人間を食べていた先史時代の生物 10選

生物

現在、あなたたち人間は食物連鎖の頂点に存在しているかもしれませんが、先史時代の人類はよく捕食者に狙われていました。それでは、どのような生物に食べられていたのでしょうか?

人の系統とチンパンジーの系統が分岐したのは、今からおよそ600から700万年前で、ホモ・サピエンスが誕生したのは約20万年前です。

人間を食べていた生物がどのような種であったかという証拠は、今日、サルや類人猿を食べている生物を知ることと、そしてすでに絶滅した種が食べていたものを研究することから得られます。

例えば、ヒト科の化石の多くは捕食者が餌を食べた場所の近くの骨の山から採取されます。ここでは、人類の祖先およびそれほど古くない人類の親戚を殺した可能性のある生物を10に分けて紹介していきます。あなたが生きているということは、あなたの直接の祖先がこうした運命を逃れて繁殖をしてきたことを意味します。

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1. ヒョウ、ライオン、トラ

ヒョウはチンパンジーやゴリラ、さらにはサルよりも古くから出現しています。この生物は霊長類を食べるのが非常に得意です。ヒョウは獲物に見つからずに忍びより、速く走ることができます。また、霊長類がいる木にも楽々と登ることができます。そして、彼らは力が強いため、捕らえた獲物を安全に食べることができる場所に運ぶことができます。この特徴の組み合わせにより、ヒョウは1000万年もの間、霊長類を捕食してきました。

南アフリカのクルーガー国立公園で行われたある研究では、ヒヒの死因の70%はヒョウによるものであると考えられています。別の研究では、ヒョウが殺した哺乳類の半数はサルまたはチンパンジーでした。さらに彼らは若いゴリラを殺すことができます。

人類の祖先を食べていたという直接的な証拠としては、南アフリカで発見された初期の人類であるパラントロプス・ロブストス (Paranthropus robustus) の頭蓋骨から得られています。少年のものだったこの頭蓋骨には、ふたつの明確な傷跡がありました。科学者が調べた結果、この傷跡は古代のアフリカヒョウの牙と一致しました。この古代人類にとっては不運な事にヒョウに食べられる前にある程度の距離を引きずられた可能性が非常に高いことがわかっています。

その他、人間を含む霊長類はアフリカではライオン、アジアの熱帯地方ではトラ、アメリカではジャガーにも食べられます。1989年、タンザニアのひとつのチンパンジーの群れはわずか数日で40頭がライオンに食べられました。

2. ワシ

ワシは幼い子供達を連れ去っていただろうと推測されています。

この証拠を示す最も有名なヒト科の化石のひとつは、南アフリカのタウンで発見された3歳児の頭蓋骨です。この子供は約300万年から200万年前までに生息していたアウストラロピテクス・アフリカヌスAustralopithecus africanus)の骸骨の眼窩には綺麗に開けられた穴があり、これはカンムリクマタカに似た大きな鳥の爪によって付けられたものです。この頭蓋骨は巣の下で他の骨の中に混じって発見されました。

カンムリクマタカは南アフリカ中部南部の森林に生息し全長は98cm、重さは2.7から4.1 kgになるアフリカ最大級のワシで太く強い指と鋭いかぎづめを持ちます。

ザンビアでは投稿中の7歳の少年がカンムリクマタカに襲われる事件が起き、頭や胸に深い傷を受けています。カンムリクマタカの獲物の90%以上は霊長類であり、そのほとんどがオナガザルです。

アメリカ大陸の熱帯林で霊長類はオウギワシの主な獲物です。オウギワシの平均的なメスは全長100cm、翼を広げると200cm、体重7.5 kgに達し、猛禽類では最大の部類に入り、爪の長さは13cmもあります。

サルはそれぞれ異なる捕食者によって危険を知らせる鳴き声を使い分けていることが知られています。例えば「ネコ!」「ヘビ!」「ワシ!」などです。そのため、「ワシ」は人類最初の言葉のひとつだったのかもしれません。

3.ヘビ

ヘビは長い間、人類の運命と進化に影響を与えてきました。アフリカの一部では毒蛇に噛まれることが多くあります。「人間を最も殺している生物ランキング」でもヘビは3位にランクインし、年間5万人がヘビの毒によってなくなっています。そのため、毒蛇は今日の人間や他の霊長類を殺していただけでなく人類の祖先を殺した可能性もあります。

また、毒蛇以外にも大型になるヘビはあなたたちを食べていた可能性があります。コーネル大学の爬虫・両生類学者のハリー・グリーンと人類学者のトーマス・ヘッドランドはフィリピンの狩猟採集民であるアエタ族の研究を行っています。

アエタ族はアミメニシキヘビが高密度に生息している場所に居住しています。アミメニシキヘビはニシキヘビ科マレーニシキヘビ属に分類されるヘビで南アジアから東南アジアにかけての一帯の温暖湿潤気候から熱帯雨林の地域を中心に生息しています。オオアナコンダとともに世界最長のヘビとされ、文献によっては最大全長990cmにまで成長すると言われています。

研究者らはアエタ族の男性の4人に1人がアミメニシキヘビに襲われた経験があることを発見しました。また、研究対象となった男性120人のうち6人がニシキヘビに殺されていました。これは20人に1人がニシキヘビによって死亡していることになります。この確率は恐ろしく高いものですが、現代人のほとんどが都市を築き、捕食者を排除してきたことで、そのような危険を逃れてきたのです。

4. 霊長類

人類学者は初期のヒト科は「攻撃的な狩猟者」、「平和的に採集する者」、「毛のない水泳者」、「卑劣な死肉食者」だったなどと様々な主張をしてきました。これは時間が経てば判明するかもしれませんが、人類の祖先の一部はほぼ間違いなく他の霊長類の食料となっていました。

チンパンジーは事実上、サルを捕食します。ウガンダではチンパンジーは鶏肉に似た味を持つといわれるアカコロブスを好んで食べます。他の地域のチンパンジーはアビシニアコロブスを好みます。また、オランウータンはテナガザルを食べます。

霊長類は霊長類を食べるし、これは昔からそうでした。

これまで気づかれていませんでしたが、ケニアの博物館で最近発見された145万年前の古代人類のすねの骨の切断痕は同種を共喰いしていたことを示す最後の証拠となる可能性があります。ふくらはぎの筋肉がこの脚の骨に付着する箇所で切断された跡があり、肉を除去するために石器が使われていたと考えられています。研究者たちはまだこの共食い行為をしていた古代の種を明確に特定することはできていませんが、進化の過程を垣間見る興味深いものとなっています。

5. オオカミ

赤ずきんちゃんの作者がおばあさんのベッドに寝ている動物にオオカミを選んだのには理由があります。

ノルウェー自然研究所のジョニー・シーリングか2002年から2020年までの世界各地のデータを調査した最新の研究によると、少なくとも26件のオオカミによる死亡事故を明らかにし、そのうち最も多い12件はトルコでのものでした。その他、イランで6件、インドで4件、カナダ、米国、タジキスタン、カザフスタンでそれぞれ1件ずつ死亡事件が発生しています。

また、2002年から2020年までに狼に襲われた人は世界中で489人に上り、そのうち380人(78%)は狂犬病によるもので、トルコでの12件の死亡事故のうち75%は狂犬病のオオカミによるものでした。狂犬病のオオカミは落ち着きがなくなってあてもなく動き回り、興奮してあらゆるものに噛みつこうとします。そして、67人は捕食目的に襲われ、42人は防御のために攻撃されたと考えられています。

2005年、カナダでは22歳の男性が人里離れた高山キャンプの近くで殺害されました。このキャンプにはゴミ捨て場があり、そこには人間を恐れないオオカミが頻繁に出入りしていました。

2010年にアラスカで起きた攻撃では32歳の女性が死亡しましたが、このオオカミは狂犬病ではなく捕食目的だったと考えられています。

データは少ないのですが、歴史的に見てオオカミによる人間の捕食はかつては一般的であった可能性があり、さまざまな物語に影響を与えるには充分でした。

6. ハイエナ

ブチハイエナは定期的にヒヒを捕食し、地域によっては人間も捕食します。1950年代、マラウイでハイエナが27人を食べた事件が発生しました。

しかし、霊長類を好んで食べてきたのはすでに絶滅したハイエナの親戚です。これまで過去に霊長類と並んで100種ものハイエナが存在していました。

それらのハイエナの多くは大きく獰猛で、その中にはライオンほどの大きさのパキクロクタ(Pachycrocutaも含まれていました。彼らはアウストラロピテクスなどの最初のヒト科や同じ系統の種と共に、300万年から50万年前までユーラシアや東アフリカに生息していました。

Nobu TamuraCC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

パキクロクタはまっすぐ立てば肩の高さだけでも1mになり、体重が最大100kgに達する、地球史上最大のハイエナでした。彼等は今日のハイエナのように協力して大きな動物を狩る上位捕食者でヒト科の頭を完全に包み込むことができるほど大きな口を持っていました。

第二次世界大戦前に中国で発見された北京原人(ホモ・エレクトス)の頭蓋骨がパキクロクタが捨てたもの山から出てきたものと考えられています。

7.絶滅種

かつて人類を食べていた生物の中には今日知られているどの捕食動物とも異なるものがありました。博物館で復元されたこれらの種は現実というより想像上の動物のようにさえ見えます。

それらは前述した巨大なハイエナだけでなく、体長2m、体重750キロの巨大なクマ、アグリオセリウム(Agriotherium)ホモテリウム(Homotheriumマカイロドゥス(Machairodusメガンテレオン (Megantereonなどの剣歯虎(サーベルタイガー)の仲間などです。

剣歯虎は、漸新世後期から更新世にかけて栄えたネコ科に属する食肉獣の中で、上顎犬歯がサーベル状となったグループで、様々な種が存在していました。彼らの体長は1.9から2.1m、体重は270kgに達し、上あご犬歯は20cmにも及び、大型動物を専門に狩るための武器として使用したと考えられています。サーベルタイガーはあばら骨からバーベキューを引き剥がすように、その長い牙を使って肉を切りました。おそらくその肉には人類の祖先や親族の肉も含まれていただろうと考えられていますが、それを示す唯一の証拠は、サーベルタイガーの歯によって付けられたふたつの穴のあるヒト科の頭蓋骨だけです。

8.コモドドラゴン、サメ、その他特有の種

ホモ・サピエンスが世界中に移動するにつれて果物が豊富で、捕食者のいない緑豊かな島にたどり着いた人もいます。しかし、不運な事にコモドドラゴンのいる島にたどり着いた人もいました。最大全長313cm、最大体重166kgにもなるこのコモドドラゴンによって1974年に成人男性が襲われ食べられた記録があり、コモド国立公園によると1974年以降30人が噛まれ、うち5人が死亡しています。

このように多くの捕食者が特定の地域の人類に大きな影響を与えていた可能性があります。海の近くに住む人々にとって、サメはその証拠を残しており、一部の地域では食べられるという単純な理由で水泳が避けられています。

また、北極圏に住む人々は常にホッキョクグマを警戒しています。

9.ワニ

NobuTamura email:nobu.tamura@yahoo.com palaeocrittiCC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

絶滅したワニが最近、多くのヒト科の化石が収集されているケニアのオルドバイ峡谷で発見され、クロコディルス・アンスロポファグス(Crocodylus anthropophagus)と名付けられました。アンスロポファグスは人間またはヒト科の動物を食べることを意味し、ホモ・ハビリスとアウストラロピテクス・ボシエイの両方の骨格がワニの骨からそれほど遠くない場所で発見されたこともあって、この名前がつけられたのです。これらの骨格にはワニの歯のようなあとがあり、左足が欠けているものがありました。

10.蚊

人口が増加し、新しい技術が開発されるにつれて人類は捕食者を殺したり、他の獲物を食べたりしてきたため、これら捕食者の存在は次第に稀になっていきました。しかし、最終的に最も危険な生物が出現することとなります。

それが蚊です。蚊が媒介する病気の中でもマラリア、黄熱病、デング熱は農業と文明の拡大と共に進化しました。この「人間を最も殺している生物ランキング第1位」の蚊は毎年約72万5千人の人々の命を奪っています。

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