オーストラリアのアウトバックと呼ばれる荒野にいるのノネコは野生の中で何世代にも渡って孤立し、生態系の頂点捕食者になっています。天敵がいない環境と豊富な獲物のため大型化しており、「メガキャット」と名付けられました。
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そして驚くべきことにスコットランドにも「ケラス猫」と呼ばれる巨大なネコがいます。
エイリアン・ビッグ・キャット

世界中のあらゆる場所で非常に大きく、ヒョウのような姿をした猫の目撃情報が長く続いています。このような動物はエイリアン・ビッグ・キャットとして多くの人が居ないはずの場所で大きな猫を見たと主張しています。エイリアン・ビッグ・キャットはビッグフットやネッシーどと同じ未確認生物ですが、その目撃情報は長年にわたり議論と憶測を呼んでいました。この動物は一体なんなのでしょうか?
スコットランドでも古くから非常に大きな黒猫が目撃されていました。そのネコはヒツジを殺すほど大きく凶暴だとスコットランドの農夫たちは証言していましたが、神話上のヤマネコと考えられ、目撃例が数件あったものの、デマとされてきました。
スコットランドの巨大な黒猫

しかし、1984年に肩の高さ38cm、鼻から尾までの長さ110cmある、イヌほどの大きさのネコが罠にかかりました。この発見が報告されると、農民や猟場管理人はすぐに「我々はハイランド地方の農場で何年も前から大型の黒猫を撃ってきた」と主張しました。それにもかかわらず、懐疑論者は当初、この動物をただ単に非常に大型の野良猫だとして退けました。
そこで、スコットランド国立博物館の研究者は捕獲されたこの動物8体を調べました。1体の死骸はすでに博物館のコレクションにあったもので、残りの7体は博物学者であるディ・フランシスから提供されています。
そして、研究者は1体をメラニズムのスコットランドヤマネコであると特定しましたが、他の標本のほとんどはヤマネコとネコの種間雑種であると結論づけたのです(メラニズムは突然変異によりメラニン色素が過剰に産生されることで、皮膚や毛の色が黒色から褐色になるものです)。
これらの標本はヤマネコに近い姿をしており、1体の雑種だけが飼い猫に近いものでした。
スコットランドヤマネコとは

スコットランドヤマネコはスコットランドに生息するヨーロッパヤマネコの1種です。彼らははっきりとしたトラ模様を持ち、先が黒くなる輪状の尾は毛がふさふさして、耳は横につき出ています。このヤマネコはイエネコよりも大きく、四肢の骨も長く、頭蓋骨がより頑丈です。
2010年から33年にかけてスコットランド高知で行われたカメラトラップ調査では、スコットランドヤマネコは主に混合林に生息していることが分かりました。彼らはこの森林で主にヨーロッパウサギとハタネズミを捕食しています。
スコットランドヤマネコは、かつてはイギリス全土に広く分布していましたが20世紀初頭から生息地の喪失や迫害により個体数が激減しました。そのため、現在の生息地はスコットランド北部と東部に限られています。
ケラス猫
このスコットランドヤマネコとイエネコの交雑種は、最初に発見されたケラス村にちなんでケラス猫と名付けられました。ケラス猫はその大きな体、黒い毛皮、そして神秘的でとらえどころのない存在として知られるようになりました。
ケラス猫この最初の生きた個体とされるメスは、テレビ番組「トゥモローズ・ワールド」のチームによって捕獲され、1986年のエピソード「ビッグキャットの足跡」で紹介されました。
初めのオスは1988年にスコットランドのインヴァネス郡で捕獲されました。
2匹ともハイランド野生動物公園でしばらく飼育され、その後、フランシスがひきとりました。フランシスは2匹を飼いならすのに苦労しましたが、繁殖に成功し、飼育下で初めてのケラス猫の子猫が産まれています。
サーバルと呼ばれるアフリカに生息するネコ科動物がいます。このサーバルとイエネコのハイブリッドであるサバンナキャットは世界中で人気のエキゾチックなペットとなっています。また同様に、ベンガルヤマネコとイエネコのハイブリッドであるベンガルキャットも人気です。

ただ、ケラス猫が他のペットのハイブリッド猫と一線を画している点は、明らかに彼らが野生動物であるということです。ケラス猫はペット取引の対象にはなりませんでしたし、家畜化のために飼育されることもまったくありません。彼らは人間の手を加えられることなく、野生で交配し、スコットランドの荒野で生き残り、繁栄し続けています。
しかし、この事がスコットランドヤマネコの種の保存にとって最大の脅威となっています。それはヤマネコとイエネコの種間交雑によって遺伝子汚染が生じ、純粋なスコットランドヤマネコが減少してしまうからです。
これと同じことがスイスのヤマネコにも起こっています。ジュネーブ大学の生物学者らの研究によると、イエネコのメスにとって、イエネコのオスよりもヤマネコのオスの方が交尾相手として魅力的であることから、ヤマネコとイエネコの交配が進んでいるといいます。
これにより、今後200から300年の間に、雑種形成による不可逆的な遺伝子置換が発生し、スイスのヤマネコの種の保存が危機的状況にあると考えられています。
研究者は近い将来、スコットランドヤマネコとイエネコの見分けがつかなくなる可能性があると警鐘を鳴らしています。絶滅が危惧されているスコットランドヤマネコは、今やケラス猫が半分を占めているとも言われています。つまり、スコットランドの荒野には数百あるいは数千のケラス猫がいる可能性があるのです。
また交雑以外にもワクチン接種を受けてない感染した飼い猫は、さまざまな致命的な病気をスコットランドヤマネコに感染させる危険性があります。
そのため、スコットランドヤマネコ保護行動グループは現在、雑種化と病気のまん延を防止するため野良猫の去勢と病気の野良猫の安楽死を行っています。

イギリスのオオカミは16世紀初頭に絶滅しました。また、クマやオオヤマネコもそれよりもずっと前に絶滅しています。
そのため、ケラス猫には特に競争相手が少なく歩き回るスペースがたっぷりある頂点捕食者としてさらに大きくなる可能性があります。
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