急速に進化するマダガスカルのノネコに衝撃の変化が!!

生物

マダガスカルにフォレストキャットと呼ばれるネコ科動物が生息しています。長らくこのフォレストキャットはアフリカ由来のヤマネコだと考えられていましたが、最近の遺伝子解析の結果、千年前に船でこの島に連れてこられた飼い猫の子孫だということが分かりました。つまり、このネコ科動物は飼い猫と同じ種だったのです。フォレストキャットはマダガスカルの環境に適応し、独自の生態と形態を手に入れています。

マダガスカルの自然

マダガスカルはアフリカ大陸の南東海岸部から沖へ約400km離れた西インド洋にある島国です。

18世紀の自然学者であるフィリベール・コメルソンが論文でマダガスカルこそが自然学者にとっての「約束の地」であると書いているように、この島には独自の進化を遂げた生物が多いことで知られています。マダガスカルの全ての動植物およそ90%が固有種です。

マダガスカルの頂点捕食者「フォッサ」

この島国には独自の小型肉食動物も生息しています。

その中で最も大きいのはフォッサという動物です。フォッサの体長は61~80cm、オスの体重は6~12kgになります。その形態から過去にはネコ科に分類されていたこともあり、しばしば猫のようだと表現されます。フォッサはネコとマングースとイヌの交配種だなどという人もいますが、実際にはマダガスカルマングース科に分類されます。

彼らは深い森を好み、げっ歯類などの哺乳類、鳥類、爬虫類、カエル、昆虫などを食べますが、主な獲物はキツネザルです。

フォッサはマダガスカルにのみ生息し、この島の手つかずの森の頂点捕食者へと進化し、今もその地位を維持しています。

マダガスカルのフォレストキャット

フォッサとは別にフォレストキャットと呼ばれるネコも島で長らく観察されてきました。

これまでこのネコ科動物は、その起源について議論の的となってきました。多くの科学者はフォレストキャットの祖先はアフリカ大陸から何らかの形でマダガスカルに辿り着いたヤマネコであると長い間考えていました。

そして歴史や民俗学のデータから飼い猫は1800年代の英国大使とともにこの島に到着したとされていました。そのため、フォレストキャットが他の飼い猫と明確に区別できる記録は1870年まででした。

フォレストキャットの遺伝子解析

しかし新たな証拠が全く異なる物語を明らかにしました。コロラド大学のミシェル・サウザー氏らによる最近の遺伝子分析によると、このネコ科動物は1000年前にアラブの貿易船によってこの島に来たことがわかったのです。

サウザー率いるチームはマダガスカル南西部のベザマハファリ特別保護区と北西部のアンカラファンツィカ国立公園の2か所で30匹のフォレストキャットを捕獲して採血した後、遺伝子を世界中の飼い猫のゲノムと比較しました。

フォレストキャットは中東からやってきた

このコンサベーション・ジェネティクス誌に報告されたデータは、フォレストキャットの起源が中東であることを物語っています。このネコはこのネコはラム島、パテ島、ドバイ、オマーン、クウェートを含むアラビア海地域の飼いネコの子孫です。さらにこの研究によるとインドとパキスタンからも影響が及んでいるといいます。

フォレストキャットの祖先が愛玩用のペットだったか、船のネズミ捕り用に連れてこられたか、こっそりと船に侵入していたかわかりませんが、この移動は東から島に到着した人々の移住パターンと一致していました。

研究によると、アラビア海の港の船は紀元前2000年後半から海上貿易ルートを横断し、これは帆船時代が終焉を迎えた1862年まで続きました。マダガスカルへの寄港を含むアジアとヨーロッパを横断するシナモンの貿易ルートは、10月から3月にかけての冷たいモンスーンによって有利に働いていました。アフリカ東海岸に沿って南下した船が、ラム島とパテ島に立ち寄り、そこからマダガスカルに渡るのは容易だったようです。

ネコはおそらくこれらのアラブルートを通ってマダガスカルに来た船に乗っていたのでしょう。

また、島全体にはアラブの影響があることも知られており、言語、アラビア文字を含む写本、12世紀の大きなモスクの遺跡にそれが表れています。

身体的、行動的に変化したフォレストキャット

サウザー氏がネコの起源に興味を抱いたのは自身の研究対象であるワオキツネザルが行方不明になり、後日、そのキツネザルに付けられていたマイクロチップが1匹のフォレストキャットの糞から見つかった時でした。つまり、フォッサだけでなく、ネコがキツネザルを食べていたのです。

ワオキツネザルはマダガスカル南部の固有種で、体調が38.5~45.5cm、体重が2.3~3.5 kgあります。フォレストキャットはこのワオキツネザルのような大型の動物を捕食する為に巨大化したようです。

彼らは森林近くの村にいる飼い猫よりも2倍ほど大きくて頑丈な体を持ちます。また、フォレストキャットは皆同じ森によく溶け込むトラ模様を持ち、完全に森林で狩猟するのに適応しています。

フォレストキャットは生態系に悪影響を及ぼしているのか?

現在、世界各地で野生化したネコが外来種として生態系に影響を及ぼしており、特に島嶼域の希少種や固有種への被害が大きくなっています。

関連記事:急速に進化する南極のノネコに衝撃の変化が!!

関連記事:急速に進化するオーストラリアのノネコが巨大化している

マダガスカルのフォレストキャットは在来の鳥、げっ歯類、ヘビを捕食し、キツネザルをめぐってフォッサと競争しています。そのため、このフォレストキャットも外来種としてマダガスカルの野生生物に壊滅的な被害を与えている可能性があります。

ワオキツネザルは世界で最も絶滅の危機に瀕している動物のひとつのため、これは非常に深刻な問題です。また、フォレストキャットはニワトリを食べるので、マダガスカルの村人からは害獣とされています。

しかし、今回の研究でわかったように、フォレストキャットがこの島に到着したのは1000年も前で、何世紀もかけてマダガスカルに適用しており、そのため、これは彼らが今日機能している島の生態系の一部になっていることを意味します。

フォレストキャットは人間の開発によって乱された競争相手が占拠していない比較的新しい場所を奪い取った可能性があります。そのため、生態系は比較的バランスが取れているのかもしれません。

また、サウザー氏の学生のひとりがフォッサの糞からネコの骨を見つけています。フォッサは競争相手のひとつである外来種のネコを餌としているようです。この事は他の在来種にとっては朗報です。また、マダガスカル人の中にはネコを捕獲して食べるものもいることが知られています。

外来種が導入されてから、どの時点で定着した環境の構造の一部とみなされるのかは曖昧です。1000年は充分な期間なのでしょうか?もしそうだとしたら、何もせずに自然に任せるべきなのでしょうか?

これは非常に難しい問題のため、かなりの議論になることが考えられます。

そのため、今後、フォレストキャットを追跡しよく研究することが重要であるとサウザー氏は述べています。人間が生態系を変えるような劇的なことをする前に。彼らのことをよく知る必要があるようです。

この記事はYouTubeの動画でも見ることができます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました