地球上のさまざまな生態系に生息するノネコは、世界で最も侵略的な外来種のワースト100に数えられており、哺乳類や鳥類、爬虫類の種の減少や絶滅の原因になっていると報告されています。
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そして驚くべきことに、キューバではワニを捕食していることが最近の研究で分かったのです。それではネコがどのようにワニを狩っているというのでしょうか?
キューバの生態系
キューバの国土は長さ1250kmで、本島のキューバ島及び1600あまりの島々から構成されています。このキューバの自然は世界的にあまり知られていませんが、信じられないほどの美しさと豊かな生物学的多様性を誇っており、群島には1万3千種以上の生物が生息しています。
キューバの気候は熱帯性海洋気候で、夏の平均気温は27℃ですが、年間を通して貿易風が吹くため、暑い夏も比較的しのぎやすく、11月から4月の平均気温は20℃を下回ることはありません。この気候の良さと海岸、山岳地域、ジャングル、サバンナなどの生息地の多さが、生物の多様性に寄与し、多くの固有種が生息しています。
キューバワニ
キューバワニもその固有種のうちのひとつです。キューバワニ(Crocodylus rhombifer)はクロコダイル属に分類されるワニの一種で、魚、リクガメのような爬虫類、サギなどの鳥類、カリブ海周辺に生息するげっ歯類であるフチアなどの哺乳類を捕食します。
このワニは最大全長が350cmになり、非常に好奇心旺盛で攻撃的な気質と、水面から高く跳び上がる能力を持つなど、ほかのワニには見られない特徴があります。また、キューバワニは非常に古い系統のワニで、その固有の生態系で重要な役割を果たしています。
しかし、このワニはかつてキューバ島及びその周辺の島嶼に広く分布していたのですが、農業による生息地の破壊などにより生息数が激減しており、現在、キューバ国内のふたつの湿地に棲息するのみとなっています。この生息範囲は非常に狭く、約776km2で、これはクロコダイル属の中でも最も狭くなります。
このように個体数が減少しており、野生では3000から5000匹しか残っていないと推定されています。
その一方で、キューバ島にあるサパタ沼では本種とアメリカワニを一緒にかこいを設けて保護した結果、種間雑種が現れ、遺伝子汚染が懸念されています。また、もう一方のフベントゥド島のラニエル沼では人為的に移入されたメガネカイマンによる幼体の捕食が問題になっています。
さらに、ネコがこのキューバワニにとっての新たな脅威となっています。ネコがこの攻撃的なワニに影響を与えることは不可能のようですが、実際にはあり得ることなのです。
ノネコによるキューバワニの捕食
サパタ沼クロコダイル繁殖農場ではでは毎年500匹ほどのキューバワニを屋外の囲いのある農場に放し、繁殖のため飼育しています。この農場では2022年10月から11月にかけてをネコの捕食により、生後4か月ほどのキューバワニ145匹が失われました。
農場の管理者は最初、ワニの頭と尾の破片を囲い地へ向かう道路で見つけ、その後、多くの死骸を囲い内で発見しました。そして、研究者が現場を観察し、地面にマーキングの跡と、囲いの網に毛がついていたことから、この周辺にノネコがいると推測しました。
そのため、研究者は施設周辺の森林に最も近いふたつの囲いからワニを移動させ、犯人を特定するために数日間カメラトラックを設置しました。すると、写真には囲いの中に成猫が写されていたのです。
カメラの記録した時間からネコは1日2回(18:00~20:00と1:00~2:00に)、ワニを狩ることを好むことが分かりました。この時、残念ながら写真では囲いにいるのが1匹なのか、複数なのかを判断することはできませんでした。ただ、一晩で捕獲されたワニの最大数は15匹のため、ノネコは2匹以上いたと推測されます。
さらに農場の警備員は成猫1匹と若いネコ数匹が餌を食べているのを目撃しており、よく調べたところ、そのエリアでもワニの破片を発見しました。
こうして犯人が特定されると非致死性の罠が仕掛けられ、ネコ7匹が捕獲されて農場から除去されました。そして罠の設置が始まってから1ヶ月後、農場でのワニの捕食はなくなりました。
自然生態系への外来種の侵入は、ペットや害獣駆除のため持ち込まれた結果起こる可能性があります。サパタ湿地国立公園内では科学薬品を使用する代わりに、ネズミの蔓延を制御するためにネコが農場に導入されていました。
この場所でノネコがワニを襲う事例は、今回発覚したのが初めてです。ただ、以前にもキューバワニの幼体がいくつか失われたことがあり、そのためノネコが関係していた可能性があります。
野生下でノネコがキューバワニを狩ることはあるか?
ネコがワニを狩るようになった原因はわかっていません。しかし、今回のような農場ではなく、ノネコとキューバワニが共存する自然界で、同様の事例が発生する可能性が考えられます。
自然界におけるキューバワニの保護にとって重要ないくつかの場所ではノネコの目撃例があります。例えば、キューバワニの野生個体群の中心地であるZanja del Diezでは、2010年のワニ調査中に野生のネコの成体が観察されました。飼い猫の中には20世紀前半にZanja del Diez付近に人間の居住地が確立されたときに導入されたものがいると考えられています。
キューバワニが積極的に再導入されているもうひとつの場所である、ハナバナ動物保護区でもノネコの存在が確認されています。この動物保護区は複数の地元コミュニティに近いためネコがこのエリアにアクセスすることは可能です。
これらの生態系でノネコが見られるのは、飼い猫がさまざまな生息地に適応できることと、その行動範囲の広さに関係していると考えられます。
ワニ類には主に水の中で生活したり、母親が子供の世話をしたりするなど、陸生捕食者から身を守るいくつかの特徴があります。さらにキューバワニは攻撃的であるだけでなく、現生ワニ類の中で最も陸を好むワニであり、時速16km前後でのギャロップが可能で、狩りさえも大地を駆けることで行うことがあります。
したがって、キューバワ二は多様な種を狩る万能な野生ネコであっても厄介な存在です。
ただ今回、ノネコはキューバワニのある特定のライフサイクルを狙いました。キューバワニは孵化後、数ヶ月になると母親から離れ始めます。その間、ワニはまだ比較的小さく、捕食されるリスクが高くなるのです。
また、限られたこの中で大量に飼育されていたため、比較的ワニを捕えやすかったと考えられています。
そのため、ノネコが野生のキューバワニに与える影響をより適切に評価し、駆除する必要があるかどうかを判断する必要があると、研究者は考えています。
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