欧米で爆増する竹(タケノコ)が食べられていない理由

植物

日本では竹は身近な存在であり、タケノコは食卓にもよく登場します。また、春になるとタケノコ狩りを楽しむ文化も根付いています。一方で欧米では現在、竹は庭や住宅にまで侵食する厄介な植物として問題視されています。欧米ではこの竹を食べる習慣がほとんどありません。それではなぜ、これほどまでに竹があちこちで増え続けているにもかかわらず、この素晴らしい食材が活用されないままなのでしょうか。せっかく目の前に旬の味覚が溢れているのに、食卓に並ばないのは実にもったいない話です。この記事では、欧米で増え続ける竹が食べられていない理由について解説しています。

この記事の要約

  • 欧米で問題視されている竹(ホテイチクなど)は本来食べられる植物だが、観賞用として持ち込まれたため「食べるもの」という文化的認識がなく、スーパーでも流通していないため活用されないまま増え続けている。
  • 北米にはリバーケーンという在来の竹があり、先住民はタケノコを食用にしていたが、ヨーロッパ人の入植による農地開拓や家畜の放牧、野焼き慣習の断絶によってほぼ消滅し、竹を食べるという知識も受け継がれなかった。
  • 日本でも過疎化・高齢化による管理者不足で放置竹林が深刻化しており、欧米同様「使い続けること」なしには竹の拡散を抑えられないという共通の課題を抱えている。

竹とはどんな植物か

Houzeau, Jean-Charles, 1820-1888, No restrictions, via Wikimedia Commons

竹はイネ科・タケ亜科に属する植物で、草と木の中間のような非常に珍しい性質を持っています。竹の姿を特徴づけているのは、何よりも「稈(かん)」と呼ばれる中空の茎です。稈の表面は硬く滑らかで、ケイ酸を含むため光沢があります。稈は節と節の間が筒状に伸び、節には横方向に強い繊維が走っています。また、節には枝を出す芽があり、そこから細い枝が広がって葉をつけます。内部は空洞ですが、節ごとに隔壁があるため強度が保たれています。この中空構造は軽さを生み、強風に対してもしなやかに揺れて折れにくい性質をもたらします。竹が「折れずにしなる」植物として象徴的に語られるのは、こうした稈の構造によるものです。

木が年々少しずつ幹を太くしながら成長するのとは違い、竹は地面から芽を出したタケノコがわずか数週間のうちに最終的な高さまで一気に成長し、その後は幹が太くなることがありません。モウソウチクにいたっては一日に1メートル近く伸びることもある、驚異的な成長力を持つ植物です。

竹がこれほどまでに早く成長できるのは、タケノコとして地中にいる段階で、すでに成長に必要な細胞をほとんど準備しているためです。地上に顔を出す前のタケノコの内部には、節や節間、将来の枝や葉の基礎となる細胞がぎっしりと詰まっており、地上に出てからはそれらの細胞が一気に伸びるだけで形が完成していきます。さらに、竹の節間には水分と栄養を送り込むための通道が発達しており、地下茎から供給される大量の養分が、まるでポンプで押し上げられるように稈を一気に押し伸ばします。また、竹は光合成だけに頼らず、地下茎に蓄えたデンプンを一気に消費して成長するため、天候に左右されにくく、短期間で爆発的に伸びることができます。

竹と笹は同じイネ科・タケ亜科に属する植物ですが、別々の系統に分かれて進化してきた存在です。竹は主にトウチク属やマダケ属、ホウライチク属といった「竹類」に分類され、硬く発達した太い稈を持ちます。一方、笹はササ属やメダケ属などの「笹類」に属し、竹よりも小型です。竹は稈が太くて硬く、成長すると幹を包んでいた皮が自然に落ちますが、笹は稈が細く、皮が枯れても落ちずにそのまま残るのが特徴です。生育場所も異なり、竹は里山や人の手が入った場所に多く、笹は山の林床や斜面の下草として広く分布しています。

竹を語るうえで最も重要なのが、地下茎の性質です。竹には大きく分けて二つのタイプがあります。ひとつは「ランナー型」で、地下茎が横方向に伸び続け、元の株から数メートル、場合によっては十数メートル以上離れた場所から新しい芽を出します。もうひとつは「クラスター型」で、株の中心から少しずつ外側に広がるだけで、急速な拡散は起こりません。欧米で問題となっている竹の多くはランナー型であり、地下茎が広範囲に広がることで制御が難しくなっています。竹の本来の生息域はアジアを中心に、アフリカの一部、オセアニア、そして中南米まで広がっており、世界には1,600種以上の竹が存在するとされています。


アメリカにも在来の竹があった

Chris Light, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

竹といえばアジアのイメージが強いですが、北アメリカにも在来の竹があります。「リバーケーン」はかつてアメリカ南東部から中西部にかけての広大な地域に、「ケーンブレイク」と呼ばれる密生した竹林を形成していました。その規模は、かつて数千平方キロメートルにも及んだとされています。

リバーケーンはチェロキー族やチョクトー族、クリーク族をはじめとする多くの先住民族にとって、欠かせない植物でした。道具や武器、工芸品、建材など、生活のあらゆる場面で幅広く活用されていたのです。そして食用としても重要な役割を果たしており、春になると地面から顔を出す若いタケノコは、加熱して食べられていたという記録が残っています。アジアでのタケノコ食文化と同様に、北米の先住民たちも竹の新芽を季節の恵みとして利用していたのです。

ケーンブレイクはまた、食料を得る場としても欠かせない存在でした。竹林にはシカやシチメンチョウなどの野生動物が集まるため重要な狩猟の場となっており、タケノコそのものだけでなく、獣や鳥を通じた間接的な食料供給源としても機能していました。さらに洪水を防ぎ水辺を安定させる自然の護岸としての役割も担い、川魚を安定して得られる漁場の維持にも貢献していました。

しかし、17世紀以降にヨーロッパからの入植者が増えるにつれて、リバーケーンを取り巻く環境は急激に変化していきます。最大の打撃となったのは農地の開拓です。ケーンブレイクが広がる沖積地や川沿いの低地は土壌が肥沃で農業に適していたため、入植者たちは次々とこれらの竹林を切り開いて農地へと変えていきました。綿花やトウモロコシの栽培が拡大するにつれて、かつて広大な面積を誇ったケーンブレイクは急速に失われていきました。

さらに、入植者たちが持ち込んだ家畜も大きな影響を与えました。ウシやブタがケーンブレイクに放たれると、若いタケノコや葉を食べ尽くしてしまい、竹林の再生が妨げられました。加えて、先住民族がおこなっていた定期的な野焼きの慣習が失われたことも見逃せません。ケーンブレイクは適度な火入れによって更新・維持される性質があり、先住民たちはこれを経験知として活用していましたが、入植者たちはこの慣習を継続せず、竹林の自然なサイクルが断ち切られました。

その結果、かつてはアメリカ南東部の景観を特徴づけていたケーンブレイクは、現在ではもとの面積のわずか2〜3%程度しか残っていないとされています。リバーケーンの喪失は、それに依存していた動植物の生息地の消滅をも意味しており、今日では各地でその復元に向けた取り組みが進められています。

こうした自然環境の改変は、決して欧米だけに限った話ではありません。例えば日本でも、開発や農地拡大、森林利用の変化によって本来の植生が大きく変えられてきました。北海道では、アイヌの人々が自然と共存しながら利用していた環境が、近代以降の開拓によって大きく失われていった歴史があります。


日本における竹の利用

では一方で、竹と深く関わり続けてきた地域では、どのように利用されてきたのでしょうか。日本人と竹の関係は非常に古く、縄文時代にさかのぼります。712年の古事記にはタケノコを食用として利用した記録があり、当時はマダケやハチクが主に使われていたと考えられています。

日本で今最も一般的な食用竹であるモウソウチクは、実はかなり後になって中国から持ち込まれた外来種です。中国の江南地方が原産で、諸説あるものの、江戸時代に持ち込まれたものが全国に広まったと考えられています。現在の日本ではモウソウチクのほかにも、マダケ、ハチク、ネマガリダケ、そして南九州で古くから食べられているホテイチクなど、複数の種類のタケノコが食用にされています。地域によって旬の時期が異なり、モウソウチクは3〜5月、マダケは5〜6月、ホテイチクは4月下旬から5月上旬が採れる季節です。

タケノコ狩りは主にモウソウチクの竹林で春先に行われ、地域によっては観光農園として一般に開放されている場所もあります。タケノコを見つける際は、地面のわずかな盛り上がりや表面の色の違いを手がかりにします。頭が大きく出ているものより、土の中に隠れている若いもののほうが柔らかく、食用として適しています。収穫したタケノコは時間が経つほどアクが強くなるため、持ち帰ったらできるだけ早く下処理を行います。美味しく食べるためには、米ぬかや重曹を加えて長時間下茹でし、アクを抜く工程が必要です。食べ方は多彩で、若竹煮、炊き込みご飯、お吸い物、木の芽和え、天ぷら、炒め物など、春の和食には欠かせない食材といえるでしょう。

東アジア全体でも広く食べられており、中国では炒め物や煮込みに、台湾・韓国・ベトナムでも日常的な食材として親しまれています。中華そばに入るメンマも、マチクのタケノコを茹でて乾燥・発酵させたものです。竹は食材としてだけでなく、かごや箸などの日用品、農具、建材、弓や釣り竿など、食用以外にも幅広く活用されてきました。


欧米に竹が持ち込まれた経緯

Acabashi, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

19世紀初頭以降、ヨーロッパや北アメリカの各地にある植物園では、アジア原産の竹の導入が始まりました。1826年にはキューガーデンが初めてクロチクを受け入れ、これを契機に、科学的・観賞用・異国趣味的な関心から竹の収集と栽培が急速に広がっていきました。その後、竹は家庭の庭にも植えられるようになり、観賞用や生け垣、目隠しとして利用され、特に1990年代後半から2000年代にかけて一般家庭にも広がりました。

しかし、数年経つと地下茎が横方向に広がり、隣家の庭や建物の基礎、舗装された地面の下にまで侵入する問題が表面化しました。イギリスでは隣接地への拡散による除去費用が数百万円規模に達するケースも報告されています。現在問題視されているホテイチクやクロチク、ヤダケなどは非常に強靭な地下茎を持ち、アスファルトや排水管を破壊してしまうことから、「the Next Japanese Knotweed(第2のイタドリ)」と呼ばれるほどの厄介な存在とされています。

生態系への影響も深刻です。ホテイチクは在来植物を圧迫して密生した単一種の群落をつくり、在来種の多様性を損なわせます。アメリカでは南部から北東部にかけての多くの州で定着が確認されており、米国農務省は高リスクと判定しています。一度侵入した竹林が作る厚い落ち葉の層は、周辺の水生環境にまで悪影響を与えます。


なぜ食べないのか

欧米で最も問題視されているホテイチクは、中国原産の竹で、中国ではその属の中で最も甘い味を持つとして食用栽培されている品種です。また、日本の九州南部でも「コサンダケ」と呼ばれ、春の定番食材として昔から食べられてきました。つまりホテイチクは食べられない竹ではまったくなく、適切に処理すれば美味しく食べられる竹なのです。

それでも欧米でホテイチクが食べられることはほとんどありません。これは、食べるものという認識がそもそもないためです。竹は最初から庭木・観賞植物として持ち込まれ、食材としての文脈が最初から存在しません。そのため、一般的なスーパーマーケットで生のタケノコが販売されることはまれで、料理本でも頻繁に取り上げられる食材ではありません。アジア系の食料品店に缶詰のタケノコが売られていても、それが庭に生えているあの困った植物と同じだとは、ほとんどの人が気づきません。

ネイティブアメリカンたちはリバーケーンを食材として利用していましたが、かつてあったタケノコを食べるという知識は入植者に受け継がれませんでした。西洋にはもともとタケノコを食べる文化がなかったため、リバーケーンの食用知識も、その管理の技術も、植民地化の過程で失われていきました。19世紀にアジアから新たな竹が持ち込まれたとき、すでに竹を食べるという文化的な土台はアメリカに存在していなかったのです。

