実は人を襲わない動物「クズリ」の生態など

生物

クズリはその体の大きさに釣り合わないほどの凶暴さと強さで知られており自分よりも何倍も大きな獲物を殺したことが記録されています。それにも関わらず、人間を襲ったという報告はこれまでありません。

この記事ではクズリの生態となぜ人間を襲わないのかについて説明しています。

クズリの基本情報

クズリは主に北半球の北方林や亜北極圏、高山ツンドラの奥地に生息しており、カナダ北部、米国アラスカ州、北欧諸国、ロシア西部、シベリア全域に最も多く生息しています。

成体のクズリの体長は65から109cm、肩の高さは36~45cmで体重は通常、オスで11~18kgあり、中型犬ほどの大きさです。これは陸生イタチ科動物の中では最大で、ラッコ、アマゾン川のオオカワウソ、アフリカのツメナシカワウソだけがこれより大きくなります。

クズリは筋肉質な体と強力な手足を持ち、脚は短いですが、大きな5本の指とアイゼンのような長い爪、そしてクマのように踵をつけて歩く蹠行性のため、険しい崖や木、雪に覆われた山を比較的容易に登ることができます。

クズリの食性

彼らは主に腐肉食で、特に冬と早春はエサのほとんどが死肉です。クズリは骨を砕くことができる頑丈な顎と臼歯を持つことから、獲物が凍り付いていても、肉の塊を簡単に引き剥がすことができます。

死肉は自分で見つけることもあれば、オオカミのような捕食者が食べ終わった後に食べることもありあるいは単に他の捕食者から奪うこともあります。

クズリは嗅覚に優れ、獲物のにおいや、オオカミやオオヤマネコの足跡をたどって残骸を漁ることが知られています。

また、強力で多才な捕食者でもあり獲物は主に小型から中型の哺乳類ですが、成体のシカなど、自分より何倍も大きい獲物を殺した記録もあります。

彼らは体の大きさの割に信じられないほど強く、男性2人がかりで持ち上げる必要がある丸太を1匹で動かせるほどの力があるとの記録があります。

獲物となる動物にはヤマアラシ、リス、ビーバー、マーモット、モグラ、ウサギ、ネズミ、トナカイ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、バイソン、ヘラジカなどです。このように、クズリは巨大な成体のヘラジカをも殺すことができますが、これは獲物が病気や怪我、飢餓などで弱っている場合や深い雪で疲労している場合のようです。クズリは真冬の環境で獲物を攻撃する、熟練した技術を持っています。彼らは冬に弱ったり大雪で動けなくなったヘラジカを、木の上から奇襲し、その強力なあごで急所の首に噛みついて捕食するのです。

また、顎に加え、クズリのもうひとつの武器は長く湾曲した鋭い爪でこれは獲物をつかんで放さないのに適しています。

生きた獲物を食べるか死肉を食べるかに関わらず、クズリは貪欲に摂食します。この摂食スタイルは特に冬場の食糧ブソクへの適応であると考えられています。

このような力の強さや貪欲な食欲に加えて、比類のない凶暴さで知られ、クズリは恐れを知らない動物であるといわれています。実際、クマやオオカミなどのはるかに大きな動物からも獲物を守ることに成功しています。

肉食動物をも捕食するクズリ

さらに彼らは捕食動物をも獲物とすることがあり、カナダのユーコン準州ではカナダオオヤマネコを殺したことが記録されています。

また、クズリはイヌワシの生存に脅威を与える数少ない哺乳類のひとつであるようです。スウェーデン北部で成体のイヌワシが抱卵中に、クズリに殺されたのが確認されています。

そして、真実かどうかは疑わしいのですが、クズリがホッキョクグマを殺したという報告さえあります。クズリはクマと一緒に動物園のかこいに入れられると、すぐに攻撃し、クマが窒息するまで喉を締め付けたそうです。

人を襲わないクズリ

このように自分よりも何倍も大きい獲物を倒すことができるクズリは人間を殺すことも十分に可能ですが、幸いなことに現在までに野生でそのような例は一度も起こったことがありません。

これは主に、クズリの持つ性質のためです。クズリの獲物は前述したような動物たちのため
彼らは人間をエサとみなしていません。

そもそも、クズリは主に人間の居住地から遠く離れたコウヤを生息地としているため、彼らに出会うことは非常にまれです。また、クズリは人間を恐れ、安全な距離を保とうとします。彼らの優れた嗅覚は人間が近づく前に、感知できるため、容易に人間を避けることができます。また、夜行性であることも人との遭遇の機会を少なくしています。そのため、昔の毛皮猟師はクズリを捕まえるのに非常に苦労しました。現代の研究者でさえも、何キロも尾行しても発見できないことがよくあります。

また、彼らは前述のようにエサをめぐって捕食動物と戦うこともありますが、ほとんどの場合、ほかの危険な動物を避けようとします。野生動物にとって不必要な戦いは避けるのが最善です。

クズリは獰猛だという評判のため、長い間、ハンターから恐れられてきた肉食動物であり多くの汚名や不当な恐怖に結び付けられてきました。また、ほかの動物が捕らえた獲物を盗むなどのことから狡猾な動物との悪評があります。これまでに、クズリに関する多くの伝説や民話が作られてきました。
彼らは攻撃的で怒りっぽく、仲間を嫌い、目の前を通り過ぎた同種を殺す、凶暴な一匹狼として描写されています。

ただ、これら伝承のほとんどは事実ではなく、誇張されて伝えられています。クズリについては研究不足と広く行き渡った固定観念のために、多くの誤った情報が構築されているのです。

実際、クズリはクマ、オオカミ、ピューマなどの大型の捕食動物に比べると、人間に対する脅威ははるかに少ないです。

しかし、ほとんどの野生動物と同様に、脅威を感じたり追い詰められたり、または子供に危険が及ぶと感じた場合、防御的な行動として反撃する可能性があるため、絶対に近づかないでください。

また、日和見的な捕食者であるクズリは小型ケンや飼い猫をエサとして食べる可能性があります。したがって、クズリがいる地域に引っ越す予定があるかたは、犬や猫は室内で飼うようにし、犬と散歩に行く場合はリードをしっかりと持つようにしてください。

この記事はYouTubeの動画でも見ることができます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました