造のため、水辺への依存度が強いという特徴を持っています。彼らの多くが卵を水中で産卵し、幼生は四肢を持たない形で生まれ、鰓呼吸で水中生活を行います。そのため、特に幼生にとっては水中環境が欠かせません。
そして、現生の両生類はサンショウウオなどの長い尾を持ち、短い四肢のある有尾目、尾がなく四肢の発達した無尾目(カエル類)、それに四肢のない細長い体の無足目(アシナシイモリ類)の3群に分けられますが、これらのほぼ全ての種が淡水域を生活の場としています。
塩分に対する耐性が低い両生類

海に両生類がいないのは、塩分に対する耐性が低いためです。
生物は海水にいると浸透圧の関係で体内から水分が出ていき、水分不足で死んでしまいます。そこで、海水魚は水を大量に飲み、塩分をエラを通して体外に排出することにより、海水で生きていくことを可能にしています。また、イルカやクジラなどの海生哺乳類は、体内の脂肪を分解する時に発生させた水分を使って大量の尿を生成し、塩分を排出しています。これと同じように、ウミガメ・ウミヘビなどの海棲爬虫類やペンギンなどの海の鳥類もまた、塩分を体外に排出するための機能を備えています。
一方、両生類は湿った皮膚を持つため、塩水に敏感で、海棲の哺乳類や爬虫類、鳥類とは異なり、海での長時間の生活に耐えることができません。彼らの湿った皮膚では海水中において、浸透圧の関係で体表・体内から水分が出て行ってしまいます。また、卵も爬虫類や鳥類のようにしっかりとした殻を持たず、ゼラチン質で包まれているため、海水には不向きです。
両生類は淡水で進化した
2012年、中国農業大学の研究チームは、14種の両生類、67種の淡水魚、4種の淡水と海水を行き来する回遊魚、35種の海水魚、および1種の半索動物のミトコンドリアゲノムの系統樹解析をしたところ、現生両生類の祖先がシーラカンス、肺魚、または現代の海水魚ではなく、ある種の原始的な淡水魚から発生したことがわかりました。
このように、両生類が淡水で進化したことも、彼らが海水には適応していない理由のひとつです。
両生類の祖先

約4億1800万年前のシルル紀に、硬骨魚の一群である肉鰭類の、最も古い化石が発見されています。肉鰭類はその後、デボン紀前期、4億1600万から3億9700万年前にシーラカンスとリピディスティアの2つの主要な系統に分かれました。この時、祖先が河口や入江付近の海に生息していたと思われるリピディスティアは海洋世界を離れ、淡水生息地に移動しています。
このリピディスティアがさらに肺魚類と扇鰭(せんき)類という2つの主要なグループに分かれました。こうして、約3億7千万年前頃のデボン紀に、扇鰭類の中から両生類の最初の主要なグループが発生したのです。
これらの初期の両生類は水底を這うことができる指を備えた、関節のある脚のようなヒレを進化させていました。また、状況に応じて、強力なヒレを使って自分自身を水から引き上げ、乾いた陸に上がることもできました。
こうして彼らは現代の両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類を含むすべての四肢動物の祖先になったのです。
最初の両生類

イクチオステガはより効率的な肺を持った、最初の原始的な両生類のひとつです。後期デボン紀、約3億6,700万から3億6,250万年前のグリーンランドで発見されたイクチオステガは4本の頑丈な手足、首、ひれのある尾を持ち、より長い時間、水から出られるように適応していました。彼らの骨格はより重く強くなり、陸上で自らの体重を支えられるようになっていたのです。
しかし、これらの原始的な両生類が陸に上がったとき、彼らの皮膚はそれまで水に吸収されていた有害な紫外線にさらされることとなりました。そのため、皮膚は体液を保持することで乾燥に抵抗する能力を高め、過度の水分損失を防ぐように変化したのです。
このような適応を果たした結果、両生類は海水に浸かると浸透圧の関係で体内の水分がどんどん出て行ってしまい、数時間以内に脱水によって死亡してしまうようになりました。
汽水域に生息する両生類
ただ、汽水環境に適応した現生の両生類が一種だけ知られています。
東南アジアの沿岸にあるマングローブ湿地に生息するカニクイガエルは、成体もオタマジャクシも海水中で生存できる世界で唯一のカエルです。

彼らは沿岸域や汽水域の湿地帯での生存を可能にする、塩分に対する高い生理的耐性を持っています。カニクイガエルはアンモニアから生成した尿素の排泄を抑制し、尿素を体内に貯めることで
水分不足にならないようにしているのです。
海にて適応していた古代の両生類

また、ペルム紀には完全に海に適応した両生類がいました。
南アフリカで発見された化石には、分椎(ぶんつい)目の一種の足跡が保存されています。分椎目は初期の両生類のグループで、約3億3000万年前に初めて進化し、2億年以上存在していました。
この化石には体と尾の輪郭が残っており、研究者らはこれを基に、全長を約1.9メートルと推定しています。このワニほどの大きさの両生類は、 2億5千万年以上前の南アフリカの海岸沿いに潜んでいたのです。この種もまた何らかの機能を備えることで海水の環境に適応していたのでしょう。
分椎目は大型のものは4メートルにもなり、爬虫類の祖先が進化する数百万年前の生態系において
ワニと同様の役割を果たし、古代の半水生肉食動物として活動していたと考えられています。ただ、ぶんついもくは白亜紀中期の1億一千万年前までにすべて絶滅しています。
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