秋に脂がのって美味しくなることから、秋の味覚の代表として人気があるサンマですが、市場に出回っているのは全て天然物で、養殖されているものはありません。これはサンマの養殖が難しい事にあります。それではなぜサンマは養殖が難しいのでしょうか?
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サンマの基本情報
サンマはダツ目サンマ科サンマ属に分類される魚の1種です。体が平たくて細長く、両顎は細く尖り、下あごの先端は黄色くなっています。この色は水揚げ後、時間がたつにつれて茶色に変化します。
サンマの泳ぎ方は蛇のようにくねるようで特徴的です。
北太平洋に広く生息し、日本海を含む日本近海からアメリカ大陸沿岸のアラスカおよびメキシコまでの海域に分布しています。
サンマが養殖されない理由
- サンマは繊細な魚であるため
サンマが商業用に養殖されていない理由として、飼育が難しいことが挙げられます。そもそもサンマのウロコは剥がれやすく、皮膚も傷つきやすいため輸送の際に傷を負ったさんまはほとんど回復することなく死んでしまうので、生存したままでの捕獲が極めて困難です。
うまく生きたまま捕らえることができ水槽で飼育したとしても、光や音などの刺激に敏感なため、驚いて暴れ、水槽の壁にぶつかって傷つき、それが原因で死んでしまいます。これは、外敵から身を守るために周囲の環境に対して警戒心が強いためです。さらに、群れで泳ぐ魚のため、一度他の魚が暴れると群れ全体がパニックを起こしてしまいます。
- 生態がまだよくわかっていないため
サンマは産卵や孵化に必要な条件がまだよく分かっていないため、安定的な繁殖が困難でもあります。さんまは海域によって産卵時期が異なり、一定の大きさを超え、成熟した個体が産卵しますが、年2回のピークを持った産卵とする説と冬を産卵期とする説があり、これはまだ解明されていません。
また、一度に全ての卵を産卵するのか、あるいは複数回に分けて産卵するのか等も不明です。
このように生態がよくわからないため、幼魚の時のエサや、水温や光の加減もよくわかっていません。
- サンマは単価が安すぎるため
そして、サンマの養殖が難しいのは単価が安く、増殖にかかるコストとのバランスが悪いためでもあります。サンマの養殖には水槽やえさなどの設備や資材が必要で、高い投資と運営費がかかるため採算性が低いのです。
サンマ養殖の試み
ただ、現在このサンマの養殖を試みている水族館があります。福島県いわき市の水族館「ふくしま海洋科学館アクアマリンふくしま」は、サンマの飼育に力を入れていて、2000年7月の開館当初から常設展示用飼育をしてきました。
先述したように、サンマは傷つきやすいため、成魚を生きたまま水族館へ持ち帰ることはほとんどできないので、同水族館では定置網に入ったサンマの稚魚を水ごとすくって採集したり、サンマが卵を産み付ける流れ藻を探したりして卵を入手しています。
東日本大震災による予備飼育施設「水生生物保全センター」が被災したことにより、2012年8月に展示を中止しましたが、2013年5月には展示が再解されていま。
飼育当初、1000匹いたサンマですが、やはり飼育は難しく、30匹にまで減少した時期があります。しかし、水槽全体を黒いカーテンで覆って光の変化を極力なくし、水槽内に水流をつけて安定した遊泳ができるなどの工夫を凝らしたところ、成魚まで飼育することに成功しました。
こうして水族館は北里大学など国内の3つの大学や研究機関と連携してチームをつくり、世界初となる本格的なサンマの養殖技術の基礎研究に乗り出したのです。水族館が研究材料となるサンマを安定的に供給し、効率の良い飼育数を考え、北里大学などは自然界で餌としているプランクトンに着目し、養殖に適したエサの開発をしました。
また、水温を調節することで、サンマの産卵時期をコントロールする他、人工の産卵床に生まれた結果、世界で初めてサンマの水槽内繁殖に成功しました。現在までに卵から育てた個体を成長させ、それを産卵させることを繰り返し、8世代まで継続してサンマを繁殖させることができています。
ちなみにこのように何世代にも渡って繁殖させることを累代産卵と言います。
まとめ
サンマは2010年代以降、水揚量が激減しています。そのため、今後、サンマ養殖の商業化が実現し、不漁に悩む秋の食卓を救ってくれることが期待されます。
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