リュウグウノツカイを飼育できない理由

生物

リュウグウノツカイは美しく神秘的な魚ですが、水族館では数時間しか生きることができません。なぜリュウグウノツカイを飼育することができないのでしょうか?

この記事はYouTubeの動画でも見るとができます。

リュウグウノツカイは非常に珍しい

まず、リュウグウノツカイを飼育できないひとつめの理由として、そもそもこの魚を見つけるのが難しいということが挙げられます。リュウグウノツカイは太平洋、インド洋、大西洋など世界中の海の外洋に幅広く分布しますが、水深200~1000mの深海に生息するため、人前に姿を現すことは滅多にありません。彼らは海底から離れた中層を漂い、群れを作らずに単独で生活する深海魚です。

そのため、実際に生きて泳いでいる姿を撮影した映像記録もほとんどありません。このように生きたままのものを見つけて捕獲することは困難で飼育に至るまでの機会が滅多にないのです。

リュウグウノツカイの展示例

しかし、リュウグウノツカイはその特異な大きさと形態から一般によく知られた深海魚のひとつとなっているため、日本では捕獲あるいは漂着した個体を水族館で展示することが何度かありました。以下がいくつかの日本での飼育例です。

  • 長崎県の「西海国立公園九十九島水族館海きらら」では2010年1月9日、平戸市の水深約20mに仕掛けた定置網にかかった体長約3.8m、体重約35キロのオスを譲り受け、水槽で泳ぐ姿を一般公開しています。しかし、公開34分後に死亡しています。
  • 石川県の「のとじま臨海公園」では、2015年12月22日朝、定置網で生きたまま捕獲された約3mの個体がおよそ3時間半にわたって展示されましたが、その日の午後に死亡しています。
  • 兵庫県の「城崎マリンワールド」では、2021年2月7日、水族館近くの海岸にてリュウグウノツカイが捕獲され、水槽で泳ぐ姿が数時間展示されました。しかし、同日中に死亡しています。
  • 宮城県の「仙台うみの杜水族館」では、2020年12月7日、石巻市の金華山沖で全長4m43cm、体重44kgのリュウグウノツカイが展示されました。しかし、水槽に入ってから約30分後に死んでいます。

このように、水族館で飼育された個体は皆、当日中に死亡してしまっているのです。

リュウグウノツカイは大きすぎる

次に、リュウグウノツカイを飼育できない理由としてその大きさが挙げられます。彼らの多くの個体が全長3mほどですが、最大では8m、体重278kgに達した個体が報告されており、これは現生する硬骨魚類の中では現在のところ、世界最長の種になります。

リュウグウノツカイの体は左右から押しつぶされたように平たく細長い姿をしていますが、彼らは普段、直立した状態で制止しています。そして、移動する時には体を前傾させて泳ぎます。このように、非常に大きな魚が遊泳できる長さと深さのある水槽を持っている水族館が少ないため、飼育が難しいのです。

水圧・水温を調節するのが難しい

そしてリュウグウノツカイを飼育できないみっつめの理由として、水圧や水温など彼らの棲息する環境を再現するのが難しいことが挙げられます。深海に適用したリュウグウノツカイは海面付近の低い圧力に合うように自らの体を調節することができません。

また、深海では水温が低いため、水族館のクーラーを強力なものが必要になります。現在の技術では、リュウグウノツカイのような巨体を維持できる大きくて水圧を調節できる水槽を作ることができません

リュウグウノツカイの稚魚の飼育

それでは小さな赤ちゃんの頃からリュウグウノツカイを飼育したらどうでしょうか?

2019年1月28日、沖縄県読谷村の沖合いで全長およそ3mのリュウグウノツカイが2匹、網にかかりました。この2匹はオスとメスで水族館に運ぶ間に死にましたが、研究のため沖縄美ら島財団総合研究センターがそれぞれの体内から取り出した精子と卵子で人工受精を行ったところ、受精に成功し、約2週間後におよそ20匹の赤ちゃんが生まれたのです。赤ちゃんは全長およそ7mmに成長し、成魚に似た長く伸びる背ビレが確認されました。

リュウグウノツカイは胃内容物の調査により、プランクトン食性と推測され、オキアミなどの甲殻類を主に捕食していると考えられています。

しかし、研究センターでは稚魚を分散し、使用する水や形が違う複数の水槽で飼育していたものの、稚魚はえさを食べずに衰弱する様子が見られるようになり、全て死亡してしまいました。

このように、リュウグウノツカイの生態はまだまだ分からないことが多く、飼育方法もよくわかっていないのです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました