ネコ科最強のライガーが野生では生きていけない理由

生物

父がライオンで母がトラの雑種動物はライガーと呼ばれています。この地球上で最も獰猛な頂点捕食者である2種の子、ライガーは両親よりもさらに大きく、力も強くなるにも関わらず、野生では生きていくことができません。

これは一体なぜでしょうか?この記事はライガーが野生では生きていけない理由について説明しています。

ライガーとは

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ライオンとトラの交配種の歴史はインドでは少なくとも19世紀初頭に遡ります。1837年に生まれたライオンとトラの子がウィリアム4世とその後継者であるビクトリア女王のために展示されています。そして、ライガーという名前が作られたのは1930年代のことです。

現在、ライガーの飼育数が最も多いのはアメリカだと考えられており、約30頭が知られています。これに続くのが中国で、約20頭です。

ライガーの両親は種が異なりますが、同じヒョウ属です。

個体差はあるものの、ライガーはライオンのような黄褐色の体色に、トラに似た縞模様がかすかにあります。また、頭はライオンに似ており、オスには少量の鬣がみられるものがいます。さらに、ライオンの親から斑点模様を受け継ぐこともあります。ライオンの子は斑点模様があり、成体でもかすかな模様が残っています。この具体的な模様と色は、親がどの亜種であったか、および遺伝子が子孫でどのように相互作用するかによって異なります。

ライガーの優れたスペック

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ライガーは両親よりも大きくなり、現存するネコ科動物の中でも最大で、オスの全長は3~3.6mに達します。この大きさは先史時代のスミロドンやアメリカライオンとほぼ同じです。

ヘラクレスと名づけられたライガーは体重が418.2kgもあり、ギネスブックに現在、生きている世界で最大のネコ科動物として認定されています。さらにアメリカ、ウィスコンシン州の動物保護施設「Valley Of The Kings Sanctuary And Retreat」で飼育されていたヌークという名のオスのライガーが550kgを超えていました。

対照的に、父がトラで母がライオンの雑種であるタイゴンは小さくなる傾向にあります。

ライガーはホルモンの問題により生涯を通じて成長し続けると誤って信じられていることがあります。しかしこれは成長期にどんどん大きくなり、完全な成体サイズに達するまでに時間がかかるだけのようです。実際、ライオンとトラの両種と同様に、6歳以上のライガーには成長が見られません。

ライガーは筋肉質でライオンやトラよりも力が強いうえ、ライオンと同じくらいか、もしくは専門家によってはライオンより速く走ることができるといわれています。このため、ライガーが野生下で大きな獲物を倒すことに関しては何の問題もありません。また、メスのライガーでもオスのライオンを倒すことができます。

ライガーは両親からそれぞれ優位な性質を受け継いでいます。ライオンは水が嫌いですが、ライガーはトラと同じように泳ぐことを好みます。それでいてライオンのようにとても社交的です。飼い主のほとんどが、ライガーはとても人懐っこく、遊びずきで、仲間と一緒にいることを好むといいます。このため、ライガーはアフリカでもライオンの群れの中に加わることができると考えられます。

これらの証拠は、アフリカのサバンナでライガーがどんな危険に直面しても生き延びるのに十分なようです。

ライガーは自然下では見られない

それにも関わらず、野生においてライガーが生きていけないのは、まずひとつめに、そもそも野生下で生まれることがないということがあげられます。

ライガーは動物園や動物保護区で人間の飼育者によって作られた雑種で飼育下でのみ生息しています。これは、両親の生息域が異なり、トラは主にアジアに、ライオンは主にアフリカに生息しているためです。

過去にインドライオンとベンガルトラはアジアのいくつかの国で共存していたことがあり、野生でオスライオンがメストラと交尾し、そこにライガーが生息していたという伝説があります。しかし、現在、インドのギル国立公園においてこの2種の生息域が重なっていることが知られていますが、この場所でこれまでに野生のライガーが発見されたことはありません。

通常、彼らは種の境界を越えることはなく、お互いに興味を持ちません。このような交配は飼育下で同じ種の他の交配相手がいないなど、特殊な状況でのみ発生すると主張されています。

ライガーの健康面

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次に、ライガーが野生で生きていけない理由について健康面があげられます。

ライガーの寿命は通常13~18年ですが20代まで生きることもあります。シャスタという名のメスのライガーは、1948年にソルトレイクシティーのホグル動物園で生まれ、1972年に24歳で死んでいます。また、前述したヌークは21歳まで生きています。

しかし、ライガーは特に心臓、腎臓、視覚関係などの先天的な疾患や、後天的にも骨の発育不全、各種の癌、コツシュなどの病気を患うケースが多く、成獣となる6歳前後まで生存できる個体は多くはありません。この傾向は大型となる個体には特に顕著に表れます。

これに加えて、ライガーのみならずヒョウ属の雑種は非雑種よりも怪我や関節炎、神経障害の発生率が高い傾向にあります。

このような事態が相次ぐことからも倫理的に問題視され、21世紀現在では研究目的以外での飼育、作成はほぼ行われていません。また、台湾では作成自体を法律で禁止しています。

ライガーやその他のヒョウ属の雑種の繁殖は、動物愛護活動家や団体から非難を浴びています。彼らは、これらの動物が経験する健康上の問題を考えると、その生産は不道徳だと主張しています。

繁殖の問題

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そして最後に、ライガーが野生で生きていけない理由として不妊の問題があります。

オスのライガーは平均して成体のオスのライオンと同じレベルのテストステロンを持っていますが、ホールデインの法則に従って無精子症です。ホールデインの法則は異種間雑種において不妊や発育不全がよく見られる法則のことをいいます。このため、ライガーのオスはまったく繁殖力を持ちません。メスのライガーは不妊ではないためライオンやトラとの間に子をもうける場合があります。

これまでライガーとタイゴンは長い間、完全に不妊であると考えられていましたが、1943年にミュンヘンのヘラブルン動物園で、15歳のライオンとトラの雑種がライオンと交配することに成功しました。このメスの子は健康状態が弱かったものの、成体まで育てられています。

また、2012年にはロシアのノボシビルスク動物園がライガーの母親とライオンの父親の子供であるライライガーの誕生を発表しています。

しかし、さらに生まれた子はオス・メスともに生殖機能が無いために以後の繁殖はできません。このようなことからライガーは野生で繁殖し、数を増やしていくことはできないと考えられます。

この記事はYouTubeの動画でも見ることができます。

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