巨大魚「オヒョウ」とは?大きさや死亡事故について。気になる味も

動物

北太平洋や北大西洋の冷たい深海に生息する巨大なカレイ、オヒョウをご存知でしょうか。

オヒョウは、その圧倒的な大きさと力強さから漁師たちに一目置かれる存在です。

成魚は通常50〜150キロに達し、まれに200キロ近くになる個体もいます。大型で引きが強いため、釣りや漁で取り扱う際には十分な注意が必要です。

本記事では、オヒョウの生態や漁獲の実情、死亡事故などについて詳しく解説します。

分類と分布

オヒョウとは、北海道での呼び名で漢字では「巨鮃」と書きます。「大きなヒラメ」という意味ですが、実際はカレイ目カレイ科オヒョウ属に分類されるカレイの仲間です。

昔はヒラメとカレイの呼び分けが厳密でなかったため、このような名称が定着しました。

オヒョウ属には世界に2種が存在します。タイヘイヨウオヒョウ(Hippoglossus stenolepis)とタイセイヨウオヒョウ(Hippoglossus hippoglossus)で、日本近海に生息しているのはタイヘイヨウオヒョウです。

分布域は、オホーツク海やベーリング海、北太平洋沿岸、北大西洋沿岸などの冷たい海域に広がっています。日本では主に東北や北海道沿岸で見られます。

生息域

オヒョウは主に沖合の大陸棚沿い、数メートルから数百メートルの深さに生息しています。

普段は海底近くで過ごしますが、活発に泳ぎながら長距離を回遊することもあります。

大きさ

タイセイヨウオヒョウは、カレイ目の中で最大の種とされています。

記録上、最も大きな個体は2013年7月にノルウェー沖で捕獲され、全長2.62メートル、体重234キロに達しました。

一方、タイヘイヨウオヒョウでは、2014年7月にアラスカのグレーシャーベイで捕獲された219キロの個体が最大記録です。

なお、これらの大物はすべてメスであり、オスは一般的にメスの約1/3程度の大きさにしかなりません。

繁殖とライフサイクル

オヒョウは冬の間、浅瀬から深海に移動し、産卵のために群れを形成します。

メスは水中に卵を放出し、オスが体外で受精させます。1匹のメスは1シーズンで数百万個の卵を産むことが可能です。

卵は約2週間で孵化し、生まれたばかりの稚魚はしばらく水中を漂して生活します。

オヒョウは孵化時には左右対称で、頭の両側に1つずつ目があります。

その後、稚魚は遠洋で成長し、6か月ほどで片方の目が頭の反対側に移動して海底生活を始めます。

オヒョウは成長が非常に遅く、性成熟には少なくとも8年かかります。

また寿命も長く、150歳を超える個体が存在することも報告されています。

捕食

オヒョウは待ち伏せ型の捕食者で、海底にじっと横たわり、体色を底に溶け込ませて獲物が近づくのを待ちます。

稚魚の時期には、小型の甲殻類やその他の底生生物を主に食べます。

成魚になると、タコ、カニ、ヤドカリ、ヤツメウナギ、カジカ、タラ、スケトウダラ、ニシン、ヒラメなど、さまざまな魚類や海底生物を捕食します。

口に入るものはほぼ何でも食べることができるため、オヒョウは海底生態系における食物連鎖の上位に位置する捕食者です。

天敵

一方、天敵はアシカ、シャチ、サメ、そしてあなたたち人間です。

オヒョウの漁獲

オヒョウは歴史的にアラスカやカナダの先住民にとって重要な食糧源で、多くの沿岸に住む人々にとって重要な食料であるため、今日まで漁獲され続けてきました。

ただ、オヒョウは巨大で筋肉質のため力が強く、吊り上げた時に暴れると危険で、漁師が怪我をすることもあります。

そのため暴れないように棍棒で頭を殴って殺さなければなりません

しかし、脳が小さく、位置が分かりづらいため、殺すのは難しく、死んだと思っても、その後ずっとたってから突然予測不能に暴れ出すこともあります。

オヒョウの伝説

太平洋北西部に住んでいたネイティブ・アメリカンのチムシアン族には、オヒョウを題材にした伝説があります。

この物語では、カヌーに乗っていた王子と2人の王女を丸ごと食べてしまう怪物オヒョウが登場します。

復讐に燃えた2人の男性がこの怪物に立ち向かうものの、彼らも食べられてしまいます。

しかし、最終的に男性たちは魚の内側から内臓を破壊し、巨大なオヒョウを倒すことに成功する、というお話です。

オヒョウによる被害

1973年8月、アラスカの漁師が実際にオヒョウに殺されたと地元のメディアが報告しています。

ジョセフ・T・キャッシュさんはクプレアノフ島の近くで60キロもの個体を釣り、船上に引き上げることに成功しました。

しかし、暴れたオヒョウは彼の足を骨折させた上、動脈を切断し、さらに甲板に倒れた彼は肋骨3本にひびが入りました。

瀕死の重傷を負いながらも、彼は船外に落ちないようにオヒョウをくくりつけました。

ですが、船が陸地にたどり着いたときには彼は亡くなっていたのです。

オヒョウの味や料理

オヒョウは日本では刺身として食べられます大味と言われ、カレイと比べてあまり高く評価されず、比較的安い市場価格で流通しています。

そのため、回転寿司ではヒラメの代用の「えんがわ」として提供されることも多くあります。

ただ、オヒョウはビタミンAおよびビタミンBが豊富で、肝臓からは肝油が取れる他、海外では様々な方法で料理されています。

特にフィッシュアンドチップスは、イギリスを代表する庶民料理として人気があります。

オヒョウの身はよくしまった白身で脂肪が少なく淡白な味わいのため、濃い目の味で調理されることがよくあります。

そのため特に西京味噌とよく合います


おすすめの書籍

『北海道の魚類 全種図鑑』は北海道の魚類を網羅した決定版です。

分布や形態、生態の記述が非常に丁寧で、釣り人から研究者まで幅広く使える構成になっています。

特にカラー写真の質が高く、識別に迷いやすい近縁種の違いも視覚的に理解しやすいです。

分類体系も最新の知見に基づいて再構成されており、科の並びや記述順が論理的で読みやすくなっています。

オヒョウをはじめ、北海道ならではの大型魚や深海種もきちんと掲載されていて、地域性と網羅性のバランスが絶妙

図鑑としての完成度が高く、現場での活用にも、学習・研究にも十分応えてくれる一冊です。

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