急速に進化するオーストラリアのノネコが巨大化している

生物

オーストラリアでネコは最も侵略的な生物のひとつとして問題になっています。この国でノネコの個体数はその急速な繁殖率のために爆発的に増加し、現在推定200万から600万匹いると言われています。これはネコ自身のせいではなく、彼らがオーストラリアの環境にうまく適応したからです。このネコは飼い猫と比べて身体的特徴と行動的特徴の両方で大きく変化しています。それでは、その変化とはどのようなものでしょう?

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オーストラリアの生態系

先史時代から現代に至るまで、世界のあらゆる場所のあらゆる主要生態系は、ネコ科動物によって支配されてきました。ただ、注目すべき例外があります。それがオーストラリア大陸です。オーストラリアではネコ科動物を含む有胎盤類がニッチを占める他の大陸とは違い、カンガルーやらコアラなど有袋類がニッチの多くを示しています。

そして、この大陸では現在までティラコレオ、タスマニアタイガー、タスマニアデビルなど有袋類の捕食動物はすべて絶滅しています。それが、約3000年前におそらく南アジアまたは東南アジアの海洋出身の人々が、半野生のイヌ科動物を連れてきました。この生物は、DNA分析により東アジアのオオカミと近縁であることが証明されています。そしてその子孫はオーストラリアの野生に適応し、現在はディンゴとして知られています。

ネコの導入

それから数千年後の18世紀、ヨーロッパの入植者がオーストラリアに押し寄せ、それとともにロバ、ウサギ、ヤギ、ウマなど数え切れないほど多くの有胎盤類が導入されました。そして導入された動物の中には脆弱な生態系をうまく利用した2種類の捕食動物がいました。

それがアカギツネネコです。

オーストラリアの生態系はすでに頂点捕食者であるディンゴの存在に適応していた為、キツネのようなイヌ科動物に対してはある程度対応ができました。

しかしネコのような非常に効率的な待ち伏せ捕食者に対処する準備はできておらず、そのためのネコはこれら固有種を脅かす最大の脅威になっています。

人間によって持ち込まれたネコは、オーストラリアのアウトバックにたどり着きました。アウトバックとはオーストラリアの未開地や人里離れた土地を指す言葉であり、特に内陸部や遠隔地を出します。ここは地球上で最も住みにくい場所のうちのはとつでしたが、それでも彼らは生き延びました。

そのネコはこのディンゴやキツネが分布を広げていない場所にうまく適応したのです。

ノネコとは

Silverfinch5CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

ノネコことは、自然環境において人との共生や関わりを一切必要とせず生活するネコであり、いわゆる野良猫や飼い猫ことは一線を画す存在です。

民家の近くに住み、ゴミ箱を漁るような野良猫とは違い、オーストラリアにおけるノネコは完全にブッシュの中に生息する、人間に対して非常に警戒心が強い野生動物です。

ノネコによる被害

ノネコにとって狩ることができる哺乳類の数は非常に多く、それ以来、彼らはオーストラリアの27種の在来動物を絶滅に追い込み、更に1124種が絶滅の危機に瀕しています。また、毎年これらのネコはオーストラリアで11億匹の哺乳類を殺していると言われています。

そのため、彼らは国内で最も危険な害獣のひとつとされ、2024年、オーストラリア政府はノネコを退治するため6000万豪ドル(約58億円)以上の国家予算を拠出すると発表しています。

巨大化するノネコ

Mark MarathonCC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

このオーストラリアのノネコの中にはものすごく巨大化しているものがいます。

通常、世界の他の地域のネコは、ペットのネコよりも小さくなります。これは毎日決まった時間に飼い主にエサを与えられていないからです。これに対し、アウトバックのネコの獲物は無限にあり、しかもその獲物はワラビーやカンガルーなどのように大きなものです。

アウトバックのネコの獲物は他の地域のように小型の齧歯類や鳥に限定されていません。そのため大きくなればなるほど、捕食者としてより効果的になります。

さらに、アウトバックには彼らの天敵となる大型の陸上捕食者が居ないため、潜在的な危険から隠れるための小さくなる選択圧がかかりません。

このようなことから、オーストラリアのネコの体重は10キロ以上になり、中には15キロを超えるものもいます。これは中型犬に匹敵する重さです。

メガキャット

先述したようにノネコによる生態学的影響は充分に文書化されています。一部の生物学者たちはオーストラリアのノネコをメガキャットと呼んでいます。これはオーストラリアのネコが飼い猫とどれほど大きく異なるかを人々に返してもらうためで、この区別を広く知らしめることにより、飼い猫を愛する人々を含む国際的な批判を減らし、在来種の保護を確実にする目的があります。

クイーンズランド州の国立公園に生息するノネコはワラビーを主に狩っています。ワラビーは平均の体重が概ね25kg以下のカンガルー類で、この動物を狩る為にネコは非常に大きなアゴ、頭蓋骨、そしてそれに付随する筋肉組織を持っています。

この地域のネコは何世紀にもわたってワラビーほどの大きさの獲物を狩ってきた結果、全く新しい獣に生まれ変わったようで、人々はこのような巨大な猫に慣れていません。

謎のヒョウの目撃例

そのため、オーストラリアでノネコと見間違えたと思われるミステリアスなヒョウの目撃情報が時々寄せられています。

2005年、ある猟師は、尾の長さだけで60cmもある巨大なネコ科動物を撃ちました。推定1.5mのこの個体は飼い猫の約2倍の長さがあります。

ノネコは飼い猫と同じ種

ただ、この動物はヒョウなどではなく、ましてや完全に新しい種に進化したわけですらない、通常のペットの猫と同じ種です。

それではこの土地のネコはオーストラリアの在来野生動物のリストに加えられる日が来るのでしょうか?

アジア原産のディンゴは現在ではオーストラリア本土全体に生息範囲を広げています。このディンゴが犬であるかどうかについて激しい議論がなされてきました。彼らはオオカミと飼い犬の中間のような存在ですが、オーストラリアの環境に合わせて進化し、今では元のアジアの犬とはかなりことなっています。

現在の分類学ではディンゴはCanis lupus dingoとしてイエイヌとは別のタイリクオオカミの一亜種と見なされています。

では、ネコはどうでしょうか?

マダガスカル・フォレスト・キャット

オーストラリアのようなノネコは他の場所でも記録されています。

マダガスカル・フォレスト・キャットはおそらく千年以上前にアラビアの貿易船からマダガスカル島にやってきた飼い猫の子孫だと言われています。彼らはオーストラリアと同様に飼い猫よりもかなり大きく独特のトラ模様があります。このネコは何千年もの間、島国マダガスカルに適応し、飼い猫と比較して身体的および行動的特性が異なりますが、固有種とはみなされておらず、飼い猫と同じ種であることに変わりはありません。

関連記事:急速に進化するマダガスカルのノネコに衝撃の変化が!!

コルシカ島のキツネネコ

Klaus Rassinger und Gerhard Cammerer, Museum WiesbadenCC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

ただし、コルシカ島のキツネネコは異なります。このネコはローマ人によってフランス領コルシカ島に持ち込まれた可能性があります。キツネネコが独自の種であるかどうかについては長年議論されてきましたが、実際、2023年の遺伝子分析では、ヨーロッパヤマネコやリビアヤマネコ、イエネコことは明らかに異なることが判明しました。

現時点では、ディンゴと同様にオーストラリアのネコは飼い猫と交配しています。通常、これらは農場の猫との間で行われます。

ただ、クイーンズランド州の辺鄙な町キンピーでは、ある男性が自分の飼っている猫がノネコに食べられそうになった為、守ろうとしたところノネコに襲われました。このようにオーストラリアのノネコは今や飼い猫を獲物と見なし始めており、大人の男性を襲う事も厭わなくなってきています。

更にノネコがより大きくなり、完全に飼い猫を餌とみなすと、飼い猫との交配が停止することになります。

短気間で急速に進化する生物たち

進化は信じられないほどゆっくりとしたプロセスであると誰もが考えています。ある意味では確かにそうですが、数年か、それよりも短い期間で進化した動物種の例は数多くあります。

ひとつの例として、フロリダのグリーンアノ―ルが挙げられます。このトカゲは侵入してきたブラウンアノ―ルを避けるためにより、大きな爪とより大きなの鱗を発達させ、より高い枝に上ることができました。この変化はわずか15年(約20世代)で起こっています。

急速な進化の別の例として、グッピーの実験があります。研究者のデービッド・レズニックは1981年に捕食動物がいなかったグッピーの棲む小川に捕食性のシクリッドを導入しました。そうすると、わずか4年(6から8世代)でこの捕食動物の存在に応じてグッピーは進化しました。彼らはより小さくなり、より早く成熟し、より多くの子供を産むようになったのです。

現在、気候変動に伴い、急速に変化する状況に適応する生物が増えています。サケは海から川への回帰が早くなっています。これは単なる行動の変化ではなく、人間的な変化でオーストラリアの猫の場合も同じことが起こっていると言えます。

ノネコの大きさの変化は人間の肉眼でも確認でき、これにはわずか数百年しかかかりませんでした。それでは、今後数百年でどう変わるのでしょうか?おそらくいつの日かオーストラリア独自のネコ科動物が誕生するでしょう。

もちろん、そうなる前に政府がこのネコを根絶しない限りは・・・。

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