また、庭や住宅地に生えている竹のタケノコを採取して食べることは、一般にはあまりすすめられていません。住宅地や庭に広がった竹は管理のために除草剤や農薬が使われている場合があり、見た目では安全かどうか判断することができません。そのため、たとえ食べられる種類であっても、安全性が確認できない限り気軽に食用にすることが難しく、「食べて駆除する」という方法が広く定着しにくい要因となっているのです。


日本でも起きている放置竹林問題

日本でも竹林の管理は今、深刻な危機にあります。農村の過疎化と高齢化によって竹林を管理する人が減り、放置竹林が各地で広がっています。地下茎は毎年数メートルずつ横に伸び、春になると一斉にタケノコが発芽します。そのタケノコを収穫せずに放置すれば竹になり、さらに地下茎が広がります。かつてタケノコを採りに里山に入っていた人々がいなくなると、竹は制御を失って周囲の広葉樹林や農地へと侵入し始めます。密生した竹林の内部は光が届かず、他の植物は育ちません。また、放置竹林では地下茎が枯れて保水能力が失われ、大雨のたびに土砂災害のリスクが高まるとも指摘されています。竹を資源にとどめておくには、継続的に使い続けることが不可欠なのです。


竹の一斉開花について

Joi Ito from Inbamura, Japan, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

竹には、一定の周期で一斉に開花し、その後一斉に枯死するという特徴があります。竹は通常、何十年もの間は花を咲かせませんが、数十年から百年に一度、株全体が一斉に花を咲かせ、種をつけ、そのまま枯れます。モウソウチクではおよそ60〜120年のサイクルといわれます。

ただ、欧米に植えられた竹は一斉開花したからといって、すべて枯れて自然に消えることはありません。多くの場合、園芸用に輸入された竹はクローン株であり、さらに地下茎で広がるランナー型が多いため、開花後に株が枯れたとしても地下茎が残れば竹は増え続けます。品種や植えられた時期が異なることも多く、全体が同時に枯れることはないのです。


駆除の試み

XIIIfromTOKYO, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

欧米では竹の駆除は各地で試みられていますが、その方法はどれも簡単なものではありません。竹は地下茎で広がるため、地上に出ている部分を刈り取るだけではほとんど効果がなく、地中に残った地下茎から何度でも再生してしまいます。

まず行われるのが、土ごと掘り返して地下茎を取り除く物理的な方法ですが、これは大規模な工事になりやすく、住宅地では大きな負担となります。より一般的なのは、刈り取りと再生の抑制を何年も繰り返す方法です。地面すれすれで竹を切り、新しく出てくる芽もその都度刈り続けることで、地下茎に蓄えられた養分を徐々に消耗させていきます。しかし竹は非常に生命力が強く、わずかな地下茎が残るだけでも再生するため、この作業は数年単位で続ける必要があります。

除草剤を併用する方法も広く行われており、切り株に薬剤を塗布したり、葉から吸収させて地下茎まで枯らしたりします。ただしこれも繰り返し処理が必要で、環境への影響が懸念される場所では薬剤の使用が制限されることもあります。実際の現場では、こうした方法を組み合わせながら長期間にわたって管理が行われており、完全に駆除するまでに5年から10年かかるケースも珍しくありません。


参考:Bamboo – GKToday

Bamboo History Timeline: From Ancient Traditions to Modern Innovation

竹の歴史/八女市ホームページ

旭川地域のアイヌの伝統的生活空間の再生に関する基本構想 はじめに | 旭川市

Homeowners Beware of Invasive Bamboo! – Lawson West

How to Identify Invasive Bamboo | Expert UK Guide

EPPO Alert List – Phyllostachys aurea (Poaceae)

The global distribution of bamboos: assessing correlates of introduction and invasion – PubMed

Rivercane: Our Native Bamboo (U.S. National Park Service)

Bamboo And The Law in the UK: Everything You Need To Know | Lawhive

Bamboo And The Law In The UK

【研究成果】ハチク(淡竹)が120年ぶりに開花!?東広島市内で開花後を初めて追跡調査~竹林再生の謎を解明する手掛かりに~ | 広島大学

CA’s Approach to Invasive Bamboo Removal – Columbia Association

Eradicating Bamboo – Piedmont Master Gardeners

On the Lookout for Non-Native Invasive Plants: Golden Bamboo – Madison County Center

コメント

タイトルとURLをコピーしました