角のある肉食動物がいない理由

生物

角のある動物といえばサイやシカなどを思い浮かべることが多いと思います。しかし、これらの動物はどれも捕食動物ではありません。それでは、なぜ肉食性の動物は角をもっていないのでしょうか?

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角とは

本来、生物学的には角は奇蹄目の一部や偶蹄目などの哺乳動物に見られる角質または骨質突起のことを指しますが、一般的にはそれに似た円錐形その他の形状の突起を角と呼びます。

角は身を守るためのもので捕食には適していない

哺乳類の角の役割は、まず武器としての使用が挙げられます。頭部にあって上や前を向く角は、やや頭を下げた時に視界方向に突き出す形をとり、天敵から身を守る武器として適しています。これは同時に弱点の喉元を守る防御姿勢にもなります。

例えば、サイの角は骨質の芯がなく、ケラチンの集合体で出来ており、シロサイやクロサイでは最大1.5mにもなります。この強力な角は肉食動物に抵抗する時などに使われ、相手を撃退することができます。

一方大型ネコ科動物やオオカミ、クマなどの大型捕食動物は食物連鎖の頂点に存在する為、その様な防御策を講じる必要がありません。そのかわりに頂点捕食者は狩りの時、強力な筋肉と鋭い牙、そして獲物を捕まえるのに適した爪などを頼りにします。角は向かってくる捕食者に致命的なダメージを与えることができる一方、逃げる相手にはあまり効果的ではないからです。

角は重くかさばり捕食には不便

角は天敵から身を守る以外にも同種内において、集団での地位の確認やメスや餌場の取り合いなど、オス同士の威嚇や喧嘩の武器としても使われます。そのため、大きな角を持つオスはメスを得ることができ、より多くの子孫を残すことができます。

しかし、これは代償を伴います。近年の研究で角の大きいビッグホーンのオスは小さい個体よりも寿命が短い傾向にあることがわかっています。このことから素早く敏捷であることが優先される捕食者にとって大きく成長した角は重くかさばり不便であると考えられます。

角を持つ捕食動物たち

中生代にさかのぼると、アンキロサウルスは楕円形の骨板と骨質のスパイクで構成された鎧を持ち、トリケラトプスは3本の巨大な角を持っていました。一方、肉食のティラノサウルスは防御のためのものは持ち合わせていませんでした。

生物はより有利なものを得るために何かを犠牲にする必要があります。捕食動物は素早く、そして効率的に獲物を捕らえるため、角を持たない傾向にあると考えられます。

しかし、中には角を持った数少ない肉食性の恐竜が存在していました。それが白亜紀後期に現在の南米大陸に生息していた獣脚類の一属カルノタウルスです。カルノタウルスは全長が7.5から10mに達し、主に小型から中型の恐竜を捕食していたと考えられています。カルノタウルスは直訳すると「肉食の雄牛」で、その名のとおり、目の上に大きめの円錐状の角を持っていました。この角については、捕食の際、獲物の体に傷をつけ、それを押し広げる、同種族間での儀式的闘争に用いたなど様々に解釈されていますが、いまだ結論が出ていません。

もっと小さな生き物の中には角のある捕食動物を見つけることができます。東アフリカ原産のジャクソンカメレオンのオスは見事な三本角を持っており、恐竜のトリケラトプスを彷彿とさせる姿をしています。これらの角は縄張り争いやメスの奪い合いの際に使われます。ジャクソンカメレオンは主に小さな昆虫を餌とし、彼らは襲撃できる範囲内に獲物が近づいてくるまでじっと動かずに隠れています。そして、舌を突き出す動作で、最大で自らの体調の2倍離れた獲物を捕食します。

ジャクソンカメレオンほど立派ではないにしても、蛇やトカゲなどではトゲトゲした鱗の装飾で頭を飾っている種がいくつか見られます。彼らは哺乳類と違い、エサを捕まえる方法によっては角があるほうが有利となる場合があります。

角を持つ捕食性爬虫類の研究

研究者らは、学術雑誌”Biology Letters”で角のあるトカゲやヘビの圧倒的多数が獲物を追いかけるのではなく、待ち伏せして襲うと報告しています。角やその他の突起物はほとんど動かない生物にとってカモフラージュになる一方、より活動的な種にとっては獲物や捕食者にその持ち主の存在が見つかってしまう可能性が高くなると科学者らは述べています。

トカゲやヘビなどの有鱗目は進化の過程で頭頂部や鼻先に何度も角を発達させてきました。研究者らは有鱗目の進化樹にマッピングし、この突起が約69回それぞれ独立して進化したことを発見しています。

これまでの研究において、角には求愛、防御または天敵から発見を逃れるために身体の輪郭を隠すなど、さまざまな機能がある事が示唆されてきました。しかし、ベルギーのアントワープ大学の爬虫類学者フェデリコ・バンフィ氏らは狩りをする時によく動き回る種にとって角によるカモフラージュは役に立たないのではないかと考えました。

角によるカモフラージュが役に立っていない場合、または角が生物の動きを妨げる場合、より活動的な種では突起が進化しない可能性があります。そこで、バンフィ氏らは有鱗目を分類したデータをまとめ、1939種の異なる種のうち175種が角を持つ種であると結論付けました。

そして、この角のある175種のうち164種(全体の94%)が比較的静止した待ち伏せ型のハンターで、わずか11種(全体の6%)が活動的な捕食者であることを発見したのです。

このように、活動的な捕食者よりも待ち伏せ型の捕食者において角がはるかによく見られます。そのため、バンフィ氏らは角は一部の種にとってはメリットとなるかもしれませんが、他の種にとっては負担となるかもしれないと語っています。

まとめ

哺乳類の頂点捕食者の多くは獲物を追いかける必要があり、もし角があると目立ちやすく獲物に見つかる可能性が高くなります。このような理由からも、哺乳類では総じて角のある捕食者がいないのだと考えられます。

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