現在、世界各地で野生化した猫が外来種として生態系に影響を及ぼしており、特に島嶼域の希少種や固有種への被害が大きくなっています。このネコは驚くべき事に南極地域にも進出しています。彼らは過酷な環境に適応し、独自の生態を持ち、携帯も変化しました。それでは、どのような変化があったのでしょうか?
絶海の孤島「ケルゲレン諸島」
南インド洋の南極圏に位置するケルゲレン諸島は地球上で最も隔絶された場所のひとつです。この300の島々からなる群島はオーストラリアから約4000km、アフリカから約3800km、そして南極大陸からでさえ2000kmも離れています。
ケルゲレン諸島はいわゆる「狂う50度線」に位置しており、風が大変強いことで知られています。それに加え、寒冷、険しい地形など厳しい気候と不毛で住みにくい環境のため、「荒涼諸島」とも呼ばれています。
このような過酷な条件にも関わらず、1772年にフランスの探検家イヴ・ジョセフによって発見されて以来、この島々は探検、科学的研究などにおいて豊かな歴史があります。
また、ケルゲレン諸島は18世紀に発見されて以来、捕鯨船やアザラシ漁の中継地でもありました。19世紀にはこの群島が孤立していることと先住民が居なかったことから、これらの産業にとって理想的な場所となり、今日までフランスの海外領土となっています。
ただ、これまでに何度か定住が試みられてきましたが、現在研究者以外の永住者はいません。
最初のケルゲレン諸島の居住地は1950年代に設立されました。この場所は主に科学研究を目的として作られ、島の主要な港であるフランセ港が建設されました。ケルゲレン諸島は南に位置することからそれ以来、地球物理学と気象学の研究の拠点として機能してきたのです。
ケルゲレン諸島の外来種
そしてこのケルゲレン諸島には何世紀にも渡って意図的、または偶然に様々な種が持ち込まれてきました。これらの種にはウサギ、げっ歯類、トナカイ、そして飼い猫が含まれます。これらの動物の導入は在来の動植物に重大な影響を及ぼし、生息地の破壊と在来種の減少につながりました。
19世紀に捕鯨者やアザラシ漁師の食糧源として導入されたウサギは、特にケルゲレン諸島の主島であるラ・グランド・テールで急速に増加しました。このウサギの放牧習慣は深刻な土壌侵食と在来植物の破壊を引き起こし、その次にそれらの植物を餌とする他の種に影響を及ぼしました。
ウサギと同様にドブネズミやハツカネズミなどのげっ歯類はおそらく船とともに偶然持ち込まれたものです。これらのげっ歯類は特に地上に巣を作る鳥などの在来の種を捕食し、その結果、これらの種の個体数は減少しました。
トナカイは20世紀初頭に食肉生産のために導入されました。トナカイの生息地も当初は狭い地域に限定されていましたが、ケルゲレン諸島全体に広がり、過放牧と生息地の劣化の問題をさらに悪化させました。
ケルゲレン諸島のノネコ
しかし、ケルゲレン諸島への生態学的影響という点で、これらの導入種の中で最も重大なものはおそらくノネコです。ケルゲレン諸島には初期の移住者によって既にネコが持ち込まれていました。そして他の島々の状況と同様に、ネコはこの島々の広大な土地にすぐに適応しました。ラ・グランド・テールの面積は6675km2あり、これは東京都の面積のおよそ3倍の広さもあります。
ノネコという名称は、野生化したネコを指し、街中や住宅地で地域の人々からエサをもらったり、ゴミをあさったりする野良猫とは違い、野生環境において自力で生きていく能力を持っています。
ケルゲレン諸島の環境に適応したノネコは過去数世紀にわたって頂点捕食者となり、ケルゲレンミズナギドリやアオミズナギドリを含む在来の海鳥を捕食しており、その個体数に壊滅的な打撃を与えています。
オーストラリア、ニュージーランド、ハワイ、その他オークの島の生態系で見られるように。これらの最大の生物は、明らかにネコ科の捕食者に対する防御能力を持ち合わせていません。
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島に適応し生態を変化させたノネコ
研究者によると、ケルゲレン諸島に導入されたノネコは過去数世紀にわたって急速に進化しており、海鳥、ウサギ、げっ歯類を捕食する専門のハンターになったといわれています。
そして特にネコはケルゲレン諸島のアホウドリの個体数の動態に大きな影響を与えています。2024年2月18日、科学誌エコスフィアはラ・グランド・テール北東部にあるクーベル半島のアホウドリのコロニーでは、その生存にネコの全体の個体数ではなく、雛狩りに特化した個体の存在に依存していることを示す研究を発表しました。これは非常に特殊化したノネコがアホウドリの雛を捕食すること覚えたことを意味します。
これらのネコは冬に備えてより肉付きの良くなったアホウドリの雛を、親鳥が海に出た時に襲います。
形態的にも変化するノネコ
アホウドリを餌とするノネコの中には体重がほぼ5kgもある大型の個体もいます。これは飼い猫の平均体重が3.2kgから4.5 kg程のため、少し大きいくらいと思うかもしれませんが、通常、ノネコはエサに恵まれた飼い猫よりも小型になるのが一般的です。
1990年にはノネコの数は7000匹と推定され、多くの海鳥が犠牲になっていました。ただし、それは小型の鳥に当てはまったことでしたが、約30年後の2014年と2017年の調査では、大型の鳥にも当てはまるようになってきていることがわかっています。
さらにこの研究はネコの頭蓋骨と顎の骨格が強化されていることも示しています。
これらのネコは活動していないときは小さな岩の洞窟に隠れています。そして、その洞窟には鳥の羽や骨などが散らばっていました。
その他、島のネコは昼夜を問わず活動し、150ヘクタールの領域をパトロールし、草むらでネズミを捕まえ、ウサギが巣穴から出てくるのを待ち伏せして捕食しています。
ケルゲレン諸島のノネコは別の種へと進化するのか?
ケルゲレン諸島は極度に遠隔地にある環境が厳しいためノネコの個体数を制御する取り組みは困難を極めています。政府による根絶プログラムが提案されていますが、島でそのようなプログラムを実施するのは、アクセスの困難さからほぼ不可能で、そのためノネコは繁栄し続けると考えられます。
イエネコの祖先はすべて中東の砂漠などに生息していたリビアヤマネコで、現在、さまざまな品種のネコがいますが、全て同じ種です。これはノネコにも同じことがいえ、イエネコとノネコの遺伝学上の違いはありません。
ただ、1000年初頭頃にフランスのコルシカ島に導入され、野生化したと考えられているキツネネコは、2023年1月の遺伝子解析により、イエネコの系統には属さないことがわかり、フランス生物多様性局はキツネネコをコルシカ島の固有種であると発表しました。
それではケルゲレン諸島のネコも現在進行中とされる進化の軌跡を辿り続け、最終的にはイエネコと別の種類に分類される日がくるのでしょうかくるのでしょうか?そして、さらに大きな獲物を狩るような動物へと変貌するのでしょうか?
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