ヒトがゴリラやチンパンジーなどの大型類人猿より弱い理由

生物

ゴリラやチンパンジーなどの大型類人猿は人間よりも遥かに強力です。なぜ同じヒト科なのに他の大型類人猿と比べると人間は弱いのでしょうか?この記事はヒトが大型類人猿より弱い理由について説明しています。

大型類人猿とは

大型類人猿はヒトと最も近縁な動物で、いわゆる猿と違って尻尾が無く、ヒトと共にヒト科を形成し、アジアに棲むオランウータン属とアフリカに棲むゴリラ属、チンパンジー属から成ります。

大型類人猿は指の背面を接地するナックルウォーキング(オランウータンは拳を接地するフィストウォーキング)という独特の歩き方をすること、頻繁に二足歩行を行うこと、多彩な行動、豊かな個性と感情複雑な社会関係、高度な知性など、ほかの霊長類には見られない多くの特徴を持ちます。

大型類人猿にはチンパンジー、ボノボ、オランウータン、そしてゴリラがいます。

チンパンジーはどれくらい強いのか?

チンパンジーは熱帯アフリカの森林、サバンナに生息し二本足で立ちあがった時の背の高さは1.2から1.5m、体重はオスが70kgまで、メスが50kgまでで、ボノボよりも大きく頑丈です。チンパンジーはひざ下まで伸びる長い腕を持ち、足は腕よりも短くなります。

彼らは15から150頭くらいまでの群れをつくり、オスが群れを支配します。

ヒトと最も近縁といわれているこのチンパンジーはヒトよりも遥かに強いとよく言われますが、一体どのくらい強いのでしょうか?

よく聞く話によると、チンパンジーは人間の5~8倍強いと言われています。しかし、このような主張は時代遅れで欠陥のある研究に基づいており、その研究の一部は1世紀以上も前のものです。

最新の研究では、実際にチンパンジーは体重あたりで人間の1.5倍ほどの強さだと結論づけられました。

この研究は、アリゾナ大学医学部の解剖学および進化学研究者であるマシュー・オニール率いる研究チームによって2017年に実施されました。チームは3頭のチンパンジーから採取した大腿部とふくらはぎの筋肉の生体検査を行っています。

筋肉繊維には速筋遅筋の2種類があります。速筋は収縮が非常に早く、瞬時に大きな力を発揮する一方、遅筋は長時間にわたってゆっくりと収縮します。そのため、速筋は瞬発的なパワーを生み出すのが特徴で、遅筋は大きな力を発揮する事はできないものの、持久力にはすぐれています。

研究者らは人間の筋肉繊維の半分以上が遅筋である事に対し、チンパンジーの繊維では2/3が速筋で構成されていることを発見しました。

また、チンパンジーは平均して繊維が長く、特に腕の周りが長いようです。これも筋力を高めている理由のひとつだと考えられます。

これらの筋繊維のデータをコンピューターシミュレーションで処理したところ、チンパンジーの筋肉は人間の筋肉よりも約1.3~1.5倍強力であることが分かりました。

これはチンパンジーが野生下で生き残るために木登りに大きく依存していることを反映しているのかもしれません。

さらにチンパンジーの強さの秘密は神経系の要素にもあります。

チンパンジーの脊髄の灰白質は、人間よりもはるかに少なくなっています。この灰白質には、筋繊維につながる神経細胞がたくさん含まれており、脳が筋肉の動きを調整できるようにしています。そのため灰白質が多いと複雑な道具を使ったり、物を正確に投げたり、小さな物を操作したりするなど、非常に細かく調整された運動を実行できます。

チンパンジーは灰白質が人間よりもはるかに少ないため、筋肉を動かすと各ニューロンが多くの筋繊維を刺激し、細かい制御ができず、全てかゼロかという極端な運動になります。

これはほかの大型類人猿においても同様のことが言えます。

ボノボの脚力

コンゴ盆地に生息するボノボは絶滅が深刻に危惧されている動物で、同属のチンパンジーとよく似た姿をしていますが、より小型です。平均的なオスの体重は45kgでメスの体重は33kg、ほとんどの個体の身長は1.2mくらいになります。

2006年の研究でボノボが最大約70cmまで空中に飛び上がることができ、彼らがほぼ2倍重いヒトと同じくらいの脚力を持つことが分かりました。

関連動画:ボノボの自己家畜化とは何か?

オランウータンの腕力

オランウータンはインドネシアとマレーシアの熱帯雨林に生息する大型類人猿で、オスの体重は50~90kgで、メスは30~50kgになります。

オランウータンはほとんどの時間を木の上で過ごし、長く曲がった指は吊り下げフックの役割を果たし木の高い所まで移動できます。それに加えて彼らは長い腕を持ちます。

オランウータンの力は非常に強く、240kgの重さを持ち上げることができます。これは食事のためにヤシの実を引き裂く時に役立ちます。

そのため、強力な武器を持っている場合を除き、人間はオランウータンに勝つことはできません。

最も強い類人猿ゴリラ

そして、最も強い類人猿がゴリラです。ゴリラは喜びや憂鬱など、人間のような行動や感情を幅広く示します。

彼らは体高が1.5から1.8mで、体重は100から270kgにまでなります。

群れが人間、ヒョウまたはほかのゴリラなどに脅かされるとシルバーバッグはたとえ自分の命をかけても群れを守ろうとすることがあります。

このシルバーバッグは815kgの重さまで持ち上げたり、投げたりすることが出来ます。

そのため、ヒトがゴリラのパンチを喰らったら一撃で頭蓋骨を骨折するでしょう。

なぜヒトは弱いのか?

実際、オニール氏のチームがマウス、ネコ、イヌ、サルなどの様々な哺乳類の筋繊維を比較したところ、より遅筋が多いのは無気力なスローロリスとヒトという2種類だけであることが分かりました。

しかし、だからといって、あなたたちは怠け者だと言うわけではありません。

実際、人間が遅筋を多くしていったのは、生息地の変化と関連しています。チンパンジーがまだそのたくましい上腕二頭で木を揺らしていた頃、人間はゆっくりと世界中に広がっていきました。

平均容積1200cm3のあなたたちの脳は、チンパンジーの3倍の大きさがあります。しかし、この脳を動かすには多くのエネルギーが必要で、休息時にエネルギー消費量の20%を消費すると言われています。これはチンパンジーや他の霊長類の消費量の2倍以上です。

新しい研究によると、人間は賢くなるためにひ弱な筋肉を持つという大きな代償を払ったといいます。骨格筋を分析した結果を見る限り、少なくとも初期人類は類人猿に匹敵する筋力を保持していた可能性が高いと言われています。

それが人類は600万年をかけて体の残りの部分が変化するより8倍も速いペースで筋肉を退化させました。しかし、人間は単に弱くなったのではなく、狩猟やその他の活動中の持久走など、全体的な強さを必要としない方法で筋肉を使い始めたのです。

このようにヒトはチンパンジーほど強くはありませんが、運動能力が劣っているわけではなく、より効率的なハンターになり、食べ物を調理することを学び、より大きなグループで資源を共有することで、エネルギー効率を高める方法を考案していったのです。

この記事はYouTubeの動画でも見ることができます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました